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ガジェットシェアサービスで30万円超えのカメラが盗まれてしまい補償もされなかった男性

by Qamera

高額ガジェット専門のシェアサービス「KitSplit」は、ドローンやカメラといった高価なデジタル機器の所有者が、それを必要とする人々に貸し出すことで利用料金を受け取ることができるというサービスです。そんなKitSplitを利用して3500ドル(約37万円)のカメラキットを貸し出したヨハン・コーさんが、貸した相手からカメラを持ち逃げされてしまっただけでなく、KitSplitから何の対応も受けられなかったと告発しています。

How I Got my $3500 Camera Kit Stolen on KitSplit for $70 - Medium
https://medium.com/@yohahnko/how-i-got-my-3500-camera-kit-stolen-on-kitsplit-for-70-4530d0062e60

KitSplitに登録したコーさんは、ホームページにある「KitSplitの信頼と安全」の内容を読み、非常に信頼できるサービスだと思ったとのこと。KitSplitはガジェットの貸し出しにおいて短期保険サービスを用意しており、ガジェットを利用したいユーザーも独自の審査を経てサービスの利用が承認されているとページには記されています。また、万が一問題が発生した場合も24時間体制で対応してくれるとのことで、コーさんは早速所有しているガジェットをKitSplit上に登録しました。

するとコーさんのもとに、マークと名乗る人物から「デジタル一眼カメラのソニーα7IIIキットを借りたい」という問い合わせがありました。KitSplit上でのやり取りを経て、マークは1日あたり89ドル(約9500円)のレンタル料を支払い、コーさんはKitSplitの取り分を除いた70ドル(約7500円)が手に入る契約を交わしました。

マークは問い合わせの翌日、午前7時にコーさんからカメラを受け取り、朝の撮影に使用したら数時間後にカメラを返却すると約束しました。しかし夕方になってもマークはコーさんのカメラを返しに来ることはなく、コーさんのメッセージに返信することもなかったとのこと。


3500ドルもするカメラを持ち去られてしまい胃に穴が空きそうになったコーさんは、すぐにKitSplitに連絡を取りました。KitSplitはメールで「マークは私たちの呼びかけにも応答しませんが、それでも私たちはカメラが返却されることを望んでいます」と返信し、その後の対応はまた連絡すると答えました。

しかし高額なカメラが盗まれてしまいじっとしていられなかったコーさんは、KitSplitが自分のカメラが補償してくれるのかどうかを調べました。コーさんはガジェットの保険について記載されたページを読み、「大丈夫、自分のガジェットはKitSplitが保険をかけてくれているから、カメラの代金も返ってくるだろう。最悪の場合は自分が加入している保険で助かるはずだ」と安心したそうです。


翌朝になり、コーさんは再びKitSplitに対して補償の件はどうなっているのかと尋ねました。すると、KitSplitからは「今回の件はvoluntary parting(意図的な失踪)に該当するため補償の対象外である」という回答があったとのこと。今回の件で初めてvoluntary partingという用語を知ったコーさんは、「借り手が備品とともに消えた時、KitSplitでは補償の対象にならない」という事実を知らされて驚きました。


慌ててKitSplitのページでvoluntary partingについて調べたコーさんは、「利用規約」の中に言及があるのを発見。そこには「KitSplitはユーザーの詐欺または詐欺的行為、voluntary parting、ガジェットの盗難、KitSplitを通じた詐欺行為によって生じた損失について責任を負わない」という文言がありました。


この文章を見たコーさんは、KitSplitがガジェットの補償責任を負わないと明記していることに混乱しました。「この利用規約以外の場所でも同じように書いていただろうか?」と怪しく思ったコーさんは、voluntary partingについて記したKitSplitのページで、「問題が発生した場合は、KitSplitが保険パートナーに迅速な修理や交換を依頼します」と記されているのを発見。あちこちでvoluntary partingに対する姿勢がバラバラであることに失望したとのこと。


残念ながらKitSplitからの補償が得られそうにないと感じたコーさんは、自身が加入していた保険会社に連絡しました。そこでKitSplitにまつわる出来事を話したところ、「申し訳ないがvoluntary partingについての補償はカバーされていない」と回答されてしまったそうです。voluntary partingはまれな事例であり、保険金を詐取する詐欺行為に関連するケースが多いため、多くの保険サービスでは対象外となってしまう模様。

