サイエンス

「スパイダーマン」や「アントマン」がクモやアリへの恐怖症を緩和してくれるという驚きの研究結果

by Claudio Marinangeli

クモやとがったもの、ピエロなど、特定のある1つのものに対して異常に恐怖を覚える心理症状を「恐怖症」といい、世界保健機関(WHO)が公表する「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)」では不安障害の1つとされています。そんな恐怖症を治療するための方法として、クモをモチーフにしたヒーローの「スパイダーマン」や、アリをモチーフにしたヒーロー「アントマン」の映画を見ることが挙げられており、なんとクモやアリへの恐怖心が20%減少したという驚きの実験結果も報告されています。

Frontiers | “Spidey Can”: Preliminary Evidence Showing Arachnophobia Symptom Reduction Due to Superhero Movie Exposure | Psychiatry
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2019.00354/full

Seven seconds of Spiderman viewing yields a 20% phobia symptom reduction | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-04/bu-sso042319.php


特定の恐怖症を緩和するためには、患者をあえて恐怖の対象に触れさせることで克服を狙う「暴露療法」が存在します。例えば、暴露療法として仮想現実(VR)空間でタランチュラの映像を30分間見せることで、クモへの恐怖心が減ったという研究結果が報告されています。

VRがさまざまな恐怖症を克服するための治療法として役立つ可能性 - GIGAZINE


アリエル大学社会福祉学部のMenachem Ben-Ezra教授と、バル=イラン大学社会科学研究科のYaakov Hoffman博士は、マーベル・コミックのスーパーヒーローであるスパイダーマンやアントマンではクモやアリが好意的な文脈で描かれているにも関わらず、クモ恐怖症やアリ恐怖症への影響を調べた研究はなかったと指摘し、実験を行いました。

研究チームは424人の被験者を4つのグループに分け、そのうち2つをクモとアリの介入群、残り2つを対照群として設定しました。そして、映画「スパイダーマン2」からクモが登場するシーン7秒間と、映画「アントマン」からアリが登場するシーン7秒間を介入群の被験者に見せました。すると、視聴後の症状スコアが、クモとアリそれぞれで視聴前と比較して20%ほど減少したとのこと。つまり、クモやアリを好意的に描くシーンを鑑賞することで、クモやアリへの恐怖心が緩和したというわけです。

by RyC - Behind The Lens

研究チームは「恐怖症の治療でマーベル・シネマティック・ユニバース作品の短いシーンを使った暴露療法は確実に有効であり、治療をより偏見のないものにすることによって協力および動機づけを高めることができます」と結論づけています。

また、マーベルヒーローの熱心なファンを自称するBen-Ezra教授とHoffman博士は「スーパーヒーロー映画には多くの有益な心理的な属性があるかもしれず、心的外傷に苦しんでいる人にとっても有益かもしれない」と述べ、マーベル・シネマティック・ユニバースの作品が心的外傷後ストレス障害に対して効果があるかどうかの調査が次の研究課題だとコメントしました。

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in サイエンス,   映画,   マンガ, Posted by log1i_yk

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