サイエンス

「36時間断食して次の12時間で食べる」という方法で免疫系を強く保ったまま減量できる

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ダイエットの方法は時代とともに変化していますが、近年注目されているのが断食を行う時間と制限された食事を行う時間を繰り返す「断続的断食/間欠的断食」と呼ばれる方法。一言で断続的断食といっても断食時間・食事可能な時間の割合はさまざまで、16時間-8時間とするものもあれば、19時間-5時間、あるいは週に2日だけ24時間断食をするタイプも存在します。その中でも、36時間断食して次の12時間で食事をするAlternate Day Fasting(ADF)と呼ばれる断食法が特に有名ですが、ADFが実際に体に変化をもたらすのかを60人の被験者に対して実験した研究が発表されました。

Alternate Day Fasting Improves Physiological and Molecular Markers of Aging in Healthy, Non-obese Humans
(PDFファイル)https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S1550-4131%2819%2930429-2l

グラーツ大学の分子生物科学研究機関に勤めるFrank Madeo氏は、「ADFは最も極端な食事介入法の1つですが、ランダム化かつコントロールされた臨床試験はこれまで行われてきませんでした」として、人間を被験者とした実験を行うことを決意しました。

臨床試験では、4週間にわたって60人の被験者に対し、ランダムにADFの食事と比較対照用の自由な食事が与えられました。臨床試験開始時において、いずれのグループの被験者も標準的な体型で健康であることが確認されています。そして、ADFの食事グループは断食の時間中に物を食べていないことを確認するため、常にグルコースの値がモニタリングされたとのこと。また断食の日には被験者に日誌を課すとともに、研究者が口頭で食事の内容を確認するという徹底ぶりでした。全ての被験者には、食事以外はいつも通りに過ごしてもらいました。

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さらに、研究者は既に6カ月以上ADFを行っている人を集め、ADFを行っていない人と生物学な指標について比較しています。これは、長期にわたるADFが体にとって安全かどうかに焦点を当てたもの。

ADFグループは食事可能な12時間の間、自由に食事を取ることができましたが、研究者は「通常の食事ができる12時間の間で、断食で失われたカロリーの全てを埋めることはありませんでした」と語っています。これにより、ADFグループは平均的にみて、通常の摂取カロリーの35%を制限し、4週間で平均3.5kgの減量に成功したとのこと。


この他、ADFグループに見られた生物学的影響は以下の通り。

・ねずみを対象とした実験でアミノ酸を制限することは寿命の延長と関連していることが示されたが、ADFグループの被験者はアミノ酸のダウン‐レギュレーションがみられた。

・断食をしていない日でも連続的にケトン体アップレギュレーションがみられた。これは健康をさまざまな面で促進するといえる。

・炎症や加齢に伴う疾患に関係する「sICAM-1」レベルが減少した。

・甲状腺の機能を低下させることなくトリヨードサイロニンレベルを低くすることに成功した。過去の研究によりトリヨードサイロニンレベルが低いことは長寿と関連すると考えられている。

コレステロールレベルが低下した。

・おなか回りの脂肪が減少した。

また、過去の研究では食事によるカロリー制限は栄養失調や免疫低下を引き起こすとされていましたが、ADFの場合は6カ月続けても被験者の免疫が安定していたという点を研究者は強調しています。

by Shohei Ohara

絶食によるカロリー制限がなぜ有益な効果を生み出すのかという理由はまだはっきりしていないものの、Madeo氏は「この理由は進化の過程にあるかもしれません。私たちの生理は『過剰な食事』と『それに続く断食』に慣れ親しんできました。ADFが老化を抑制するオートファジー機構のスイッチを入れるのに対し、連続的な低カロリー摂取はこれを妨げます」と述べています。

しかし、多くのメリットを認めつつも、研究者はADFを日常的な食事方法とすべきではないとしています。「肥満だと診断された人が何カ月か行う食事法として行う場合や、炎症による治療の疾患としてはよいと考えています」「しかし、日常的な食事として取り入れるまでには、さらなる研究が必要です。また感染症にかかっている場合は免疫系がウイルスと戦うためのエネルギーを必要とするので断食を行うべきではありません。厳しい食事制限を行う前には医師の助言を求めてください」とMadeo氏は述べました。

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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