やむなく再びKitSplitに連絡したコーさんは、「安全で信頼できるコミュニティは、きっと正しい対応をしてくれるはずだ」と望みを持っていたとのこと。また、voluntary partingに関して記載してあるページでも、「詐欺防止サービスを含む安全な支払い処理を行うためにクレジットカード登録を要求している」と記されています。


しかし、KitSplitからの返信は「借り手との連絡を試みているが拒否されている」と書かれているだけで、補償される様子は全くありませんでした。


担当者と直接電話でやり取りしても、やはり「私たちは破損などの損害や借り手が盗難被害に遭った場合の補償はできるが、voluntary partingについてはカバーしていない」との返事のみで、コーさんは非常にフラストレーションが溜まったと証言しています。「第三者が問題発生時にしっかりと補償してくれなければ、一体どこの誰が見知らぬ相手に大事なガジェットを貸すでしょう」とコーさんは述べています。

さらに電話口でKitSplitは、「過去にはニューヨーク市警察や法執行機関と協力して、20万ドル(約2150万円)の価値があるガジェットを取り戻した事例もある」と説明。コーさんが「自分の場合にもニューヨーク市警察や法執行機関は協力してくれるのか?」と尋ねると、担当者は「ガジェットの値段が3500ドルではおそらく無理だ」と答えたとのこと。多くの州でvoluntary partingは刑事訴訟ではなく民事訴訟として扱われるため、法執行機関の協力はあまり期待できないそうです。

また、カメラを持ち逃げしたマークがどのようにしてKitSplitの審査を掻い潜ったのかと尋ねると、「実在する写真家であるマーク氏の個人情報を盗み、マーク氏の写真を勝手に使って登録したのだろう」と回答されました。実際にKitSplitの審査が機能しているのかどうか確かめるため、コーさんは自分の登録写真を別人に変えてもアカウントが有効なのかどうかをチェック。すると、写真と名前をプロバスケットボール選手のコービー・ブライアント氏にしても、アーティチョークにしてもアカウントはBANされることなく、有効なままでした。


そんな中、KitSplitの対応に失望していたコーさんのもとに、ジェーンさんというKitSplitユーザーから「自分もマークを名乗る同じユーザーにガジェットを盗まれた」というメールが届きました。コーさんがKitSplitで遭遇したvoluntary partingの事案についての書き込みを見て、ジェーンさんは連絡してきたとのこと。


お互いの境遇を話しあった2人は、KitSplitの対応についても共有しました。すると、KitSplitからコーさんらに送られてきたメールは内容がほとんど同じであり、唯一の違いはそれぞれの名前が違う点だけだったそうです。voluntary partingの事例について、KitSplitは自動スクリプトによる対応を行っていたのではないかとコーさんは考えています。

確かにコーさんは利用規約を事前にしっかりと読み込めば、KitSplitがvoluntary partingに対する補償を行わないという点に気付けたかもしれないと認めています。しかし、KitSplitと競合する撮影機材レンタルサービスのShareGridは、KitSplitよりはっきりと「voluntary partingとは何なのか」「なぜvoluntary partingに対して保険が適用されないのか」「voluntary partingに対する補償をしたい場合は各自でオプションの保険サービスに加入する必要がある」といった点を明記しているそうです。

一方でKitSplitは多くのページでvoluntary partingの場合にも「あなたのガジェットを取り戻すために全力を尽くす」とばかり書いており、実際には補償されないということが非常にわかりにくいとコーさんは指摘。また、調査したところコーさんやジェーンさんの他にも同様の被害に遭ったKitSplitユーザーがいることが判明したそうで、少なくともKitSplit上ではvoluntary partingはしばしば発生する問題だとのこと。

コーさんはKitSplitの理念が素晴らしいものであることは認めていますが、問題発生時の行動や対処が理念と合致していないと指摘。KitSplitはユーザーの審査をより厳格にして、voluntary partingについての補償を充実させるか補償できない点をハッキリと明記するべきだとコーさんは主張しています。

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in メモ,   ネットサービス,   ハードウェア, Posted by log1h_ik

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