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スタートアップのお金の流れを分析したレポート「2018 State of Startup Spend Report」

by Annie Spratt

スタートアップの成功は将来のイノベーションや経済成長にとってプラスに働くものと考えられていますが、スタートアップとしてビジネスに取り組むには、資金調達やオフィススペースの確保、CRMなどさまざまな問題がつきまとうものです。そんなスタートアップがビジネスとしてどのような軌跡をたどっているのかを知るための指標となる、2018年度のスタートアップの支出関連情報をまとめたレポートが、スタートアップ向けに個人保証や保証金の差し入れなしにコーポレートクレジットカードを提供するBrexが公開しています。

2018 State of Startup Spend Report - Brex
https://brex.com/blog/state-of-spend

スタートアップを始める創業者たちにとって大きな疑問点となるもののひとつが、「大手スタートアップはどのようにお金を使っているかの?」という点。しかし、これまでスタートアップがどのようにお金を使っているのかがまとめられたレポートなどは存在していませんでした。そこでBrexは「スタートアップ市場全体が透明性の高い文化を形成し、互いが互いに学び合い、ビジネスを成長・加速することができるような環境を作り出すため」、スタートアップ市場全体のおおまかな支出傾向をまとめたレポートを作成・公開することに決めたそうです。


なお、Brexは自社データおよびスタートアップへの投資を行うシードアクセラレーターのYコンビネータのデータを活用し、スタートアップ市場の動向を分析したと記しています。

◆スタートアップへの投資額
近年、資金調達について発表を行っていないステルスモードのスタートアップへのベンチャーキャピタルからの投資が広がっています。Brexが公開したステルスモードのスタートアップについての報告書によると、ベンチャーキャピタルからの投資の実に14億3000万ドル(約1600億円)分がステルスモード・スタートアップへの投資であることが明らかになっています。

以下のグラフはステルスモードのスタートアップへの投資約14億3000万ドルが、どの投資ラウンドで行われたものかを示すもの。14億ドル超という巨額の資金の約75%が起業前の段階ですでに集まっています。


なお、ステルスモードのスタートアップを業界別に分類し、資金調達額の上位30%を占める業界だけをピックアップすると、金融サービス・ヘルスケア・コンシューマーおよびエンタープライズソフトウェア・不動産・バイオテクノロジー・食品&飲料となるそうです。ただし、ステルスモードのスタートアップへの投資はベンチャーキャピタルによる投資総額のわずか3~5%だそうです。

ステルスモードへの投資額は14億3000万ドルでしたが、The Q3 2018 Global VC Reportによるとベンチャーキャピタルからスタートアップへの投資額は、起業直後の段階で80億ドル(約9000億円)、起業後期にもなると700億ドル(約8兆円)にまで膨れあがるとのこと。

Brexに投資を行うベンチャーキャピタルのIVPで働くSomesh Dash氏によると、投資のトレンドは「機械学習とAIがトレンドを支配していますが、フィンテックやB2B、SaaSにも多くの投資が行われている」とのことです。

◆スタートアップのバーンレート
続いて「スタートアップが何にお金を費やしているのか?」について。分析の結果、スタートアップが1カ月の会社経営のために必要とする資金「バーンレート」を、資金調達額別に示したのが以下のグラフ。グラフは投資ラウンドの段階別に分けられています。

例えば以下のグラフはプレシード(シードラウンドより前の段階)のバーンレート。資金調達額が1000ドル(約11万円)から5999ドル(約68万円)の範囲の場合、バーンレートは100%となっており、つまり月々の会社経営に必要な支出は1000ドルから5999ドル程度ということになります。


シードラウンドのバーンレートは5000ドル(約57万円)以上5万ドル(約570万円)未満


シリーズAのバーンレートは3万ドル(約340万円)以上20万ドル未満(約2300万円)


シリーズBのバーンレートは10万ドル(約1100万円)以上30万ドル未満(約3400万円)


また、投資ラウンドをプレシードからシリーズAまで以降した「成功しているスタートアップ」のバーンレートは、3万ドル以上45万ドル(約5100万円)未満


分析の結果、バーンレートが特に高いのはインターネットサービス・運輸・データアナリティクス業界。逆にバーンレートが低いのはコンシューマーエレクトロニクス・デザイン・オペレーティングシステム・衣料品/アパレル業界です。

また、地域別にスタートアップのバーンレートを比較したのが以下のグラフ。バーンレートが最も高い地域、つまりはスタートアップの月々の支出が最も多い地域は、ベイエリアやシリコンバレーではなくサンフランシスコ。加えて、サンフランシスコは成長率の高いスタートアップが最も集中している地域ですが、シードラウンドのスタートアップでも毎月の支出が37万ドル(約4200万円)程度になっており、この数字はバーンレートが2番目に高い地域と比べても「毎月の支出が7万ドル(約800万円)ほど高い」ということを示しています。


◆スタートアップが使っているテクノロジーの内訳
スタートアップの月々の支出には、仕事に使うマネジメントツールやサービスの利用料も含まれます。そこで、支出情報から、Brexは多くのスタートアップが利用しているサービスやソフトウェアをまとめています。

スタートアップが使用するライドシェアサービスはUberが58.3%と、Lyftの41.7%を上回っています。タスク管理にはAsana(45.5%)よりもAtlassian(54.5%)が使用されており、コラボレーション・生産性ツールとしてはMicrosoft(39.5%)よりもGoogleのG Suite(60.5%)が好まれています。


メールマーケティングにはHubSpot(20%)やMailchimp(40%)、SendGrid(40%)。ERPにはIntuit(83.3%)やXero(16.7%)。カスタマーサポートにはIntercom(77.8%)やFront(22.2%)。


デザインプロジェクトマネジメントにはFigma(7.7%)、Zeplin(30.8%)、InVision(23.1%)、Toolkit(38.5%)。CRMにはSalesforce(13%)、Pipedrive(26.1%)、Copper(60.9%)。クラウドサービスはAWS(54.3%)、Google Cloud(20%)、Heroku(25.7%)。


Brexは「スタートアップはユーザーフレンドリーで手ごろな価格の革新的なソリューションを市場に投入するために、他のスタートアップに投資している」と記し、スタートアップが独自の生態系を作り出しているとしています。

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in メモ, Posted by logu_ii

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