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大失敗した音楽フェス「Fyre Festival」のNetflix独占ドキュメンタリーに黒い疑惑が浮上


Fyre Festival」は2017年にバハマの離島で開催予定だった超豪華な音楽フェスであり、PRに有名モデルが起用されるなどしてチケットが即完売するほどの注目を集めていましたが、なんと開催当日にフェスはキャンセルされてしまいました。主催者のビリー・マクファーランドが詐欺で逮捕されるなど前代未聞の大失敗に終わった事件から2年近くが経過した2019年1月、Fyre Festivalの裏側を描いた「全く別の2つのドキュメンタリー」が動画配信サービスのNetflixHuluでそれぞれ独占配信される事態となり、新たな疑惑を呼んでいます。

Fyre Festival Was a Huge Scam. Is Netflix’s Fyre Documentary a Scam, Too? | The New Republic
https://newrepublic.com/article/153095/fyre-festival-huge-scam-netflixs-fyre-documentary-scam-too

Fyre Festivalは「超豪華な音楽フェス」をうたい、青年実業家のマクファーランドとラッパーのジャ・ルールによって音楽関係のアプリを宣伝する目的で主催されたとのこと。SNS上のインフルエンサーや有名モデルなどを起用してInstagram上での宣伝などを行い、大きな注目を集めていたFyre Festivalでしたが、歴史に残るレベルの大失敗に終わりました。結局主催者のマクファーランドは、フェスが失敗した直後に詐欺罪で逮捕されてしまいます。

2018年12月、NetflixはFyre Festival失敗の裏側に迫った独占ドキュメンタリーを2019年1月に公開することを発表しました。これによって再びFyre Festivalは注目を浴びます。実際に2019年1月18日からNetflixで公開されている「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」の予告編がこれ。

『FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー』予告編 - Netflix [HD]


Fyre Festivalはバハマの離島で開催される、「超豪華な音楽フェス」とされ……


有名なアーティストを起用した力の入ったイベントでした。


左が実業家のマクファーランド。右がラッパーのルールです。


一大イベントの主催者として注目を浴びるマクファーランド。


麻薬王のパブロ・エスコバルが所有していたという会場の島へは、小型ジェットで向かい……


海ではレジャーも楽しめるという触れ込みでした。


チケットはわずか48時間で完売。


しかし、ずさんな運営の結果……


フェスは悲惨な状態に。豪華なはずの宿泊施設は災害用のテントで……


食事はパンとチーズ、しなびたサラダ。


そもそも会場にたどり着けない参加者も続出しました。


Fyre Festivalは「まさに悪夢」「カオスだ」と評される結果になってしまったのです。


これだけであれば、単に失敗に終わったイベントの裏側に迫ったNetflix独占ドキュメンタリーが公開されたというだけの話でした。しかし、この「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」公開を目前にした1月14日、競合する動画ストリーミングサービスのHuluが同じくFyre Festivalの裏側に迫った独占ドキュメンタリー「FYRE FRAUD」を公開したのです。

Huluで独占公開された「FYRE FRAUD」の予告編がこれ。

FYRE FRAUD (Official Trailer) • A Hulu Original Documentary


「私たち、これからFyre Festivalに行ってきます!」とカメラに向かって話しかけるカップル。おそらくSNSなどに投稿されたムービーの模様。


Fyre Festivalが宣伝に起用したのは、SNS上のインフルエンサーたち。


超豪華な音楽フェスの話題はSNS上で大きく拡散されましたが……


事前に予想していた豪華な雰囲気とはかけ離れた島の惨状に人々は落胆。


ドキュメンタリーには逮捕されたマクファーランド本人を直撃したムービーも挿入されています。


Fyre Festivalのチケットが売れたのはSNSの力が大きかった模様。


成否はともかく、SNS映えを意識する若い世代の心をつかんだイベントだったともいえます。


こうして両者の予告編を見比べてみると、Huluの「FYRE FRAUD」ではFyre Festivalの宣伝にSNSがフル活用されたことが述べられていた一方、Netflixの「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」ではSNSを使った宣伝についてほとんど触れられていません。いずれも失敗したイベントの裏側に迫ったドキュメンタリーであるはずなのに、なぜこのような違いが出るのかというと、Netflix側のドキュメンタリー制作にはFyre Festivalのマーケティングを行った「FuckJerry(事件後にJerry Mediaへ名称変更)」が関わっているからだと、Huluは主張しています。

