アート

約5万枚の写真をつなぎあわせて超高解像度の月の写真を作成した猛者現る


海外掲示板のReddit上で、「約5万枚の夜空の写真を撮影して、81メガピクセル(8100万画素)の月の画像を作ったよ!」というスレッドが立てられました。この写真があまりにも美しいということで、「これまで見た月の写真の中でも最高のひとつ!」や「これまで見た写真の中で最高品質のものだ!」といった賛辞が飛び交っています。

I took nearly 50,000 images of the night sky to make an 81 Megapixel image of Tuesday's moon. Uncompressed image linked in the comments. [OC] : space
https://www.reddit.com/r/space/comments/arer0k/i_took_nearly_50000_images_of_the_night_sky_to/

5万枚もの写真をつなぎ合わせて1枚の美麗な月の写真を生み出したのは、ajamesmccarthyさん。「宇宙愛好家と写真家の両方にインスピレーションを与える写真だ!」という賛辞があれば、「私はそのどちらでもないけど大きな影響を受けたよ!」という賛辞まであり、多くのユーザーがajamesmccarthyさんの作成した写真の虜になっています。

以下の写真がajamesmccarthyさんの撮影した月の写真。なお、元データは一辺9000ピクセルですが、記事中の写真は適当なサイズに縮小しています。


ajamesmccarthyさんが作成した元の画像データが欲しいという場合は以下からダウンロードできます。「元データ」からなかなかダウンロードできないという場合は、「キャッシュデータ」や「Torrentファイル」からダウンロードしてみてください。

元データ
キャッシュデータ
Torrentファイル

ユーザーからは「どうやってこの写真を作成する計画を立てたのですか?私は100枚の写真を撮影するケースならば理解できますが、5万枚というのはその10倍よりもさらに一桁多い数字です。撮影方法について共有しても良いならば是非お願いします」や「なぜ5万枚もの写真を合成しているのですか?解像度的には3000枚でも十分だと思うのですが……?」など、どうやって月の写真を作成したのかを尋ねる質問も多く寄せられています。


コメントの数が多すぎるためajamesmccarthyさん本人からの反応はなかったものの、別の天体写真に詳しいユーザー・brent1123さんが、その知見を共有し「どうやって美麗な天体写真を作成したのか?」や「なぜ5万枚もの写真を合成する必要があるのか?」といった疑問に答えてくれています。

brent1123さんいわく、ajamesmccarthyさんのような美麗な天体写真を作成するには「高速キャプチャカメラ」および「大気の影響で月面のクレーターなどの細部がボケてしまわないように、何万枚もの写真を撮影し、特殊なプログラムを用いて最も鮮明なフレームを抽出し、ノイズを減らすための合成を行うソフトウェア」を使用する必要があると指摘しています。

by Adam Birkett

さらに詳細に、使用したカメラは249ドル(約2万8000円)で購入可能な天体撮影用カラーカメラの「ASI224MC」であり、このカメラは通常の一眼レフカメラなどと比較的似たセンサーを使用しているものの、使用する解像度に応じて毎秒数十~数百フレームの撮影が可能であることなどが説明されています。

加えて、撮影やノイズ除去、合成に使用しているソフトウェアはすべて無料のものであるそうで、ファインダーのないASI224MCで写真撮影するために、フリーソフトの「FireCapture」を使用していること、画像処理には「AutoStakkert!2」、その他の細かな調整には「RegiStax」もしくはPhotoshopが使用されているとbrent1123さんは指摘。


月を撮影する際、月とカメラとの間には大気および光の屈折が存在するため、月面のクレーターなどの細部を精細に写せないケースがあるそうです。そこで、大量の写真を撮影してその中からシャープに写ったものを選択・合成して精細な写真を作成するという「ラッキーイメージング」と呼ばれる手法が取られています。これこそが製作者のajamesmccarthyさんが5万枚もの写真を撮影した理由であり、brent1123さんは「5万枚の撮影もそれほど珍しい例ではない」と語っています。

他にも、複数枚の写真からきれいな部分のみを抽出して合成することで、写真の中のノイズを減らすこともできます。カメラで撮影した写真にはある程度ランダムにノイズが発生するもので、これは暗い写真を撮影した際により顕著になります。天体写真は暗闇に浮かぶ星を撮影するという性質上どうしてもノイズが多くなってしまうため、複数枚の画像を合成してノイズを削減し精細さを高めることは非常に重要になるとのこと。なお、ランダムノイズの場合は約40枚の写真を使えばきれいにノイズを取り除くことができるそうで、brent1123さんは「5万枚も使えばランダムノイズはごくわずかなレベルにまで減らせるでしょう」と指摘しています。ただし、非常に短い露光時間で撮影した写真を用いて天体写真を合成する場合、複数枚の写真を合成する理由は「大気のぼやけを除去すること」であるはずと推測しています。

逆に露光時間を長くしたとしても、写真にはランダムノイズが発生します。また、長時間露光ではカメラのパーツ由来の熱関連ノイズも発生するため、同じように複数枚の写真を重ねて合成することでノイズの少ない美麗な写真を生成する必要があるとのこと。brent1123さんは長時間露光で撮影した写真を合成する際は「DeepSkyStacker」というフリーソフトを使用するケースが多いと指摘しており、加えて、天体を長時間露光で撮影する際には「夜空の動きに合わせてカメラを動かす」ためのトラッキングマウントが必要になるとアドバイスしています。

なお、brent1123さんは過去に約10万枚の写真を用いて以下のような月面写真を撮影しています。

Half-Moon Lunar Mosaic [11,000 x 8,000] (brent1123) - 最大解像度 | AstroBin

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in アート, Posted by logu_ii

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