地下鉄の駅に突風を起こす3つのメカニズム
by pxhere
地下鉄の駅では、構内に強い風が吹くことがあり、ロンドン地下鉄では子どもを乗せたベビーカーが風にあおられて線路内に転落する事故が発生したこともあります。この風は気圧の差と、複数のメカニズムから生み出されていました。
Why Are Metro Stations So Windy? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2019/05/why-are-metro-stations-so-windy/590686/
ニュースサイト・The Atlanticの記者であるジュリー・ボーゲン氏は、ワシントンD.C.で地下鉄を利用した際に突風に遭遇。なぜこんなことが起きるのか、ブラウン大学工学部のケニー・ブリューワー教授に電話して「地下鉄の突風は気圧差と、これにまつわる3つのメカニズムによって生み出されている」という回答を得ました。
◆1:ピストン効果
ブリューワー教授が提示したメカニズムのひとつが「ピストン効果」です。これは、トンネルのような狭い場所を物体が移動する際に発生する気圧の変化のことを指しています。
地下鉄のトンネル内を列車が高速で移動すると、列車の前方の空気は圧縮されて気圧が高くなり、逆に後方は減圧されて気圧が低くなります。このため、列車がトンネルを抜けてホームに入ると、列車が押し出してきた空気がホームに放出されるとともに、ホーム内の空気がトンネルに流れ込むことになります。実際の地下鉄構内にはホームが複数あったり、別方向に進む列車がひとつの空間を出入りしたりするため、「信じられないほど複雑な気圧の変化」が発生するとのこと。
by Peter Beard
◆2:ベルヌーイの定理
ブリューワー教授が提示したもうひとつのメカニズムが「ベルヌーイの定理」です。「ベルヌーイの定理」とは流体に関するエネルギーの保存則を表す方程式のことで、この定理によると「気圧が高い場合は風の速度が遅くなり、気圧が低い場合は速くなる」という法則が導かれます。密閉された地下空間は、大きな空間や小さな空間の間で気圧の変化が発生しやすく、これにより空気の流れる速さも不規則になるため、「局所的に風の流れが速い場所が発生しやすい」環境となっているとのこと。
by Marcus Graf
◆3:熱力学
地下鉄の気圧差を生み出す3つ目のメカニズムが「熱力学」です。これは地下鉄に限らず地球上のどこでも見られる現象ですが、温かい空気は膨張するため比重が軽くなり、結果として上昇します。逆に、冷たい空気は比重が重いため下降します。地下と地上の気温差や地下鉄内の空調の影響により、地下鉄に冷たい空気が流れ込んだり、地下鉄から空気が出て行ったりするため、これが気圧の変化や空気の流れの原因になっている可能性が高いとブリューワー教授は説明しています。
by Henning Klokkerasen
なお、ボーゲン氏はさらなる謎の究明のためワシントン首都圏交通局に問い合わせてみたものの取り合ってもらえなかったとのことで、「通勤者は今日も地下鉄に挑み、私の髪型は台無しになり、誰かのスカートははためくのでしょう」と締めくくっていました。
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