サイエンス

「匂い」についての知られざる5つの事実とは?


私たちは日常的にさまざまなものの匂いを嗅ぎ、多くの情報を得ています。そんな匂いに関する「知られざる5つの事実」について、イギリスの日刊紙フィナンシャル・タイムズのカスタマープロダクトチームで働くAlice Bartlettさんがまとめています。

Five facts about smell writeup
http://alicebartlett.co.uk/blog/five-facts-about-smell

◆1:嗅覚は人間が持つ3つの化学感覚の一つである
Bartlettさんによると、人間は味覚・皮膚感覚・嗅覚という三つの領域で化学物質を感知します。味覚はいくつかの重化合物を感知し、三叉神経が担う皮膚感覚はカプサイシンメントール、炭酸飲料の炭酸ガスといった刺激物に対して反応し、嗅覚は揮発性の軽い化合物を検出するとのこと。味覚は舌と喉で感知し、皮膚感覚は体全体で、そして嗅覚は鼻腔の奥にある感覚細胞で匂いを検出します。

by Barney Moss

◆2:1.5%の人々が匂いを感じることができない
人間が匂いを感じられるのは当たり前だと考えている人は多いかもしれませんが、実は100人に1~2人は匂いを感じられないアノスミア(嗅覚脱失)であるとのこと。アノスミアは先天的なものだけでなく事故などによる後天的なものもありますが、150万人の人々を対象に行われた1987年の研究によると、参加者に対して6つの匂いを嗅がせたところ1.2%が何の匂いも感じられないと回答しました。また、何人かの人々は特定の匂いだけが感じられないと答えたそうです。

なんとBartlettさん自身もアノスミアであるそうで、何の匂いも嗅ぐことができないと述べています。Bartlettさんは7歳になるまで、「匂いを嗅ぐことは努力によって身につけられるスキルなのだ」と考えていたそうで、匂いが嗅げないことは恥ずかしいことだと思って誰にも打ち明けられなかったとのこと。最終的に「どうやったら匂いを嗅げるのか」と他の人に尋ねたことで、自身がスキルを身につけていないのではなく、そもそも嗅覚という感覚がないことに気づいたとBartlettさんは述べました。


◆3:なぜか他の匂いよりも人間が検知しやすい匂いがある
理由については不明ですが、人間は特定の匂いが他の匂いよりも格段に検知しやすいとのこと。人間がゼロに近い濃度でも嗅ぎ分けることができるのは、「グレープフルーツ」「コルク」「バター」「ペパロニ」「イチゴ」といった5種類の匂い。これらの匂いに対して敏感になったところで、人間にとってどのようなメリットがあるのかイマイチ明らかでないため、いまだに科学的な説明が付けられていません。

なお、人間がこれらの匂いについて敏感であるという事実は、匂いのする化合物を入手して水で希釈して「この水から匂いがするかどうか」を尋ねることで確かめられます。「匂いがする」と答えられた場合はさらに水を加えて化合物を薄めていき、どれだけ薄めたところで匂いがしなくなるのかを測定します。たとえばレモンに含まれるシトラールという化合物はかなり強烈な匂いがしますが、グレープフルーツに含まれるチオテルピネオールはその320万倍も匂いが強いとのこと。


◆4:匂いには大きく7種類がある
香水の分類において匂いは7つの種類に大きく分類されるそうで、分類は科学的なものではないものの、それぞれのカテゴリーに含まれる化合物はある程度化学的形状が一致するとのこと。その香りとは、「樟脳(しょうのう)の匂い」「フローラルな匂い」「ペパーミント系の匂い」「エーテル臭(ドライクリーニングに使う溶液の匂い)」「刺激臭(酢のような匂い)」「腐敗臭(腐った卵の匂い)」「ジャコウの匂い」の7つ。匂いについて調べる過程でこういった知識を得たものの、残念ながらBartlettさん本人はこれらの匂いを嗅ぐことができません。


◆5:どのように嗅覚が機能しているのかいまだによくわかっていない
驚くべきことに、人間の嗅覚についてはわかっていないことが21世紀の現代でも多く残されているとのこと。たとえば人間はヒトゲノムによって347種類の匂い受容体がコードされており、これらの受容体はおよそ5平方cm程度の鼻腔上皮に位置していますが、突然変異によって受容体の数が少ないと「特定の匂いを嗅ぐことができない」といった状態になります。ところが、実際のところどれだけの匂いを人間が嗅ぎ分けられるのかについてはっきりとわかっておらず、近年の研究によるとおよそ1兆もの匂いが嗅ぎ分けられるともいわれています。

また、人間が匂いを嗅ぐ時に上皮細胞においてどのような働きが起こっているのかという点についても、2つの競合する理論があるそうです。一つが「化学説」または「鍵穴と鍵説」ともいわれるもので、分子が持つ三次元的な形状だけでなく化学的・物理的特性によって匂いを嗅ぎ分けているというもの。もう一つが「振動説」というもので、分子の振動パターンによってそれぞれの分子が違う匂いとして感じられるというもの。

化学説は1949年に提唱され、振動説は1938年に提唱されたとのことですが、化学説や振動説の一方だけでは説明しきれない点も多く、いまだに研究者らはどちらの理論が正解なのか決めかねているとBartlettさんは述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
クルマの新車の匂いを太陽の熱で「焼く」ことで消滅させる特許をフォードが出願 - GIGAZINE

雨が降った時にふと感じる独特の匂いの正体は一体何なのか? - GIGAZINE

犬の嗅覚を利用して肺がんを早期に発見する「電子鼻」が開発できるかもしれない - GIGAZINE

「プールのにおい」はおしっこと塩素が反応した化学物質の臭い、健康に悪影響を与える可能性あり - GIGAZINE

自分では気づきにくい「ひどい口臭」を検知する高性能センサーが開発される - GIGAZINE

過去の記憶も呼び起こす「歴史のにおい」を保存している女性 - GIGAZINE

「パートナーのシャツの匂いをかぐとストレスレベルが下がる」という研究結果 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.