太平洋上の「核兵器の墓」からプルトニウムが漏れ出している可能性がある
By geralt
太平洋上に位置するマーシャル諸島共和国ルニット島には、冷戦中にアメリカが残した核廃棄物を納めた建造物が存在します。その建造物が気候変動によって破壊され、プルトニウムが漏れ出している可能性があると指摘されています。
How the U.S. betrayed the Marshall Islands, kindling the next nuclear disaster - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/projects/marshall-islands-nuclear-testing-sea-level-rise/
Parts of the Marshall Islands are more radioactive than Chernobyl and Fukushima, study finds - CNN
https://edition.cnn.com/2019/07/17/asia/marshall-island-radiation-chernobyl-intl-hnk/index.html
冷戦中、アメリカはマーシャル諸島で計67回の核実験を行いました。実験の結果、マーシャル諸島に存在した40の島々のうち、4つの島が消滅した上に、マーシャル諸島の住民や海産資源などが多数被爆。マーシャル諸島には核廃棄物が押し込まれたドーム型の建造物が残されました。このドーム型建造物は、その見た目から「墓」と呼ばれています。
マーシャル諸島に核兵器の墓が建造された経緯については、以下の記事で詳しく報じています。
8万5000立方メートルの放射性廃棄物が太平洋上の島に建造された巨大なドーム型建造物に納められている - GIGAZINE
マーシャル諸島共和国への補償を議論するために、アメリカとマーシャル諸島共和国は「核被害補償法廷」という独立機関を設置。核被害補償法廷は2001年にアメリカがマーシャル諸島共和国に対して23億ドル(約2500億円)の補償金を支払う義務を認めたとのこと。しかし、今回の問題を大きく報じたロサンゼルス・タイムズによると、実際には400万ドル(約4億4000万円)しか(PDFファイル)支払われていないそうです。
この件に対して、「核実験の影響を受けた人々の移住や医療費に6億ドル(約650億円)を支払っており、この額はインフレーションによる調整を行うと、10億ドルに相当する」と在マーシャル諸島共和国アメリカ大使はコメントしました。また、マーシャル諸島共和国の政治家がアメリカ政府に支援を求めてロビー活動を行いましたが、アメリカ側の政治家は「核兵器の墓はマーシャル諸島に位置しており、マーシャル諸島共和国の責任だ」と述べたとのこと。これに対し、2019年9月、マーシャル諸島共和国のヒルダ・ハイネ大統領は「どうしてこの核兵器の墓が我々のものになるのでしょうか。我々のゴミではありません」と非難しました。
By enriquelopezgarre
また、アメリカの核実験以降、マーシャル諸島において先天性欠損症を持って生まれてくる胎児の数が明らかに増加したとのこと。2016年から2019年頃に掛けても、魚の変死やサンゴの個体数の減少などの多数の報告があったそうです。
さらに、2019年7月、アメリカのコロンビア大学の研究チームは、「マーシャル諸島の一部地域において、チェルノブイリを上回る放射線を検出した」という趣旨の論文を複数発表しました。
Radiation in Parts of Marshall Islands is Higher Than Chernobyl | Columbia News
https://news.columbia.edu/news/marshall-islands-nuclear-radiation-chernobyl
発表された論文によると、「土壌サンプル、海洋堆積物、果実などを検査した結果、マーシャル諸島のビキニ環礁、エネウェタク環礁、ロンゲラップ環礁、ウティリク環礁では、放射性同位体の濃度がアメリカとマーシャル諸島共和国間の協定で定められた曝露限度をはるかに上回っている」とのこと。論文は、「海面上昇によって、核兵器の墓から放射性同位体が漏れ出している」ことを示唆しています。
ロサンゼルス・タイムズによると、アメリカ空軍のウォーレン・D・ジョンソン中将の「ドームが故障した場合、アメリカ側に修理する責任があるだろう」という発言が核兵器の墓の建造に関する会議の議事録に残されているそうです。
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