ハードウェア

Huaweiが7nmプロセスのAIプロセッサ「Ascend 910」など発表、将来的にRISC-V採用の可能性も示唆


中国の通信機器メーカーであるHuaweiが、「世界で最もパワフルなAIプロセッサ」として初のAI(人工知能)処理用プロセッサ「Ascend 910(昇騰910)」とAI開発フレームワーク「MindSpore」を2019年8月23日付けで発表しました。なお、Huaweiは将来的にオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)であるRISC-Vを採用する可能性を示唆していて、その背景にはアメリカとの関係悪化による禁輸措置があると報じられています。

Huawei launches Ascend 910, the world's most powerful AI processor, and MindSpore, an all-scenario AI computing framework - Huawei
https://www.huawei.com/en/press-events/news/2019/8/Huawei-Ascend-910-most-powerful-AI-processor


Huawei mulls open-source chip design if US ban continues - Chinadaily.com.cn
http://www.chinadaily.com.cn/a/201908/23/WS5d5fe368a310cf3e355679b1.html


Huawei Seeks Independence From the US With RISC-V and Ascend Chips
https://www.tomshardware.com/news/huawei-risc-v-ai-processors-ascend-us,40238.html


Huaweiによると、Ascend 910の最大消費電力は事前に予定されていた350Wより低い310W。また、半精度浮動小数点(FP16)処理で256テラFLOPSを記録し、8ビット整数(INT8)での積和演算では512テラOPS、つまり1秒につき512兆回の処理を実行できたとHuaweiは述べています。


Ascend 910はTSMCの7nmプロセスで設計されていて、データセンターでAIモデルを学習させるためのニューラル処理ユニットとして機能することが期待されています。

また、Huaweiは同時にAIの開発フレームワークとなる「MindSpore」を発表しました。MindSporeは「簡単な開発」「効率的な実行」「すべてのシナリオに適応できる」という3つを目標に設定して開発されています。また、MindSporeはすでに処理された勾配とモデル情報のみを扱い、データ自体は処理されないため、ユーザーのプライバシーが確保されるとHuaweiはアピールしています。

MindSporeで自然言語処理の一般的なニューラルネットワークを開発する場合、コアコードの行数は主要なフレームワークより20%少なくなり、開発者の効率が少なくとも50%向上するとのこと。Huaweiは「Ascend 910とMindSporeの組み合わせは、、他の主流AIチップとTensorFlowの組み合わせの2倍高速です」と主張。「Huaweiはより堅牢で活気のあるAIエコシステムの構築を支援します。MindSporeは2020年の第1四半期にオープンソースになります。AIの普及を促進し、開発者が最善を尽くすよう支援したいと考えています」と述べました。


しかし、Huaweiは2019年5月にアメリカから禁輸措置を受け、ARMアーキテクチャライセンス供与が停止されてしまっています。HuaweiはARMv8アーキテクチャの永久ライセンスを既に取得しているため、記事作成時点ではHuaweiの製品リリース計画は禁輸措置の影響を受けていませんが、将来的にARMの新しい技術を使ってCPUを開発できなくなる可能性があります。このことについて輪番会長を務めるエリック・シュー氏は深圳で行われたインタビューに「ARMの提供する新しい技術が利用できなくても、RISC-V(リスクファイブ)を採用できます。これはすべての企業が使えるオープンアーキテクチャです。この課題は克服できないものではありません」と語りました。

シュー輪番会長の言及したRISC-Vは、オープンソースで開発されるISA。開発プロジェクトにはHuaweiだけでなく、Microsoft、IBM、Qualcomm、Micron、Samsungなど名だたる企業が参加していて、これまでのコンピューティング・エコシステムを大きく変える可能性があると期待されています。

RISC-Vは「ムーアの法則」以来の技術イノベーションになるとの予想 - GIGAZINE


例えば、PCでは最も普及しているx86はIntelが開発したISAであり、これを採用するにはIntelにライセンス料を支払う必要があります。しかし、RISC-Vはオープンソースとして開発されているため、ライセンス料を支払う必要がありません。また、RISC-Vは幅広いアプリケーションに適応してカスタマイズできるように設計されている上に、記事作成時点で一般に普及するプロセッサ向けのソフトウェアが動作できるような後方互換性も持っています。こういった理由から、RISC-Vは既に普及する一歩手前まで到達しているとまで指摘されています。

オープンソースのCPU命令セット「RISC-V」は普及の一歩手前まで来ている - GIGAZINE


シュー輪番会長は「HuaweiはまだARMアーキテクチャの採用を希望しているので、RISC-Vへの移行は始めていません」とコメント。しかし、禁輸措置が続く限り、Huaweiがアメリカの技術への依存を軽減しながら、アメリカの競合他社と対抗するためにはRISC-Vの採用は不可避だといえます。HuaweiがRISC-Vを採用すれば、RISC-Vの普及も前進するため、今後のHuaweiの動向が注目されます。

なお、Huaweiが公開したAscend 910のプロモーションムービーは以下から見られます。

Huawei: Ascend 910, The World’s Most Powerful AI Processor - YouTube

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in ハードウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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