実際にSNSマーケティングに関わったJerry Mediaは、Netflixのドキュメンタリーを「自社の汚名をそそぐため」に利用したのだと、アメリカのメディアThe New Republicのジョセフィン・リヴィングストン氏は指摘しています。NetflixのドキュメンタリーではSNS上のマーケティングについて沈黙を貫き、代わりにマクファーランドのずさんな運営に焦点を当てているとのこと。


リヴィングストン氏によると、Fyre Festivalが失敗に終わった直後からドキュメンタリー制作の動きは出ていたそうです。なんと最初にドキュメンタリー制作に動き出したのはマクファーランド本人であり、イベントが失敗した後でフリーランスの映像制作者であるMichael Swaigen氏にコンタクトを取りました。Swaigen氏はFyre Festivalの宣伝ムービーを撮影した人物であり、後にHuluのドキュメンタリー制作に関与する人物でもあります。

Swaigen氏によればマクファーランドは自身の体面を保とうとしていたそうですが、「おそらくそれはドキュメンタリー制作によってチケット購入者に返金するための資金を得ることの、二次的な期待に過ぎなかったのだと思います」とのこと。Fyre Festivalは資金的に破綻しており、マクファーランドは被害を受けた人々への返金を望んでいたそうですが、ドキュメンタリーが制作される前にマクファーランドは逮捕されてしまいました。


その後、2017年10月にはアメリカのメディアであるViceがSwaigen氏に接触し、ニューヨークにあるViceのオフィスでViceの関係者や映画監督のクリス・スミス氏と面会したとのこと。スミス氏は後にNetflixのドキュメンタリーで監督を務めており、NetflixドキュメンタリーにはViceも協力しています。

Swaigen氏はViceの事務所の派手さやドキュメンタリー制作にのぞむ姿勢に疑念を持ち、面会の後にカリフォルニアへと戻りました。そこでNetflixと競合するHuluもFyre Festivalのドキュメンタリーを制作していることを知り、Swaigen氏はHuluのドキュメンタリーに参加することを決めたそうです。Swaigen氏は「Hulu側の方がViceで目にしたものよりもよく感じられました。Huluの方は何か裏があるように見えなかったのです」と、リヴィングストン氏に語っています。


結局のところNetflix側のドキュメンタリー制作にはJerry Mediaが参加することになり、完成したドキュメンタリーにはほとんどSNSでの宣伝効果について描かれていません。一方でHuluのドキュメンタリーではJerry MediaがFyre Festivalの破綻を早くから予感していたにもかかわらず、InstagramなどのSNSで熱狂をあおり、人々にチケットを買わせたことを示唆しています。

Jerry Mediaは自身がチケットをだまされて購入した被害者と同様、マクファーランドらにだまされたのだと主張していますが、ジャーナリストらの観察によればJerry Mediaの熱烈な宣伝がなければFyre Festivalのチケットはこれほどまで簡単には売れなかったとされています。Jerry Media(当時はFuckJerry)の元従業員であるOren Aks氏は、「Jerry Mediaは世間に主張しているよりもずっと前からFyre Festivalの問題に気づいていた」と述べました。

Netflixドキュメンタリーの「最終編集権」がJerry MediaにあったともHuluは主張しており、Jerry MediaがNetflixドキュメンタリーを汚名返上に利用したと強く主張しています。一方でNetflixはJerry Mediaがドキュメンタリーを編集したことを否定し、逆に「Huluは犯罪者であるマクファーランドに出演料を支払うなど、倫理に反する行いをしている」と糾弾する事態になっているとのこと。Netflixのドキュメンタリーを監督したスミス氏は、「ドキュメンタリー制作において長い時間Fyre Festivalの被害者らと接触した私たちにとっては、マクファーランドに出演料を支払うことは間違った行いに感じられます」と語っています。

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in 動画,   映画,   Posted by log1h_ik

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