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Cloudflareが和解金目的で訴訟を行うパテント・トロールを徹底的にたたきのめした方法を詳しく解説

By garloon

パテント・トロールは抽象的で曖昧な内容の特許を取得しておいて、他社に対して「自社の特許を侵害している」と訴訟を起こしてお金を巻き上げる企業、人物です。そんなパテント・トロールの訴訟を見事に退けたCloudflareが「訴訟に勝つだけではなく、パテント・トロール自体を潰す」という取り組みについて語っています。

The Project Jengo Saga: How Cloudflare Stood up to a Patent Troll – and Won!
https://blog.cloudflare.com/the-project-jengo-saga-how-cloudflare-stood-up-to-a-patent-troll-and-won/

Cloudflareを訴えたのは、(PDFファイル)世界でも最も活発なパテント・トロールランキング TOP10入りを果たしているBlackbirdです。Blackbirdは、「インターネットにおけるサードパーティーのデータチャネルの提供」と題された非常に曖昧で具体性に欠けた特許を見つけ、権利所有者に対して、1ドルに加えて「素晴らしく、そして価値のある対価」という詳細を秘匿した報酬を支払い、特許の権利を取得します。そして2017年3月、BlackbirdはCloudflareが特許を侵害しているとして訴えました。

Blackbirdのようなパテント・トロールが求めるものは「和解金」です。パテント・トロールとの法廷闘争は長年にわたるため、Cloudflareのような大企業にとっては、数百万ドル(数億円)の弁護士費用がかかります。そのため、数万ドル(数百万円)から数十万ドル(数千万円)でパテント・トロールと和解する手段が、手頃で現実的な選択肢として選ばれてきました。

しかし、CloudflareはBlackbirdとの和解を断固拒否。「Blackbirdのようなパテント・トロールは訴訟を棄却されたとしてもダメージが少ない」として、Blackbirdに勝つだけではなく、BlackBirdがパテント・トロールとして活動できないようにするというプロジェクト「Project Jengo」を始動させました。


Project Jengoの根幹を成す戦略が「Blackbirdが保有している特許の先行技術を探す」というもの。すでに実用されている技術に対して後から第三者が特許を取得しようと申請しても、その申請の「有効性」が否定されるために申請は棄却されます。同様に、Blackbirdが訴訟目的で特許を保有していたとしても、過去に実用化された先行技術があるとしたならば、その特許は無効だと主張できるようになります。

Cloudflareは、Project Jengoの一環として、Blackbirdの特許に関する先行技術の情報を提供してくれた人に対する「報奨金制度」を開始。この報奨金は、開始時点で総額5万ドル(約540万円)でしたが、匿名の寄付者が登場し、賞金は当初の倍の10万ドル(約1080万円)に増額されました。


Cloudflareによると、155人もの人が合計49の特許に対して情報を提供してくれたとのこと。Cloudflareは報奨金制度によって集まった情報の中から、「先行技術が存在しているBlackbirdの特許」を一部公開しました。公開された情報を見ると、Blackbirdは、ユーザーが出版物を検索できるデータベースなどの検索システムや、購入者を誘引するように光源が備え付けられた製品パッケージ一体型収納ポーチを備えたスポーツブラなどの多種多様な特許を保有していることがわかります。そして、これらの特許は先行技術が存在していたわけです。

Cloudflareは提供された情報を元にBlackbirdが有する特許に対する訴えを行いました。その結果、Project Jengoを開始して以降、Blackbirdの活動がかなり縮小されたことをCloudflareは指摘しています。以下がCloudflareの公開したBlackbirdが起こした訴訟の数を表すグラフです。縦軸は訴訟件数、横軸は期間を示しています。グラフの中央の黄色い縦線は「Project Jengoが開始したタイミング(Project Jengo begins)」を示しています。


グラフを見ると、Project Jengoが始まる前の2016年第2四半期(Q2 2016)から2017年第2四半期(Q2 2017)には、Blackbirdが四半期平均で10件以上の訴訟を行っていたことがわかります。しかし、Project Jengoが始まって以降は訴訟数は激減。特に2018年第1四半期(Q1 2018)と2018年第3四半期(Q3 2018)にBlackbird起こした訴訟はゼロと、かなりのダメージを与えたことが見て取れます。

当然ながら、Cloudflareは提供された情報を使って自身の裁判も優位に進めました。2018年初頭、カリフォルニア州北部地区地方裁判所は、「Blackbirdの特許は抽象的で特許性が存在しない」と判断を下し、Blackbirdの訴えを棄却しました。Blackbirdは連邦巡回控訴裁判所に上訴したものの、連邦巡回控訴裁判所は訴えのわずか3日後にこの訴えを却下しました。Cloudflareのマシュー・プリンスCEOは、自身のTwitterアカウントで「Blackbirdをやっつけた」として祝杯を挙げている様子をツイートしています。

Killed another Blackbird. pic.twitter.com/xSNQbHbl6Y

— Matthew Prince ???? (@eastdakota)


Cloudflareによると、訴訟自体は速やかに終了したものの、そこに至るまでのプロセスに1500ページ以上の申請と約2年の準備期間を費やしたとのこと。Cloudflareは「訴訟費用を使い果たした」とも述べています。また、Blackbirdに対抗するための情報を提供してくれた人々に対して、Cloudflareは約束通り賞金を分配したとのことです。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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