取材

TRIGGERの舛本和也プロデューサーから映画「プロメア」の収録現場の秘話をたっぷり聞けたトークイベントレポ


2019年5月24日(金)に封切られた映画「プロメア」は、興行収入が12億円を突破し、完全オリジナル劇場アニメで大きなヒット作となっています。この「プロメア」のアニメーションプロデューサーを務めたTRIGGERの舛本和也さんが、マチ★アソビ vol.23の「デジタルクリエイターセミナー」に登壇し、作品作りやアニメの「制作」について講演を行いました。

マチ★アソビ
http://www.machiasobi.com/events/arekore.html

今週末のマチアソビでセミナーをやらせていただきます。
26日14:30~あわぎんホール4階大会議室です。
・アニメの現場のあれこれ
・スケジュールについて
・制作費について
・デジタル作画について
・TV作品と劇場作品の違い
・海外の評価
・ここ20年で変わった事
などなど。 https://t.co/b2VpVoLR0q

— 舛本和也 (@kenji2413)


マチ★アソビ vol.23で開催されたデジタルクリエイターセミナーで講師を務めたのは、TRIGGERの舛本和也プロデューサーです。


舛本さんは、これまで数々のアニメ作品の制作に携わってきたベテランです。


TRIGGERでは、2018年に放映されたテレビアニメ「SSSS.GRIDMAN」や2019年5月に公開された映画「プロメア」の制作に携わっています。MCを務める声優の湯浅かえでさんはかつてアニメ制作会社で撮影を担当した経験があります。SSSS.GRIDMANでは問川さきる役を務めました。


舛本さんはまず、「アニメの声優に芸能人を起用するのをアリだと思う人」を客席に尋ねました。その結果、手を挙げたのは半分ほどといったところ。


観客が劇場に足を運ぶきっかけとして、一番大きなポイントは「役者」だと語る舛本さんは、プロメアには5人の芸能人を起用することを決断しました。主人公・ガロ役の松山ケンイチさんや、リオ役の早乙女太一さんらも集まる収録現場で、最も強い印象を受けたのはクレイ役を務めた堺雅人さんだとのこと。

打ち合わせの際にはいつもの飄々(ひょうひょう)とした人柄を見せていたという堺さんですが、実際に収録が始まったところ、すさまじい怪演を披露。声が命であるアニメの声優は、演技の際は喉をいためてしまわないようにある程度加減をする人が多いとのことですが、堺さんは収録中に疲労の色が目に見えるほど全力で挑んでいたそう。その気迫たるや、堺さんの演技に影響される形でキャラクターのデザインが変更になるほどだったとのことです。


堺さんの演技を受けてデザインが変更されたいきさつなどは、キャラクターデザインを担当したコヤマシゲトさんが舞台挨拶で語ったことがあります。

堺雅人に「こんなにクレイジーなアニメだったんですね」と言わしめた映画「プロメア」舞台挨拶レポート - GIGAZINE


プロデューサーとして、アニメ制作の現場を指揮する舛本さんを最も悩ませるのが、スケジュール管理です。TRIGGERに限らず、アニメ制作の現場ではスケジュールに余裕がないという状況が長年にわたり常態化してしまっているとのこと。制作経験のある湯浅さんは、収録の際のムービーがまだ着色されていない線画の時には、現場は今大変なんだなと察してしまうそうです。


アニメ制作のスケジュールがタイトになってしまうのは、アニメーターたちがただ作業をこなすのではなく、プロフェッショナルとしてこだわりを持って取り組むからだとのこと。アニメはたった30分の映像でも通常200人から300人のアニメーターがかかわっており、分業という形で非常に細かく細分化されています。しかも、分業された個別の仕事が並行して進められているのではなく、上流工程から次の工程にバトンタッチして行われていくので、少しの遅れが全体に波及してしまうとのことです。

また、アニメのプロデューサー陣の多くがクオリティ至上主義なのも、こうした傾向に拍車をかけてしまうのだとのこと。しかし、制作に携わる全ての人がこだわりを持って取り組むからこそ、良いアニメが生み出されているという側面もあるのだそうです。


そして、プロデューサーの仕事を語る上で外せないのが制作費の話です。舛本さんによると、一般的なアニメは1話30分でも1500万~2000万円、1クールでは2億円ほどかかるのだとのこと。バラエティ番組だと高くても1本当たり1000万円とのことで、いかにアニメ作りにお金がかかるかが分かります。


しかし、1話1500万円というのは実はかなり不足気味な金額だとのことで、舛本さんが「万人が幸せになれる理想の額」を試算したところ、なんと1話5000万円必要だという結果になったそう。しかも、これは工業製品でいうところの「原価」に相当する金額なので、さらに広告宣伝費や利益なども計算に入れると、1クールのテレビアニメでは20億円必要になってしまうとのこと。現状の10倍は必要となると、これまでのやり方では理想的な額の制作費を確保することは非常に困難です。

DVDやBlu-rayの売上本数も10年前に比べて半減しているといわれている現状の中で、舛本さんが力を入れているのが「海外への輸出」と「配信事業」です。AmazonのPrime VideoやNetflixといった海外の配信サービスは近年急成長を遂げており、しかも日本のアニメにも注目しているとのことで、配信事業は既に収益の大きな柱の1つになりつつあるとのことです。


また、少子高齢化が進む日本ではエンタメ業界はどこも収益が低下しつつある中で、アニメ業界だけはなんとか横ばいを保っていることから、ソーシャルゲームのメーカーなどによる投資先にもなりやすい環境になりつつあるそう。こうした流れを背景に、TRIGGERと舛本さんはさらなるチャレンジを続けていくとのことです。

そんな舛本さんらTRIGGERが全力で制作中なのが、オリジナルの新作アニメ「BNA ビー・エヌ・エー」です。制作現場では火を吹く勢いで制作が進められているという新作も含め、今後ともクオリティ至上主義でアニメを作っていくTRIGGERから目を離せません。


いらしていただいた皆様、ありがとうございましたー!湯浅さんもお疲れ様でしたー! https://t.co/QavcwiRLBv

— 舛本和也 (@kenji2413)

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in 取材,   アニメ, Posted by log1l_ks

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