運動後にマウスウォッシュをすると運動の「血圧を下げる効果」が著しく減少する

by Marco Verch Professional Photographer and Speaker

「運動後に殺菌性のマウスウォッシュで口をすすぐと、運動が持つ『血圧を下げる効果』が大幅に減少してしまう」という研究結果が報じられています。

Post-exercise hypotension and skeletal muscle oxygenation is regulated by nitrate-reducing activity of oral bacteria - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0891584919307610

Mouthwash use could inhibit benefits of exercise -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2019/09/190903111242.htm

Mouthwash use could inhibit benefits of exercise, new research shows | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-09/uop-muc090319.php

人が運動をすると、体内に酸素を送るために心拍数が多くなって血流が増加します。血流が増加すると、血管の内皮細胞は血管を拡張する働きを持つ一酸化窒素を産生して放出し、「血流量の増加に対応するために血管を拡張させる」という反応が生じます。運動をやめて心拍数が落ち着いてもこの血管拡張効果は持続するため、運動後には血圧が下がるというわけです。また、副次的な効果として、一酸化窒素によって血管が拡張すると血管自体が柔らかくなるため、動脈硬化が起きにくくなります。このメカニズムが「運動は動脈硬化に効果がある」といわれる理由です。

By halfpoint

イギリスのプリマス大学とスペイン・バルセロナのゲノム制御センターの合同研究チームが発表した論文は、運動後に殺菌性のマウスウォッシュで口をすすぐと、血管の拡張効果が大幅に減少することを実験で確認したというもの。研究チームは、23人の健康な被験者にルームランナーでランニングしてもらった後に、殺菌作用のあるクロルヘキシジン濃度が0.2％のマウスウォッシュで口をすすいでもらい、血圧を測定しました。また、対照群として、同一条件で運動してもらった後に殺菌作用のないマウスウォッシュで口をすすいだ被験者の血圧も測定しました。

その結果、クロルヘキシジンを含んだマウスウォッシュで口をすすいだ被験者は、運動1時間後には血圧が2.0mmHg下がっていましたが、運動2時間には元通りの血圧になっていました。一方で、殺菌作用のないマウスウォッシュで口をすすいだ被験者は、運動1時間後には血圧が5.2mmHg下がっており、運動2時間後でも血圧は3.8mmHg下がったままでした。

By Prostock-studio

研究チームによると、この実験結果は、殺菌作用のマウスウォッシュが一酸化窒素のもととなる物質「亜硝酸塩」を生成するバクテリアまで殺してしまうことが原因とのこと。運動後に被験者の血液を調べてみると、殺菌作用のないマウスウォッシュで口をすすいだ被験者は血液中の亜硝酸塩濃度が増加していましたが、クロルヘキシジンを含んだマウスウォッシュで口をすすいだ被験者では亜硝酸塩濃度の増加はみられなかったことも確認されています。

研究チームのグレイグ・カトラー氏は、「口内細菌の活動が運動時の身体において重要な役割を担っていることを示唆しています」とコメントしました。カトラー氏は、「心血管疾患リスクが高い人が運動した場合に口内細菌にどのような影響が生じるかを研究する予定です。我々が行っている研究は、高血圧に対する治療法を改善する可能性があります」と述べています。