最新の3Dデジタル造形をフィギュア原型師御用達ソフト「ZBrush」公式がたっぷりと語った60分レポート
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3DCGモデリングソフトと最新フルカラー3Dプリンターを駆使した作品が並ぶ「ウルトラモデラーズ 超作品展」が2018年11月23日~25日に大阪で開催されました。会場で実施されたトークパネル「ウルトラ!セミナー」では、「Pixologic降臨、ZBrush公式が語る造形の今」と題し、3DCGモデリングソフト「ZBrush」を開発したPixologicの日本マーケティングディレクターであるトマ・ルーセル氏と、同じく日本マーケティングマネージャーの成川大輔氏が、ZBrushでの造形のコツやテクニックを語りました。
3Dモデル造形師集団 | Ultra Modelers
https://www.ultramodelers.site/
左が成川大輔氏、右がトマ・ルーセル氏。ルーセル氏のプレゼンテーションはすべて英語だったため、トークパネルは成川氏が通訳を務めながら進められました。
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トマ・ルーセル氏(以下、「ルーセル」と表記):
少しZBrushについて話させていただきたいと思います。ZBrushは2018年版のプロ向けのものと、初めての方にもお使いいただけるZBrushCoreというラインナップになっております。ZBrushはデジタルスカルプティングツールとなっておりまして、デジタルで彫刻を行えるツールです。ZBrushはさまざまな業界で使われており、映像業界だったりゲーム制作に使われていたり、あとフィギュア、ジュエリー、乗り物のデザインなどに幅広く利用されています。
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ルーセル:
ZBrushは趣味で使っている方からプロフェッショナルまで幅広くユーザー層がおりまして、ZBrushCoreはどちらかといったらホビー向け、初心者が使い始めるようなソフトウェアになっており、プロ向けはZBrushとなっています。もちろんZBrushCoreは機能削減を行っておりますので、シンプルな内容でお買い求めしやすい価格になっています。Pixologicで働いている社員はほとんどがアーティストで、ZBrushはアーティストがアーティストに向けて制作をしているソフトになっています。
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成川:
自分はフィギュア製作などを行っていて、トマはフィギュア製作とコスプレを行っています。ほかのスタッフは例えば3Dプリンタで出力したりイラストレーションを行ったり、さまざまな活用方法を行っています。
ルーセル:
アーティストでなければ、どのようにしてアートソフトを作ることができるかという話なんですけれど、無理な話なんですね。アーティストがアーティストのために作っているからできることなんだと思います。
成川:
私たちが個人的に制作している作品の一例なんですけれど、どのようなものを作っているかお見せします。これはワンダーフェスティバル向けに制作した東方Projectのキャラクターの霊烏路空(れいうじ うつほ)というキャラクターの作品です。実際にこれ全部がZBrushで作られておりまして、出力は3Dプリント、それをシリコン型に入れて複製しています。例えばどれくらい細かく作れるかというと、この靴紐とかも全部含めてやっている状態なんですね。全長、羽の頂点のところまで含めて25cmということです。土台とかも。サイズとしては結構でかいんですけれどこれくらいディテールは詰め込めますよと。
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成川:
これがワンダーフェスティバル2018年[冬]向けに個人向けに制作を行ったファンアートの1つで、とある科学の超電磁砲の佐天涙子(さてん るいこ)というキャラクターなんですけれども、これも全部ZBrushで作っています。出力はForm2ですね。一つ前のやつはHD3500という業務用のプリンタを使っているんですけれども、50万ぐらいのプリンタでこれぐらいのものがほぼ遜色の無い形で出せるんですね。これも高さが25cmぐらいで、これぐらいのクオリティのものができると。これぐらいのディテールと作り込みを行うことができるんです。
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成川:
これがワンダーフェスティバル2018年[夏]で制作したもので、土台込みで25cm、出力がForm2で、土台自体は結構大きかった。服のもこもことか細かいところを作り込んでいって、ZBrushのSurface Noiseを使って制作をしたんです。
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成川:
これらの作品は全部生放送で制作していて、YouTubeで動画も上げているので、ご存じの方もいるかも知れないんですけれども、動画で2作品とも見られます。これが別のアングルなんですけれども、塗装で木の木目みたいな表現もできますし、この辺はほぼ全部ZBrushのZModeler機能で制作をしているんですね。模様とかをイラストレーターで作って、アルファとして書き出しを行ったあとに転写して、ZModelerで大まかな枠組みを作って調整しています。
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成川:
