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なぜアメリカは「メートル単位」をかたくなに拒絶するのか?

by patricia serna

アメリカ製の家電を購入したりアメリカに旅行したりした時にたびたびぶつかるのが、「長さがセンチやメートルで表示されていない」という問題。なぜアメリカだけでメートル法ではなく「インチ」「フット」「ヤード」といった単位が使われ続けているのか?という疑問に答えるムービーがYouTubeで公開中です。

The real reasons the US refuses to go metric - YouTube


ムービーを作成した技術系ニュースサイトのThe Vergeはアメリカに拠点を置いていますが、視聴者は全世界に存在するため、記事やムービーの反応として「メートル法を使ってくれ」というコメントをよく受け取るそうです。


このため、アメリカに住むユーザーとアメリカ以外に住むユーザー双方のために、2つの単位をムービー中に挿入することもあるとのこと。


「なぜアメリカがメートル法に移行しないのか?」という理由は大きなものから小さなものまで含めると無数に存在しますが、このムービーでは3つの理由に焦点を当てています。


1つ目の理由は「米国慣用単位は間抜けだが理にかなっている」というものです。


米国慣用単位は植民地時代に大英帝国から受け継いだもの。記事作成時点のイギリスでは主にメートル法が使われていますが、至るところで帝国単位も見られるとのこと。2つの国がいまだにインチやフットという単位を使っているのは、シンプルに「使えるから」だとThe Vergeは述べています。


「1メートル」の定義は赤道と北極点の間の海抜ゼロにおける子午線弧長を1000万分の1にした長さのことですが……


フットはその名の通り足の大きさを元にした単位です。


インチは大人の親指の幅を定義としており、メートル法よりも身近なものをベースとしているので、体1つあれば大体の長さが把握できるというのは便利なところ。


また米国慣用単位が途中で入ってきた他の国では「不規則だ」とみなされますが、アメリカでは最初から一貫して米国慣用単位が使われてきたので、なかなかそこから離れることができないそうです。


2つ目の理由は「アメリカ人はわざわざメートル法にしたくない」ということ。


このような「他国にわざわざ合わせたくない」というアメリカの姿勢を変えようとする動きがあります。実はアメリカでは「メートル法への移行」がムーブメントになりつつあり、その背景に存在する一人が元ロードアイランド州知事で民主党員であるリンカーン・チェイフィー氏です。チェイフィー氏は穏健派で、アメリカが今後進むべき方向として「アメリカは他の文明国のような振る舞いをすべき」と考えていました。隣接するカナダでもメキシコでもメートル法が使われていることから、アメリカも「メートル法への移行」をすべきだとチェイフィー氏は語っています。


チェイフィー氏は声明発表の場で軍事費を減らしインフラや教育への予算を増やすこと、そして近隣国家との関係を深めるというマニフェストを発表しました。この一環として「メートル法への移行」も発表されたとのこと。


実はこの時、チェイフィー氏は妻に「メートル法については言わないで。誤解されるに決まっているから」と言われていたのですが、「アメリカは議論の国だ!」ということで試しにメートル法について言及してみたそうです。


しかしこの結果、チェイフィー氏の妻の予想どおり、「大統領選挙に名乗りをあげているチェイフィー氏は、アメリカがメートル法を受け入れることが大事だと考えている」とジョークのような形で、誤解されてニュースが広まっていきました。


大統領選からは退いたチェイフィー氏ですが、「アメリカは他の国と仲たがいするのではなく、協力しあうべきだ」と考えており、「メートル法への移行はその一部。象徴的なものだ」と述べています。


3つ目の理由は「アメリカはこっそりと既にメートル法を採用している」ということ。


公式にはアメリカで採用されていないメートル法ですが、科学の世界においては既に米国慣用単位が使われていません。科学者はメートル法が持つ一貫性を重視するためです。化学の世界の測定から、宇宙規模の違いまで、あらゆるものが小数点を動かすだけで表現できるメートル法は、科学者にとって非常に使いやすいのもポイント。


また産業の大部分もメートル法をベースにしています。というのも、1988年に「連邦機関はメートル法による測定を使わなければならない」という法案が通過したため。


また1992年に同様のことがビジネスの世界でも義務づけられたため、コーラのような消費財の場合、缶に示される表記はメートル法になっています。


そしてついには、米国慣用単位もメートル法によって定められるようになりました。つまり1インチの定義は「成人の親指の幅」ではなく「25.4mm」であり、その根底にメートル法が存在するのです。


アメリカでは公式にメートル法が採用されていませんが、実は科学の世界でもビジネスの世界でも国家においても、その根底にあるのはメートル法です。このことから、「既にアメリカはメートル法の世界になっており、あとは外面がついてくるのを待つだけだ」とムービーは締めくくっています。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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