ハードウェア

約8万円でトップクラスの性能を誇るハイエンドCPU「AMD Ryzen 9 3950X」の登場が意味するものとは?


2019年11月25日(月)のリリースを間近に控えたAMDのRyzen第3世代CPU「Ryzen 9 3950X」について、PCハードウェア情報専門誌AnandTechが、価格やスペック、市場へのインパクトなどの観点からその位置付けを論じています。

The AMD Ryzen 9 3950X Review: 16 Cores on 7nm with PCIe 4.0
https://www.anandtech.com/show/15043/the-amd-ryzen-9-3950x-review-16-cores-on-7nm-with-pcie-40

AMDの「Ryzen 9 3950X」は、ベース3.5GHz・ターボ時4.7GHzの動作クロックを持つ16コア32スレッドのCPUで、発売前のベンチマークテストでは希望小売価格749ドル(約8万円)という価格でありながら、実売価格20万超の競合モデル「Intel Core i9-9980XE」を抑え、現行のメインストリーム向けのCPUとしてはトップクラスのスコアをたたき出しています。

16コア/32スレッドのAMD Ryzen第3世代CPU「Ryzen 9 3950X」のベンチマークが登場、マルチコアパフォーマンスは世界最高レベルに - GIGAZINE


そんな3950Xの性能についてAnandTechは、「Intelが供給する最高クラスのコンシューマー向けCPUだけでなく、最高クラスのハイエンド向けCPUをも射程に収めており、かつてないほどIntelのラインナップにプレッシャーを与えています」と評しています。また、AnandTechは3950Xの性能だけでなく価格も評価しています。AMDのハイエンド向け24コアCPU「Ryzen Threadripper 3960X」は希望小売価格が1399ドル(約15万円)と3950Xの2倍近い価格になりますが、ゲーム性能では3950Xの方が上です。3950Xのコストパフォーマンスについて、AnandTechはパラダイムシフトと呼んで称賛しました。

実際に、2018年8月に発売されたFPS「Strange Brigade」のベンチマークソフトを使用し、グラフィックスAPI「DirectX 12」で解像度1080pの環境でテストしてみたところ、3950Xがトップという結果となっています。


一方で、3950Xには取り扱いがやや難しい側面もあります。Socket TR4という専用ソケットを搭載したマザーボードが必要なRyzen Threadripperシリーズと異なり、3950Xは幅広いCPUに対応しているSocket AM4で使用可能な点も強みですが、Socket AM4の中には16コアをサポートしていない物もあります。そのため、PCIe 4.0で動作する3950Xの性能を最大限に引き出すにはSocket AM4 X570マザーボードを購入しなければならず、それ以外のマザーボードで使用するとPCIe 3.0で接続することになり、性能が半分になってしまいます。

また、一口にX570マザーボードといってもさまざまな製品が存在しますが、十分に電力を供給できるマザーボードを使用しないと、ターボ時に本来のクロック数が出ません。AnandTechは「マザーボードにかけるお金を2倍にすればターボ性能も2倍になるというわけではありませんが、3950Xを使いこなせるかどうかはマザーボードの選択としっかりとした冷却にかかっています」と述べて、3950Xの性能を引き出すには相応の環境が必要になることを強調しました。


「それでは結局、AMDとIntelのどっちが買いか?」という問いに対して、AnandTechは「切り口によって異なる」としています。例えば、PCIeレーン数で3950Xに近いのはIntelのCore i9-9900KS(8コア)ですが、Core i9-9900KSの希望小売価格は513ドル(約5万5000円)と3950Xよりかなり低価格です。なお、記事作成時点でCore i9-9900KSの実売価格は7万1800円と、3950Xの希望小売価格749ドル(約8万円)に近い数字となっていますが、AnandTechによると「12コアCPUの人気を考えると3950Xも需要が高いと想定され、在庫の状況が分からないことも踏まえると、発売当初はかなり価格が高くなる可能性があることに注意が必要です」とのことです。

価格帯を揃えるとなると3950Xの対抗馬は784ドル(約8万5000円)のCore i9-10940Xになりますが、この比較では3950Xがコア数で勝っている一方、レーン数はCore i9-10940Xに軍配が上がります。また、コア数で見ると同じ16コアのCore i9-9960Xが競合しますが、Core i9-9960Xは希望小売価格が1684ドル(約18万円)で、記事作成時点のAmazon.co.jpでの実売価格も14万5238円と、3950Xとは開きがあります。


そこで、AnandTechは負荷テストやベンチマークテストの結果から幾何平均を求めて得られた総合スコアを使用し、価格帯と併せて3950Xや他のCPUを比較しました。その結果が以下のグラフで、縦軸が総合スコア、横軸が価格を表しています。赤で囲った部分を見ると、中価格帯に位置している3950Xが総合スコアが最も高い位置にあるのが分かります。


こうした結果から、AnandTechは「ハイエンドPCを使用することなくベストな結果を求めるユーザーに、Ryzen 9 3950Xはこれまでで最高の総合スコアを提供します」と結論しています。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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