Googleがウェブ上の広告を非表示にする広告ブロック機能をChromeなどで無効化するための施策を進める
Googleといえば検索エンジンやウェブブラウザ、AndroidのようなモバイルOSを開発する企業というイメージがありますが、Google AdSenseやGoogle広告(旧Google AdWords)を駆使した世界最大級のウェブ広告企業でもあります。大企業となりさまざまな収入源があるように見えますが、その実、収入の9割がいまだにウェブ広告ともいわれるGoogleですが、自社開発のウェブブラウザであるGoogle Chromeで煩わしい広告を非表示にする「広告ブロック機能」を無効化する計画を進めていることが明らかになっています。
Wow, fancy that. Web ad giant Google to block ad-blockers in Chrome. For safety, apparently • The Register
https://www.theregister.co.uk/2019/01/22/google_chrome_browser_ad_content_block_change/
インターネット上に存在するサービスの多くは、ページ上に表示される広告を収入源としているため、ページ上から広告を消し去ってしまうAdblock Plusのような広告ブロック機能は多くのインターネット関連企業にとって悩みの種となっています。これまでにも広告ブロック機能を使用するユーザーと、広告を表示して収入を確保したいメディア側のバトルが度々勃発しており、2015年には「広告ブロック機能を使用しているユーザーをブロックするニュースサイトの登場」が話題となりましたが、2019年時点ではそのような「広告ブロック機能を使用しているユーザーをブロックするサイト」の数は着実に増えています。
広告除去機能のユーザーをブロックするニュースサイトが登場し開発会社とバトル勃発 - GIGAZINE
そんな中、多くのインターネット関連企業と同じようにウェブ広告を収入源としているGoogleが、Google ChromeのベースとなっておりMicrosoft Edgeにも採用される予定のオープンソースプロジェクト「Chromium」で、広告ブロック機能を含む「特定のコンテンツをブロックする拡張機能」をブロックするための計画を明かしています。
GoogleはChromiumの拡張機能として使用可能なリソースや機能を列挙したマニフェストの最新版となるバージョン3で、広告ブロック機能の一部を排除するための施策をスタートさせています。マニフェストバージョン3にはwebRequest APIが新しい「declarativeNetRequest API」に置き換えられると記されており、これにより広告ブロック機能のような一部のコンテンツをブロックする機能は使用できなくなる模様。なお、Chromiumが広告ブロック機能を排除していく方針を取ることで、サードパーティー製の広告ブロック機能を提供する拡張機能などは大きな影響を受けることとなりますが、Adblock Plusは他の広告ブロック機能と比べるとそれほど大きな影響は受けないとのことです。
uBlock OriginやuMatrixといった広告ブロック機能を開発するデベロッパーのレイモンド・ヒル氏は、2019年1月22日にChromiumのコミュニティ内で「提案されているマニフェストバージョン3によるかなり限定されたAPIがコンテンツブロッカーを提供するための唯一の方法となってしまえば、私は長らく開発してきたuBlock OriginやuMatrixをもはや提供できなくなる」と記し、Chromiumの方針転換に否定的なコメントを残しています。
896897 - Extensions: Implement Manifest V3 - chromium - Monorail
Googleはマニフェストバージョン3について、「ユーザーは自分の拡張機能をより細かく制御できるようになるべきです。ユーザーはどの情報が拡張機能に利用可能であるかを決定でき、その特権を制御できるべきです」と記しており、広告ブロック機能を排除する動きはあくまでブラウザとしてのセキュリティ・プライバシー・パフォーマンスを改善するために必要なものとしています。
GoogleはdeclarativeNetRequest APIの導入によりユーザーのプライバシーが向上するとしていますが、ここでいう「プライバシー」とはサードパーティーの拡張機能開発者が定義するプライバシーではなく、Googleが定義するプライバシーを指す、と海外メディアのThe Registerは指摘。さらに、サードパーティーの開発者よりも信頼できる存在としてGoogleがコンテンツブロッカーを問題視しているならまだしも、ウェブ広告を配信するためのエコシステムを保有するGoogleならびに広告主にとってコンテンツブロッカーが問題となるため修正を加えられるということであれば、ユーザーは第三者がネットワークをフィルタリングすることを許可するようになってしまうかもしれない、と記しています。
マニフェストバージョン3で提案されているdeclarativeNetRequest APIの導入は、コンテンツブロッカーや広告ブロック機能の有効性を低下させるものですが、すべての広告ブロック機能を排除するわけではありません。Adblock Plusでサポートされている基本的なフィルタリングメカニズムは利用可能となります。これについてThe Registerは、「Googleと他のインターネット広告ネットワークはどうやらオンライン広告をホワイトリストに追加するため、Adblock Plusに料金を支払っているようです。それ故、このプラグインは特別な恩恵を受け、他のサービスはぞんざいに扱われている」と記しています。
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Chromiumのマニフェストバージョン3はまだ提案段階にあり、本格的な導入はまだ先の話ですが、既に何人かの開発者は「Googleがブラウザユーザーの利益よりも広告ビジネスの利益を優先するための口実としてプライバシーという言葉を利用している」と指摘しています。
なお、The RegisterがGoogleにコメントを要求したところ、広報担当者から「これらの変更は設計プロセスにあるものである」「状況は変更される可能性があり、利用可能な場合はアップデートを共有します」という返答が得られたそうです。
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