セキュリティ

「フリーソフトウェア運動」創始者リチャード・ストールマンが語る「現代テクノロジーが人々をどれだけスパイしているか」

by Benjamí Villoslada Gil

リチャード・ストールマン氏はフリーソフトウェア運動GNUプロジェクトなどを創始し、「フリーソフトウェアの伝道者」とも呼ばれる人物です。そのストールマン氏が講演で、AppleやNetflixなどの大手テクノロジー会社への批判を口にしています。

Why free software evangelist Richard Stallman is haunted by Stalin’s dream | FactorDaily
https://factordaily.com/richard-stallman-india/

◆ユーザーをスパイする企業
ストールマン氏いわく、ほとんどの非フリーソフトウェア(プロプライエタリ・ソフトウェア)はユーザーの情報を抜き出そうと機を伺っており、その一例がAmazonの電子書籍リーダーとのこと。ストールマン氏は、Amazonの電子書籍リーダーは「いつ・どのAmazonサービスを使ったか」という情報だけでなく、Amazon以外で購入した本のタイトルや「どのページを読んでいるか」や、「どのテキストをハイライトしたか」の情報も収集しているとのこと。また、Windows、macOS、Android、iOS、Chromeも同様にユーザーの情報を抜き出していると語っています。

◆Androidアプリ
ある研究者が最も人気のあるAndroidアプリケーション1000個のうち、何個がユーザーを「スパイしている」のかチェックしたところ、有料アプリでは約60%が、無料アプリでは約90%がユーザーの情報をスパイしていたそうです。「アプリケーションがスパイしているかどうか」をどのようにして検出しているかは書かれていませんでしたが、ストールマン氏は「ソースコードを明かさない非フリーソフトウェアはほぼほぼユーザーをスパイしている」とコメントしています。

by Simon Q

◆ストリーミングアプリと配車アプリ
SpotifyやNetflixのような音楽・映像ストリーミングアプリやUberのような配車アプリは、スパイ活動を行っているアプリの中でも特に最悪で、SpotifyやNetflixが保持しているユーザーごとの「視聴履歴」や、Uberが保持しているユーザーの「移動履歴」は「実質的に『その人が何を見たか、何を聞いたか』を把握可能で、そういった情報を握られてしまうことは人権を脅かしている」とストールマン氏は語っています。

◆スマートデバイス
スマートウォッチはユーザーの位置情報を絶えず収集しているだけではなく、一部のスマートウォッチはユーザーから収集したデータにアクセスする権利を有料で提供しています。このことをストールマン氏は「ユーザー自身から集めたデータなのに、それをユーザーに販売するというのはどんな神経なんだ?」と強く非難しています。

By blas

また、ホームセキュリティカメラもスパイの温床とのこと。ストールマン氏によると、一昔前はホームセキュリティカメラが録画したムービーをチェックするにはカメラ本体から直接データを転送するものが主流でしたが、最近では製造元のサーバーを経由してダウンロードしなければならないという形態が主流となっているとのこと。従って、企業はこれらのムービーにアクセス可能でスパイし放題だと語っています。

◆デジタル著作権管理(DRM)について
デジタル著作権管理とは楽曲などのオリジナルのデータを特定のソフトウェアかハードウェアでしか再生できないようにして、データの無制限の利用を防止するための技術です。ストールマン氏は、Kindleで販売されていたジョージ・オーウェルの「1984年」が突如Kindleストアから削除されただけでなく、ユーザーが既に購入していた「1984年」まで削除されたことを例に挙げ、「企業の独断的な判断で、所有していたはずのコンテンツにアクセスできなくなる可能性がある」と述べています。

なお、Kindleで「1984年」が削除された理由は、一部の国ではパブリックドメインとなっていた一方、アメリカではまだ著作権が保護されていたためだとのこと。

Kindleユーザーの本棚から消えた「1984」、Amazonが勝手に削除!? | マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20090719-a005/

◆ソフトウェアのバックドア
iOSには「インストールされたアプリを強制的に無効にして使用できなくする」というバックドアがあり、Androidには「任意のアプリをリモートで消去し、強制的に任意のアプリをインストールする」というiOSより強力なバックドアが存在しているとのこと。Windows XP以降のWindowsPCは「MicrosoftがPC上の任意のコードを強制的に変更することを許可する」というバックドアが確認されており、これらのPCは実質的に「Microsoftの所有物」であるといえます。

ストールマン氏が創始したGNUプロジェクトによる「マイクロソフトのソフトウェアはマルウェアだ」という、Windowsがどのようにユーザーをスパイしているかについてのページも公開されています。

マイクロソフトのソフトウェアはマルウェアだ - GNUプロジェクト - フリーソフトウェアファウンデーション


また、Kindleタブレットや携帯電話にはマイクとGPSが搭載されており、ソフトウェア的な電源をオフにすることは可能でも、ユーザーが本質的な意味でこれらをオフにすることは不可能です。また、携帯電話は通話をルーティングするために、あらゆる場所に置かれた基地局に対して数分ごとにシグナルを送信しており、シグナルを三角測量で解析することで電話の位置を逆算することもできます。

ストールマン氏はこういった技術の発展がスターリンの夢見た「監視社会」につながっていると主張しており、それ故に自ら「携帯電話の不所持」を貫いていると語っています。

◆検閲について
iPhoneは一般的なコンピューターデバイスの中で初となる「ユーザーが自分自身でアプリケーションを自由にインストールできない」デバイスでした。ユーザーはApp Store経由でしかアプリをインストールできず、App Storeでアプリを配信するためにはAppleの承認が必要であることから、Appleはアプリ検閲の先駆者といえます。また、現在ではAppleはiPhoneの販売のために中国のインターネット検閲に協力しています。

Appleが中国政府のインターネット検閲にどの程度協力しているかがわかるサイト - GIGAZINE


ストールマン氏は現代のソフトウェアやデバイスがいかに監視されているかを語ることを通じて、自身が創始した「フリーソフトウェア運動」や「コピーレフト」の重要性を説く活動を行っています。

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in モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス,   セキュリティ, Posted by darkhorse_log

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