ユーザーエクスペリエンス(UX)は「マクドナルド化」しているという指摘
by Mike Mozart
「マクドナルド化(McDonaldization)」とは「消費者にとって最も都合のいい商品を、徹底的に機械化してマニュアル通りに大量に生産する」というマクドナルドが行った経営手法を指す言葉です。マクドナルド化は、企業のユーザーエクスペリエンス(UX)に関する部署まで及んでいると、UXデザイナーのクリス・キースさんは語っています。
The McDonaldization of UX – UX Collective
https://uxdesign.cc/the-mcdonaldization-of-ux-705438fea958
「UXデザイナー」として働くキースさんによると、UXデザイナーとは、一昔前まではチームがプロジェクトについてのアプローチの手法を探索する役割で、独自の効率化を見つけ出して実行する業務を担っていたそうです。しかし現代では、ページレイアウトなどの基礎設計図であるワイヤーフレームを作成することや、製造、製品管理、および開発陣営との連携しての納期の短縮化など、基本的には製品の納品効率を向上させる部門となっており、納品効率を向上する以外の改善案などはすべて却下されてしまうとのこと。
新しい概念を開発して設計するプロセスは多くの組織で似通っており、一昔前では発揮する余地のあった「創造性」などは今ではほとんど必要がなく、リサーチも最小限の投資で最大限の収益を見込める最高効率のものに限られ、多様性が消滅しているそうです。
By Wavebreakmedia
UXの業務における多様性の消滅と極度な効率化こそがキースさんが「UXのマクドナルド化」と表現するものです。「マクドナルド化」とは社会学者のジョージ・リッツァが自身の著書「マクドナルド化する社会」で提唱しだしたもので、マクドナルドの確立した原則が社会全体にまで広がっているという主張です。マクドナルド化は以下のような概念をまとめた言葉とのことです。
・効率化
目標を達成する上で最大限の運用効率を目指すプロセスの合理化と最適化
・計量可能性
味などの主観的な概念ではなく、数量で表される客観的な概念を用いるということ。「美味しいと感じるから高品質」ではなく、「売れているから高品質」であるという思想や、従業員の質は、数値化不可能な「仕事の質」ではなく計測できる「仕事の速さ」で測るという思想
・予測可能性
どこにある店舗に行っても「同じサービスを受けられることが予想できる」こと。従業員の仕事も「毎日が全く同じ繰り返し」にして、予測可能にするということ
・管理性
行動を統一化して、従業員を「標準化」すること。また、徹底した「機械化」を行うこと
By Lyman Gerona
UXがマクドナルド化した結果、異なった企業でも設計チームは同じプロセスに従い、職務記述書には同じ内容が記載され、ほとんどのデザイン業は同じことをしているとキースさんは語っています。
キースさんがさまざまな企業で働くUXデザイナーにコンタクトを取ってみたところ、このように感じているのはキースさんだけではなく、多くの人が同じように感じているとのこと。企業はUXデザイナーなるものについて、「組織が持つ問題ならなんでも『先鋭的な』デザインによる解決策を打ち出し、協調環境で上手に働くことのできるクリティカル・シンキングの持ち主だ」と説明するそうですが、キースさんは実情について「納期を守らせるために製造ラインをマネジメントするウェブデザイン職のライン工のようなもので、納期に影響があるような思考や提案はすべて却下されるのがオチだ」と語っています。
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