サイエンス

靴底にクッション性の高い素材を利用すると足の負荷が増えてしまう

by Monica Silva

靴を選ぶ時にクッション性の高いものを選ぶ人も多いはずですが、最新の研究で、クッション性の高い靴は膝への衝撃を高め、人からバランス感覚を奪う可能性があることが示されました。はだしや、機能が最小限の靴を履くことが体の力を目覚めさせるとして注目が集まっています。

Foot callus thickness does not trade off protection for tactile sensitivity during walking
(PDFファイル)https://www.nature.com/articles/s41586-019-1345-6.epdf

Going Barefoot Is Good for the Sole - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/going-barefoot-is-good-for-the-sole/

ハーバード大学で教授を務める人類進化生物学者のダニエル・E・リーバーマン氏は2010年に「クッション性の優れたスニーカーで走ることは、はだしで走ることに比べ、人が地面を蹴ることを難しくする」という(PDFファイル)論文を発表し、国際的に大きな議論を巻き起こしました。その後、リーバーマン氏は自らの仮説を確かめる実験の1つとして、毎春、はだしか最低限の機能しかない靴を履いてボストンマラソンに参加し続けました。数年にわたって走り続けた結果、リーバーマン氏の足裏はタコだらけで硬くなりましたが、硬くなるほどに足が守られるようになったとのこと。足裏の皮膚は硬くなったにも関わらず、薄い状態のままであるようにしっかりと地面を感じられるとリーバーマン氏は述べています。

そして2019年になり、新たにリーバーマン氏はNatureで論文を発表しました。論文の中でリーバーマン氏は、足裏の皮膚の分厚さと、足の保護に必要な触覚の繊細さはトレードオフではないことを述べています。

by Jakob Owens

角質やタコなどの皮膚の硬い部分はケラチンというタンパク質で構成されていますが、地面からの力を皮膚のより深い層にダイレクトに伝えることが可能で、触覚的な情報を失うことがありません。実際にリーバーマン氏らの研究チームが機械刺激によって足裏の感覚を測定したところ、分厚い角質を持つ人と持たない人の感覚は同じだったとのこと。調査では靴なしで出かけることがある人とそうでない人を、西ケニアから81人と、ボストンから22人集めて実験が行われました。

クッション性の高い靴の場合、靴底の剛性が地面への衝突速度を遅くして、快適さを生み出しますが、発生する力自体は同じです。「はだしでいる場合に比べてクッション性の高い靴をはいている場合の膝へ達するエネルギーは3倍になる」とリーバーマン氏は述べています。「これが何を意味しているのかはまだわからない」と前置きしつつも、リーバーマン氏は仮説として「靴の技術が進歩した第二次世界大戦中に膝の関節炎になる割合が倍増した背後には、『クッション性の高い靴』がある」と考えることは可能だと述べています。ただし、両者を関連付けるにはさらなる調査が必要だとのこと。

一方で、リーバーマン氏は、自分が靴という存在に反対しているわけではないことを強調。「靴を履くな、と言っているわけではなく、科学者は数百万歩にわたる靴の影響をまだ理解していないと考えている」というのがリーバーマン氏の主張です。

by Tyler Nix

動物の移動においてクッションがどのような役割を果たしているのかを調査し続けているリーバーマン氏は、「バランス感覚」もまた柔らかい靴底によって失われる可能性があると述べています。人々は加齢と共に足の感覚を失っていきますが、足が地面に触れる機会がない場合、より転倒しやすくなるとのこと。これは、体操選手や格闘家が地面とのつながりを強化するためにはだしになり、レーシングカーの選手が足裏の感覚を研ぎ澄ませるためにあえて固い靴底の靴を履くことからもわかります。

クッション付きの靴は快適さが増す一方で機能性が低下する、と考える研究者はリーバーマン氏の他にも存在します。研究者であるトルステン・シュテルツィング氏もリーバーマン氏の考えに賛同し、リーバーマン氏の研究が、人間の力を弱めるのではなく、人間の力を補完するような靴の開発に役立つと述べました。

今回の研究には参加していない、リバプール大学のクリスティアン・ダオット氏はクッション性が最小限の靴を被験者に6カ月間履かせるという実験を過去に行いました。この結果、最初のうち被験者は不快さを示したものの、最終的には多くの人がクッション性が最小限の靴を好むようになったとのこと。ダオット氏は靴の研究によって、「靴は侵襲的だ、ということに人々に気づいてほしい」と述べています。

by EVREN AYDIN

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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