常人の100倍もの色を見分ける「4色型色覚」を持つ女性がいるのはなぜか?

by Melanie Bellgardt

一般的に人は100万色を識別しますが、世の中にはその100倍である、1億もの色を識別する「4色型色覚」を持つ人が存在すると考えられています。一説によると女性の12%が4色型色覚を持っているとも言われていますが、なぜ女性だけが4色型色覚を持っているのか、そして4色型色覚が現れるのはなぜなのか、the neurosphereが解説しています。

The mystery of tetrachromacy: If 12% of women have four cone types in their eyes, why do so few of them actually see more colours? | the neurosphere
http://theneurosphere.com/2015/12/17/the-mystery-of-tetrachromacy-if-12-of-women-have-four-cone-types-in-their-eyes-why-do-so-few-of-them-actually-see-more-colours/

人間は目の中に赤錐体(L錐体)・緑錐体(M錐体)・青錐体(S錐体)という3つの錐体細胞を持っており、それぞれが色を感じ、脳へ「これは何色だよ!」というメッセージを送ることで「色覚」を得ています。一般的に1つの錐体細胞は約100種類の色を識別しており、それを3つ組み合わせることで、人は合計100万色を識別しています。


しかし、研究が進むにつれて「4つの錐体細胞を持っている人がいる可能性」が出てきました。4つの錐体細胞を持つということは1億以上の色を知覚できるということ。一説によると、この「スーパービジョン」を持つ女性が、女性全体の12%を占めているとのこと。

1億以上の色を知覚できる「スーパービジョン」を持つ女性が12%もいる可能性 - GIGAZINE


では、なぜスーパービジョンを持つのは女性だけなのでしょうか。

◆「4つめの錐体細胞」は事実なのか?

by vtdainfo

3つの錐体細胞は色を感じて脳に信号を送りますが、これを可能にしているのは、錐体細胞に含まれるオプシンと呼ばれる分子が光の波長を吸収しているから。オプシンの分子は各錐体細胞によって異なり、それぞれ得意とする可視スペクトルの波長を感受します。つまり、4つ目の錐体細胞を持っている人は、現在分かっているオプシンとは違う「別の光の波長を認識できるオプシンを持っている人」と言い換えることができるわけです。

一般的に、人間が認識できる光の波長は400~700nmまでと言われています。蛇や蜂は人間が認識できない光の波長を捉えることができるため、SF映画などでは人間と蛇を掛け合わせることによって特殊能力を得ることもありますが、現実にスーパービジョンを持つ女性がいるとすれば、それはDNA配列の変化と遺伝が主な原因です。

オプシンに関する遺伝子に突然変異が起こり、それが実際にオプシンの分子の光の受容方法を変化させた時、「4つ目の錐体細胞」が発生します。この時、M錐体とL錐体のオプシンの遺伝子はX染色体に存在するため、スーパービジョンに関わる遺伝子の突然変異は女性だけに起こります。もし突然変異が起こったオプシンの遺伝子を母親から受け継いだ男性がいた場合、X染色体を1つしか持たないので、男性は3色型色覚になります。7番染色体に含まれる通常のS錐体と、X染色体に含まれる通常のL錐体、そして突然変異のM錐体を受け継ぐことで、「認識できる色数は同じだが、見える色が人と異なる」タイプの色覚者になるからです。

しかし、女性の場合はX染色体を2つ持っています。そのため、X染色体に含まれる通常のM錐体・L錐体の他に、突然変異したM錐体・L錐体を持つ可能性があります。これが、女性だけが「スーパービジョンを持つ可能性がある」ことの理由です。

◆4色型色覚を見分ける方法

by Serge

全女性の中から4色型色覚を持つ女性を見分けるのは容易でないため、研究者らはまず色覚障害の息子を持つ女性を募集しました。上記で述べた通り、色覚障害を持つ男性の母親はM錐体・L錐体のオプシンに突然変異が生じている可能性があるからです。そして、女性たちに対して一般の人々には見分けることができない色調の変化を示し、違いが分かるかを尋ねたとのこと。

