スマホやタブレットの使い過ぎはテレビの見過ぎより大きな悪影響を子どもに及ぼす
by Paul Morris
スマートフォンは非常に便利なデバイスですが、子どもがスマートフォンを使いすぎることを心配する親は多いもの。「スマートフォンに対する危機感は新しいテクノロジーに慣れていないだけの拒否反応だ」という主張もありますが、研究者らはスマートフォンなどのスクリーンを見過ぎることで発生する子どもへの悪影響を確認しており、「持ち運べるスクリーンデバイスはテレビよりも大きな悪影響を及ぼす」といわれています。
Associations between screen time and sleep duration are primarily driven by portable electronic devices: Evidence from a population-based study of U.S. children ages 0 to 17 - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1389945718306099
Worry over kids' excessive smartphone use is more justified than ever before
https://theconversation.com/worry-over-kids-excessive-smartphone-use-is-more-justified-than-ever-before-108585
How does screen time affect kids’ brains? The first results of a landmark study are alarming.
https://bigthink.com/mind-brain/screen-time-nih-study-60-minutes
アメリカ国立衛生研究所(NIH)は3億ドル(約340億円)もの資金を費やして、子どもがスマートフォンやタブレットなどのデバイスを使用することで引き起こされる影響について研究しました。1日のデバイス使用時間が異なるさまざまな子どもたちを対象に学習能力をテストし、MRIによるスキャンも行ったとのこと。
その結果、スマートフォンをはじめとするスクリーンを備えたデバイスの使用時間が1日あたり2時間を超える子どもは、言語や思考能力を測定するテストのスコアが低いことがわかりました。また、MRIスキャンで脳の状態を調べた結果、1日あたりのスクリーンデバイス使用時間が7時間を超える子どもにおいて、大脳皮質が薄くなっていることが判明。大脳皮質が薄くなる現象自体は脳が成熟した段階でほとんどの人に起きる変化ですが、スマートフォンやタブレットの使用時間が長い子どもは通常よりも早く大脳皮質が薄くなっているそうです。
研究を行ったNIHのGaya Dowling博士は、「私たちは大脳皮質が薄くなる現象がスクリーンを見る時間が長いことに関係しているのかどうか、正確に理解しているわけではありません。また、この現象が悪いことなのかどうかという点についても不明であり、今回の研究結果は単なる事実の報告に過ぎません」と述べ、事実の評価については慎重な姿勢を示しました。
by Honza Soukup
今回のようにスクリーンデバイスの使用が否定的結果をもたらす研究に対し、これらの反応は最新テクノロジーに対する反発だと考える人も根強く存在します。「昔は電話のかけ過ぎやテレビの見過ぎが問題視されていましたが、結局当時の子どもたちは正常に成長した」という点を持ち出し、現代におけるスマートフォンやタブレットも過去のテレビと同様に、それほど神経質になるものではないというのです。
しかし、サンディエゴ州立大学の心理学教授であるJean Twenge氏は、過去に問題視されたテレビと現代のスクリーンデバイスには大きな違いがあるとしています。研究者らは長年にわたって子どもたちのテレビ視聴時間を調査してきましたが、1日あたりの視聴時間が平均2時間半を超えることはなかったそうです。ところが2016年の時点で、平均的な10代の子どもは1日あたり6時間以上もデジタルメディアに触れているとのこと。
Twenge氏は、現代の子どもたちは友人と直接会ったりする時間を削らなければならないほど、スクリーンデバイスに夢中になっていると指摘。スマートフォンが従来の電話やテレビと違ってこれほどまでに子どもたちを引きつけるのは、デジタルメディアやウェブサービスが多くのエンジニアたちによって「人々を魅了するように」作られている点を挙げています。
また、通常はリビングや自室のどこかに据え置かれているテレビと違い、スマートフォンやタブレットはどこにでも持ち運ぶことができます。学校であっても夕食中であっても子どもたちはスマートフォンの画面を眺めることができ、デジタルメディアを夢中で消費しています。
by natureaddict
スマートフォンなどのデジタルデバイスの長時間使用は、子どもたちの睡眠時間に悪影響を与えるという研究結果も発表されていますが、「それはスマートフォンやタブレットに限らずテレビだって同様に悪影響を及ぼしている」という主張もあります。そこでTwenge氏らの研究チームは、睡眠と携帯できるスクリーンデバイスの関連だけでなく、睡眠とテレビの視聴についての関連についても調査したとのこと。
Twenge氏がアメリカ合衆国国勢調査局の調査結果を分析したところ、1日あたり4時間以上もポータブル式のスクリーンデバイスを使っている2歳~10歳の子どもは、スクリーンデバイスを使用しない子どもに比べて2倍もの割合で顕著な睡眠に関する悪影響が出ていることが判明。テレビの視聴時間も睡眠時間の低下に関係していましたが、ポータブルデバイスよりも関係の度合いは低かったそうです。
また、1日あたり4時間以上スクリーンデバイスを使用している14歳~17歳の若者は、デバイスを使用しなかった同年代の若者と比べて44%も睡眠不足の割合が上昇しました。その一方で、テレビの使用時間と睡眠不足の関連性はそれほど高くありませんでした。
by Drew Rae
Twenge氏はスマートフォンやタブレットがテレビと違う点として、テレビは単にメディアを消費するだけであるのに対し、スマートフォンなどではSNSにおける友人との交流や情報収集など、社会生活の大部分を占めている点を指摘しています。簡単にベッドの中にまで持ち込めるスクリーンデバイスの発達は、2012年以降のティーンエイジャーたちにおいて急速に睡眠不足が増加している事実と、大きな関係があるかもしれないとTwenge氏は述べました。
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