AppleがIntelのスマホ向けモデムチップ事業の買収を発表

by Tyler Lastovich

Intelが5Gモデムチップ事業からの撤退を発表したのち、「AppleがIntelのモデムチップ事業を買収するのでは？」とウワサされるようになり、関係者からの情報として買収に向けた動きが進められているとまで報じられていました。そして2019年7月26日、ついにAppleがスマートフォン向けモデムチップ事業を買収することでIntelと合意に達したと正式に発表しました。

Apple to acquire the majority of Intel's smartphone modem business - Apple
https://www.apple.com/newsroom/2019/07/apple-to-acquire-the-majority-of-intels-smartphone-modem-business/

Apple ramping up in-house iPhone modem efforts as relationship with Intel grows strained - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2019/04/03/apple-modem-iphone-intel/

Apple buys Intel’s smartphone modem business - The Verge
https://www.theverge.com/2019/7/25/8909671/apple-intel-5g-smartphone-modems-acquisition

AppleがIntelのスマートフォン向けモデムチップ事業を買収するに至るまでの流れは以下の記事にまとめられています。

Appleが1000億円でIntelのスマホ向けモデムチップ事業を買収しようとしていると報じられる - GIGAZINE

モデムチップ事業の買収が合意に達したことを発表したAppleは、買収額を正式には発表していませんが、これまでの情報通り10億ドル(約1100億円)での買収となる模様。買収によりIntelのモデムチップ事業の大部分をAppleは取得することとなり、同事業に携わってきた約2200人の従業員、知的財産、設備がAppleのものとなる予定です。買収取引自体は2019年第4四半期に完了する見込みです。

スマートフォン向けモデムチップ事業の大部分を売却することとなったIntelですが、海外メディアのThe Vergeは「Intelがモデムチップ事業から完全に撤退するということはないだろう」としており、PCやIoT、自動運転車向けモデムチップの開発を続けるのではとしています。Intelのボブ・スワンCEOは、今回の売却により「Intelは他の5Gテクノロジーの開発に専念できるようになる」と語ったそうです。

今回の買収により取得できるようになる特許と、既存のポートフォリオを組み合わせることで、Appleの保有するスマートフォン向けモデムチップなどのワイヤレステクノロジー関連特許の数は1万7000種類を超えることになるとのこと。

Intelのモデムチップ事業を買収したことで、AppleはiPhoneなどで使用するモデムチップの供給をQualcommに頼るのではなく、自社で製造できるようになります。アナリストは、Appleは3年以内に独自のモデムチップを開発できるようになると推測しています。なお、Appleがモデムチップを独自開発することで、Qualcommなどの特定の企業への依存度を減らすことが可能となります。

Appleのハードウェアテクノロジー担当上級副社長であるJohny Srouji氏は、今回の買収について「将来の製品開発を促進し、Appleがさらに前進することを可能にするもの」と語っています。

独自でモデムチップの開発に取り組むことは、Appleに大きな利益をもたらす可能性があるとThe Vergeは指摘。モデムチップをApple製品とより良く統合させることができれば、競合製品との差別化につながるような新機能を開発することができるようになるだろうとして、「自社プロダクト向けに独自設計のチップを開発することは、iPhoneやiPadのプロセッサでAppleが採用した戦略そのものであり、この戦略はAppleを業界をリードする立場へと導いた方法でもある」とThe Vergeは述べています。