F1の名門マクラーレンが考える2050年のF1レースの世界とは?
F1の名門チーム「McLaren(マクラーレン)」が、2050年のF1はどのような世界なのかというコンセプトを発表しました。2050年のF1はAIと人間のドライバーが協働する未来のレースへと進化しますが、メカニック、ファンなど多くの関係者を巻き込んだエキサイティングな「競争」というF1のコアは不変のようです。
FUTURE GRAND PRIX: THE PURSUIT OF POSSIBLE - McLaren Applied Technologies
https://www.mclaren.com/appliedtechnologies/lab/future-grand-prix/
2050年のF1の世界を描くコンセプト「MCLExtreme(MCLE)」がどのように生まれたのかは、以下のムービーで確認できます。
Future Grand Prix | McLaren Applied Technologies - YouTube
「2050年のF1レースシーンのビジョン」について、マクラーレンが考えます。
第1章:「発見」
「未来のF1を描く作業は、単にコンセプトカーを描く作業とは異なります」と述べるデザインストラテジストのパリティ・ベジャ博士。
「レース戦略、エンジン、バッテリー技術、空力、マーケティングなど未来のF1チームを運営するのに重要なキーとなるさまざまな要素についてマクラーレンのエンジニアと議論しています」
マクラーレンにまつわる人には、セナ、ハッキネン、ハミルトンとの素晴らしい時間を共有したファンの存在が欠かせないとのこと。
「F1がファンに与える価値を深く考えることなく未来のF1を語ることはできません。そして、ファンは新しい人、場所、文化が生まれることを望んでいます」
ファンとレースとの距離をなるべく近づけるのが重要になります。
政治、経済、環境、社会、技術に関するニュースがあふれ……
クリーンエネルギーや環境に対する政策や投資はますます増加し、新しいレギュレーションが生まれています。
「これらの観点から、未来のマーケットはどこに向かっていくのかを見通すことができます」
第2章:「定義」
「我々の調査は、未来のF1への最初の洞察を与えてくれました」と述べるデザイン戦略リーダーのシーン・ムカーグ氏。
熱狂的なファンは……
レース(競争)とは人間のコア(核)なのだ、と教えてくれたとのこと。
「そして導かれた2050年のF1の姿への仮説の一つは、『人間とマシンとの共生』です」
「自律的なAIが存在する2050年のF1の世界で、人間のドライバーに求められる役割とはどのようなものなのでしょうか?」
第3章:「発展」
未来のF1の形を描くインダストリアル・デザイナーのリャン・ヨンウー・ショイ氏。
「マシンづくりは、空力特性やパワートレインなど様々な技術的洞察を積み重ねることから成り立っています」
「それと並行して、F1というショーをどのように楽しむかを探求するということも、構成要素なのです」
「コクピットをデザインすることは、ドライバーに楽しみを提案する作業でもあります」
「それは、ドライバーの感情を視覚化するという作業を含んでいます」
「もちろんその先には、ドライバーの認識をベースにしてマシンのパフォーマンスを駆動させたいという願いがあります」
ドライバーをマシンの司令塔に置くためのデザインが求められています。
ドライバーがオーバーテイクしたい、と考えるとき、マシンも同じように空力特性を変えることが求められているとのこと。
そして、マシン・サイドの形状は羽を折りたたむように内側へ入り込むという、レースシーンやドライバーの感情に反応して変形することになります。
第4章:「遂行」
以上の洞察を形にしたものがコンセプト「MCLE」です。
それはファンや関係者の想いをデザインに込めたもの。
そして、ドライバーの技術、奮闘、感情を表出するもの。
それこそが、2050年のF1サーカスを彩るにふさわしいマシン。
「マクラーレンのビジョンは、人・マシンのインターフェースを極限まで突き詰めたものです」と述べるマクラーレン・モータースポーツ部門トップのロディ・バッソ氏。
「マシンの面でいえば、排出ガスゼロでありながら、パワー、効率性、ドライビング体験で妥協のないものです」
「私たちは、モータースポーツが新しい人、新しい場所、新しい文化へのアクセスを与えてくれるように進化させます」
「そしてエンジニアと協働することで、ファンをもっとレースに近づける技術を開発していくでしょう」
それこそがマクラーレンが思い描く2050年のF1レースシーン。
「あなたの考えは?」
上記ムービーで語られた2050年のF1へのビジョンを、具現化したマシンをマクラーレンは提示しています。
これが2050年のマクラーレンのマシン。2050年に100周年を迎えるF1のマシンは、決して空を飛ぶことはないとのこと。マクラーレンの2050年のF1マシンは空飛ぶマシンへのアンチテーゼとして存在します。
オープンホイールの4輪マシンは最高時速500km/h。なお、動力源は電気です。
ホイールは充電機能を備えています。10~30秒でバッテリーの10~50%を充電する、という目標をマクラーレンは掲げています。
最大の特長は、人間のドライバーとAIがタッグを組んでレースを戦うということ。
ドライバーはヘルメットを通してAIと接続され、レース戦略などの支援を受けます。マシンを操るのはあくまで人間で、レース戦略などあらゆる情報提供をAIがサポートするという、人間とAIのタッグレースの形になるとマクラーレンは考えています。
ムービーで語られていた通り、2050年のF1マシンは空力特性が変化します。DRSを進化させたマシンは、ドライバーの感情に反応して変形し、走行特性を変化させます。
コクピットが透けているのは、人間のドライバーが格闘する様子が観客に見えやすいようにとの配慮です。
ファンのためにグランドスタンドのデザイン変更も必要で、ガラスの天井に立って眼下にマシンを見下ろす観戦スタイルもあり。400km/hでクリアする90度の超高速コーナーもあるとのこと。
マシンを追いかけるドローン。ファンは人間とAIのタッグによる究極のレースを、ファンは間近に見ることができます。
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