サイエンス

花の蜜を吸うチョウは花より先に地球上に生息していた可能性

by Karina Vorozheeva

(チョウ)や(ガ)は花の蜜や水分を吸うための長いストロー状の口である「口吻」を持っています。これまでは植物の中に花が登場したことで、チョウやガのような口吻を持つ生物が登場するようになっていったと考えられていましたが、最新の研究論文によるとチョウは花が存在する前から地球に生息していたようです。

A Triassic-Jurassic window into the evolution of Lepidoptera | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/4/1/e1701568

Triassic Butterfly Park? - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/triassic-butterfly-park/

The Oldest Known Butterflies Existed Before Flowers | Smart News | Smithsonian
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/oldest-known-butterflies-existed-flowers-180967805/

化石の中に昆虫由来の斑点のようなものが存在することは長らく知られていましたが、これまでの化石調査では、生態系を調べるために花粉や胞子に焦点を当てる研究がメインでした。しかし、最新の研究ではドイツ北部で採掘された化石サンプルから、チョウやガの体を覆う鱗粉が化石化したものが発見され、話題となっています。

発掘された化石をオランダのユトレヒト大学の大学院生であるティモ・ファン・エルディク氏らが詳細に分析したところ、何と約2億1000万年前のチョウやガの鱗粉であることが明らかになっています。約2億1000万年前というのは三畳紀後期からジュラ紀初期にかけての時代。なお、化石を分析したところ、鱗粉は太古のチョウもしくはガの羽・体・足部分を覆っていたものであることが明らかになっています。

by Ye Fung Tchen

エルディク氏ら研究チームが鱗粉の化石を分析するために使用したのが、先端に人の鼻毛が付いた針および、非常に強力な顕微鏡です。New York Timesのインタビューの中でエルディク氏は、「鼻毛は花粉やチョウの鱗粉を得るのにちょうどいい長さと弾力を持っています。鼻毛は教授からもらったので、私はこれが誰の鼻毛かを知りません。多分尋ねないほうがいいでしょうね」と、実験に使用された一風変わった器材について語っています。

化石は地表から300メートル以上掘り進めた地点で見つかった標本70個を調査する中で見つかっており、光学顕微鏡で調べたところ鱗粉は花弁状構造をしており、ヘリンボーンのような網目模様をしていたそうです。なお、これまで見つかった最古の鱗粉の化石は約1億2900万年前のものでした。

従来の研究では、鱗粉の構造から初期のチョウやガは「食べ物を食べるための大顎」を持っていたと推定されていました。しかし、エルディク氏が再度鱗粉の化石を分析したところ、チョウやガの「口吻」部分でだけ見られる「鱗粉の隙間」が見つかったそうです。これについてエルディク氏は、「鱗粉の構造に隙間があるということは、(大顎が口吻に変化したのではなく)それ以前のチョウやガの口吻部分で大きな変化が起きたに違いないということを示しています」とインタビューの中で語っています。

ストロー状の口吻を伸ばして花の蜜を吸うチョウ

by Aaron Burden

エルディク氏らの分析によると鱗粉の化石は約2億1000万年前のものだそうですが、花を開く開花植物が登場するのは約1億4千万~1億6千万年前とされています。つまり、今回発表された研究論文は初期のチョウやガは花が登場するよりも先に地球に生息していたことを示すものとなります。

そうなると、現在は花の蜜を吸うために使用されている口吻が、初期はどのような目的で使用されていたのかという謎が残るわけですが、これについて研究者たちは「ジュラ紀に誕生した植物の中でも最もポピュラーな裸子植物の花粉を食べるために使用されていたのでは」と推測しています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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