色覚障害を持つ人々は「多くの人が識別できる特定の色が同じに見える」という性質を持つのですが、色覚障害者の母親にテストを行ってみたところ、実際に、彼女たちは多くの人が認識できない色の違いを認識できたとのこと。

そこで研究者らは、母親と息子が同じ「特別変異の錐体細胞」を持っているということから、4つ目の錐体細胞は「息子が見ているものと同じ色」を感じ取っていると仮説を立てました。

この仮説から導き出せるのは、女性に対して「色覚障害を持つ自身の息子には違いが分かるが、それ以外の人には違いが分からない色の違い」を尋ねることで、スーパービジョンを持つかどうかが分かるのでは、ということ。そこで、研究者らは過去の発見に基づき、いくつかのテストを考案します。

1992年、人のDNAを使い、細胞の中にS錐体・L錐体・M錐体のオプシンを生成し、光の波長に対する反応が観察されました。この実験によって、それぞれの錐体細胞が光の波長によって刺激された時、いかにたやすく信号を計算するのかが示されました。

例えば、以下のグラフはM錐体の反応を示しています。最も左側にある黒点は490nmの波長の光に対するM錐体細胞の反応で、この波長に関しては感受性があまり高くないことがうかがえます。真ん中の黒点は530nmの光を波長を受けた時で、この時、M錐体は最も信号を送っています。最も右側にある黒点は600nmの光の波長を受けた時の反応を示しており、ほとんど信号を生み出していません。


この研究結果をもとに、研究者らは一般の人々には同じに感じられる、しかし色覚障害を持つ人には違いが分かる光の波長をミックスし、被験者らの反応を観察しました。

まずは以下が通常の3色型色覚の人々の反応。590nmの波長の光に対し、M錐体とL錐体が反応しています。


そして、540nmと670nmの光の波長をミックスした時の反応がこれ。2種類の波長をミックスすると、脳が590nmの波長と同じものと認識しているのが分かります。


続いて、M錐体に変異があり、通常に比べL錐体に信号を送る人の反応を見ています。まずは590nmの波長に対する反応。


そして、これが540nmと670nmの波長のミックスに対する反応。右側のグラフを上記のものと見比べてみると、計算の結果、光が別物として認識されていることが分かります。


つまり、突然変異タイプの3色型色覚の人々は、通常であれば「同じ」と認識される2種類の波長を区別しており、ゆえに、色が大多数の人々とは違う見え方をしているということ。そして、この色覚障害を持った男性の母親は突然変異のM錐体と通常のM錐体を持っており、より多くの色を見分けることができる、という仮説が導かれるわけです。

しかし、実際のところ、4色型色覚の人が必ずしも色に対して3色型色覚の人と違う反応を示すとは限りません。実験でも、色覚障害のない息子の母親と、色覚障害を持つ息子の母親は多くの場合、似たような反応を示しました。遺伝子解析が行われた結果、少なくとも色覚障害を持つ息子の母親9人のうち7人が4色型色覚だったことが判明しましたが、この母親の色覚が3色型色覚の人よりも優れているかというと、そうではない、という点は謎のままです。

ただし、上記の7人の母親のうち1人は、自分の息子以外が見分けられない色を見分けてみせたとのこと。では、他人に見分けられない色を見分けられる4色型色覚の母親と、見分けられない4色型色覚の母親の違いは何なのでしょうか?

◆「4色型色覚」以外の要素

by Aaron Edwards

この点について、遺伝子の突然変異はさして重要ではないものと重要なものの2種類があるのではないか、という見解があります。オプシンの遺伝子についても、タンパク質に大きな変化をもたらすものと、そうでないものがあるわけです。

4色型色覚の女性2人の、4つ目の錐体の反応を比較したグラフが以下。左側の女性の4つ目の錐体の反応はL錐体の反応とほぼ重複しており、脳が2つのシグナルを同一のものと捉えている可能性があります。一方、右側の女性の4つ目の錐体はM錐体とL錐体の間にあり、いずれのグラフとも重複していません。つまり、4つ目の錐体はS・L・M錐体のいずれとも異なる信号を送るため、普通の人よりも多くの色を見分けることができたわけです。

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in サイエンス, Posted by logq_fa