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約160億円はどこに消えたのか?CEO急死で破産した仮想通貨取引所のウォレットが空っぽだったことが判明


カナダ最大の仮想通貨取引所「QuadrigaCX」のCEOが、取引に利用していたコールドウォレットの秘密鍵を明かさぬまま亡くなってしまったために取引業務が不可能になった事件で、ついにコールドウォレットの特定に成功したという報告が発表されました。しかし、どのウォレットも残高が完全に空になっていたとのことで、コールドウォレットの中で取り扱いできないまま眠っていると考えられていたおよそ160億円分の仮想通貨の行方は、依然謎のままです。

Ernst & Young Inc. Restructuring Information
https://documentcentre.eycan.com/Pages/Main.aspx?SID=1445


Quadriga's Cryptocurrency Wallets Are Empty, With Fate Of $137 Million In Doubt : NPR
https://www.npr.org/2019/03/06/700651500/crypto-mystery-quadrigas-wallets-are-empty-putting-fate-of-137-million-in-doubt


事の始まりは、QuadrigaCXの取引をほとんど1人で行っていた共同創設者兼CEOのGerald Cotten氏が2018年12月に亡くなったことでした。Cotten氏はQuadrigaCXが取引に使用していたと思われるコールドウォレットの秘密鍵を誰にも告げずに亡くなったため、QuadrigaCXが顧客から預かっていた総額1億4700万ドル(約160億円)分の仮想通貨にアクセスできなくなり、取引業務が滞り最終的に破産してしまいました。

およそ160億円分の仮想通貨が全喪失の可能性、取引所CEOの死去によってウォレットへアクセスできなくなったため - GIGAZINE


QuadrigaCXが背負った200億円超の借金を返済するためには、このコールドウォレットへのアクセスが求められていましたが、その唯一の手がかりはパスワードのかかったCotten氏のノートPCにあると見られ、解析が行われていました。裁判所命令によって監査を任命されていた大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングは、「取引管理に用いられていたとみられるコールドウォレットを6つ特定した」と2019年3月6日に発表しました。

特定された6つのコールドウォレットには、QuadrigaCXが顧客から預かっていた仮想通貨のうち数百万ドル(数億円)分が管理されていたとみられていました。しかし、アーンスト・アンド・ヤングは「発見されたコールドウォレットは、Cotten氏が亡くなる数カ月前には空になっていた」と報告しています。

アーンスト・アンド・ヤングによると、6つのうち5つは2018年4月を最後に取引記録がなく、残高はゼロになっていたとのこと。残りの1つについてはCotten氏が亡くなった2018年12月にビットコインをQuadrigaCXのホットウォレットへ転送するために使われていて、これも残高がゼロになっていたそうです。


この他にもQuadraCXの取引に用いられていたとみられるコールドウォレットのアドレスが3つ特定されましたが、どれも中身は空だったとのこと。アーンスト・アンド・ヤングはQuadrigaの幹部に、QuadrigaCXが2018年春以降にウォレットへビットコインを入金しなくなった理由を尋ねたそうですが、誰も答えることはできなかったそうです。

さらにアーネスト・アンド・ヤングは「QuadrigaCXでの通常の取引プロセス外で14のユーザーアカウントが作成されていた」と報告しています。この14のアカウントによる取引履歴は「かなりの量の」取引を示しているそうで、Quadrigaに関連していない取引所への仮想通貨の取引や出金を行っていた痕跡があるとのこと。

by Credit: BeatingBetting.co.uk

特に、QuadrigaCXが抱えていたイーサリアムは複数の取引所に預けられていたことが判明しています。

創業者急死の仮想通貨取引所クアドリガ 大量のイーサリアムが他の取引所に | コールドウォレットは18年4月から空
https://jp.cointelegraph.com/news/quadrigacx-reportedly-stored-eth-on-kraken-bitfinex-and-poloniex-research-finds


QuadrigaのプラットフォームデータはAmazon Web Services(AWS)のクラウド上に保存されていたそうですが、アクセス権限を持つアカウントは会社のものではなくCotten氏個人のものだったとのこと。Cotten氏の妻であるJennifer Robertson氏は自分が財産の管理者だと述べたそうですが、それでもAWS側はデータへのアクセスを許可していないとのこと。

渦中のCotten氏は2018年12月に亡くなり、「Cotten氏は長年患っていたクローン病の合併症によって、インド旅行の途中で亡くなりました。彼はインドで困っている子どもたちのために児童養護施設を開いていました」とRobertson氏によって2019年1月に告知されました。しかし、Cotten氏の死去やその告知、コールドウォレットの取引などさまざまなタイミングから、「Cotten氏は自身が死んだように偽装しながら巨額を持ち逃げしているのではないか」という憶測を生んでいて、海外の掲示板サイトRedditのQuadrigaCXコミュニティにはさまざまな情報が数多く寄せられています。


アーネスト・アンド・ヤングは、今回の騒動は内部の者による犯行に起因している可能性も考慮に入れた上で、発見された14のユーザーアカウントを中心としたビットコインの動きを引き続き捜査していくつもりだと述べています。

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in ネットサービス, Posted by log1i_yk

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