数百万人の子どもの目と命を救ったはずの遺伝子組み換え作物「ゴールデンライス」は規制が原因で広まっていない
By bhofack2
「ゴールデンライス」は遺伝子組み換え技術によって生まれた、ビタミンAを多量に含むイネです。ゴールデンライスは発展途上国の子どもたちの命と目を救う食品として期待されていますが、遺伝子組み換え作物に対する規制が原因で、困窮している子どもたちがゴールデンライスを食べられない状態が続いています。
Block on GM rice ‘has cost millions of lives and led to child blindness’ | Environment | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2019/oct/26/gm-golden-rice-delay-cost-millions-of-lives-child-blindness
ビタミンAは目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きのある必須栄養素です。先進国では多数の食品にビタミンAが含まれているためあまり問題になりませんが、(PDFファイル)ビタミンA欠乏症が続くとしだいに目が見えなくなり、失明し、最終的には命を落とします。世界規模でみると、5歳未満の子どもの約3分の1がビタミンA欠乏による失明の危険性があると考えられており、1日あたり約2000人の子どもがビタミンAの欠乏により亡くなっているとされています。
そんな途上国におけるビタミンA不足を解決するために生み出されたのが、「ゴールデンライス」です。ゴールデンライスは、ドイツのフライブルク大学のピーター・ベイヤー教授とスイスの植物科学研究所に所属するインゴー・ポトリクス氏が8年間の研究期間を経て開発した、ビタミンAの前駆体であるβ-カロテンを細胞内で合成するように遺伝子を組み換えたイネ。「ゴールデン」の名は、精米後の色が明るい黄色をしていることに由来します。以下の画像の上側がゴールデンライスの実物。下側のごく普通の米に比べて、ゴールデンライスはオレンジ色に近い黄色です。
バングラデシュなどのアジアの貧しい地域では、子どもが食べるものはご飯「だけ」で、他にはなにも食べないというケースがみられます。そのため、ビタミンAを含む食品として米が選ばれたわけです。
しかし、作家のエド・レジス氏は、「発展途上国の子どもたちはゴールデンライスを食べられない」と指摘しています。その原因について、レジス氏は環境保護団体グリーンピースが長年にわたって「ゴールデンライスは世界の貧困問題から目をそらすために仕組まれたデマ」だと声高に叫んできたことも一因だと語っていますが、真の原因は「カルタヘナ議定書」だと述べています。
カルタヘナ議定書は、2003年より発効された、生物多様性に悪影響を及ぼすおそれのある遺伝子組み換え生物の管理・輸出入・使用に関する国際条約です。レジス氏によると、カルタヘナ議定書には、「バイオテクノロジーによる製品が人間の健康や環境に危険をもたらす『可能性がある』場合、規制を講じるべき」という内容があるとのこと。レジス氏は、ゴールデンライスがカルタヘナ議定書によって「無罪だと証明されるまでは有罪」と扱われるようになったと語っています。
その結果、ゴールデンライスは実験室での生成から農場での耕作試験、スクリーニングテストの各段階において規制によってがんじがらめにされるようになったとのこと。ベイヤー教授とポトリクス氏がゴールデンライスを開発したのは2000年のことでしたが、アメリカとカナダがゴールデンライスを認可したのは2018年。そして、ゴールデンライスが本当に必要であるはずの貧しい発展途上国ではまだ認可が下りていません。フィリピンやバングラデシュでは、ゴールデンライスの認可は早くとも2019年末頃までかかる見込みだと報じられています。
By Rawpixel
レジス氏は、「過剰な規制によってゴールデンライスの研究開発が妨害・遅延された結果、数え切れないほどの子どもたちが失明し、そして死に至りました」と語っています。
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