悪い印象を持たれることが多い「ポピュリズム」とは何なのか?
by Ted Eytan
トランプ大統領の発言やイギリスのEU離脱などに影響して、近年ではポピュリズムという言葉を特によく聞くようになりました。しばしば悪い印象を与えるポピュリズムという政治姿勢について、なぜ悪評的な文脈で用いられるのかという点も含めて「ポピュリズムとは実際のところどのような思想・姿勢なのか?」ということをオーストラリアンカトリック大学のオクタビア・ブライアント氏とベンジャミン・モフィット氏が解説しています。
What actually is populism? And why does it have a bad reputation?
https://theconversation.com/what-actually-is-populism-and-why-does-it-have-a-bad-reputation-109874
ポピュリズム自体は新しい概念ではなく、長い間民主制とともにあったものです。しかしながら学者の間ですらポピュリズムを定義することが難しいそうです。その理由のひとつとして、ポピュリズムは異なるタイミングに異なる方法で発生したことが上げられています。
概念的な定義についての議論を通して、研究者はポピュリズムに「一般人を代弁する形でなくてはならない」「ここでいう一般人は、自らの政治的意思を妨げる支配者層のエリートに対抗して立ちあがらなくてはならない」という基本原則があると考える傾向にあります。
そんなポピュリズムが悪い意味で使われることが多い理由として、2点挙げられています。第一に、ポピュリズムの有名な事例の多くが過激な極右政党で表れており、権威主義と移民防止の考えと密接にあったためです。しかし、「権威主義と移民防止の考え」は過激な極右の特徴として表れたものであり、ポピュリズム自体の特徴ではないと研究者は指摘しています。
第二に、既存の価値観や普遍的な考えから離れた位置にいることに自覚的なポピュリストは、しばしば破壊的な側面を持ち、現状を打ち壊す解決策をもっているとアピールすることが多い点も悪い印象を持たれる原因となっているとのこと。人々の名の下に現状を変えようとしているポピュリストはその反面、多くの人々が評価する社会的慣習を脅かすように映るというわけです。
ブライアント氏とモフィット氏は、トランプ大統領の反エリート主義的な急進的イデオロギーや南アメリカの左翼的ポピュリズムなどを例に挙げ、「ポピュリズムはどこでも喫緊の問題となっているわけではありませんが、だからこそポピュリズムをどのように認識するか、そしてポピュリズムの存在により私たちの生きる民主主義がどのように形作られるか、良い方向に向かうのか悪い方向に向かうのかを理解することが非常に重要です」と述べています。
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