こちらが次回のワンダーフェスティバルで出す予定なんですけれども、Sculptris Proが実装されたあとにPolyGroupの断面を作って、PolyGroupとPolyGroupの境目のところに溝掘りをしてラバースーツみたいな表現を使っております。これも同じく個人的に制作を行っているファンアートで、佐天涙子というキャラクターです。
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成川:
これが現在制作中のものなんですけれども、これはIntersection Maskerの最新の機能を使いながらどこまでできるのかなと検証を行っているところです。例えばリボンのところはBend Curveという機能で、デフォーマーを使って特別な形状を再現しています。
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成川:
これも現在制作中の物で、最近生放送で2日程で制作して、1日の生配信が4時間ぐらいなので合計8時間ぐらいで作っているんですけれども、このあと40.1度の熱が出まして(笑)そこから復活して今ここにいるので全然作っている時間がなかったんです。トゥーンレンダリングの実例としてなんか作れればいいかなと思っていて、これはフィギュア用で作ってはいないんですけれども、マテリアルの質感をいじくってアニメ調やセル画調の雰囲気を出せるかなと検証しました。
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成川:
ここからはトマの作品になります。トマもファンアートの制作は結構行っておりまして、これはNieR:Automataの2Bというキャラクターです。この頭上から土台含めて高さが50cmぐらいあるんですね。かなりのスケールになっていて、横の缶がちっちゃくなっているんですけれども、それぐらい大きい感じがあります。
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ルーセル:
これはマレーシアのアーティストの方がイラストを制作していて、それを元にして作ったDemon Queenという作品になります。これも同じく高さ50cmぐらいで制作を行っています。出力は全部Form2で出力しています。ドレスの黒に関してなんですけれども、反射を抑える特殊なインクの黒を使っていて、吸い込まれるような見た目になっています。
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ルーセル:
これは過去に制作したシドニアの騎士のキャラクターです。これもワンダーフェスティバルで当日版権のもと展示を行っていて、実際にZBrushがこのように使えますよという作例に使っています。
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ルーセル:
作るのに2週間ぐらいかけました。この形状の制作から分割まで全部ZBrushで行っています。塗装があんまり得意じゃないので基本的には白黒のままで制作しています。
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ルーセル:
私はスターウォーズの大ファンなので、これはコスプレの一例なんですけれども、カイロ・レンのヘルメットを制作しています。これは2016 ZBrush Summitで展示を兼ねて、さらに実際にコスプレをして歩き回っていました。これらもForm2で出力しています。
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ルーセル:
もちろんカイロ・レンのライトセーバーも制作しています。ヘルメットもそうなんですけれども、両方ともどちらかというと有機的なモデルではないのでZModelerを使って主な作品を作っています。
成川:
これは実際に塗装やウォッシングといって、汚しなども加えた状態の画像になります。今回は塗りの努力もしましたよ(笑)
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ルーセル:
私は子どもが二人いるんですけど、前回日本に家族で訪れた際に小さい子が寺院をかなり好きになりまして、その後に仏像のポーズの真似をするようになったんですね(笑)じゃあそんなに好きだったらお前を仏像にしてやるって言って(笑)
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最初のころはZBrushLIVEで作っていました。FDMプリントで出力しているんですけれども、銅フィラメントという物を利用していて、銅フィラメントの出力をすると実際に銅みたいな質感で出すことができるんですね。その後にポストプロセスという形であとからサンドペーパーで磨くと結構光沢が出てくるんです。
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成川:
これらは自分たちで制作している一例ですが、Pixologicの社員は全員このようにそれぞれが別々のジャンルで活躍をしているので、例えばアーティストの方がどのような要求や期待を持っているのかというのも、我々が実際に制作をして、検証しながら行っているんですね。それら検証結果をZBrushに反映して製品化しています。
ルーセル:
ZBrushのコンセプトは1つだけで、ブラシを使ってスカルプトを行っていくというのが基本コンセプトになっております。ZBrushでスカルプトをする際にはカメラ操作やナビゲーションが重要なポイントの1つです。実世界で彫刻を行っていくと、自分の首ってかなり動くじゃないですか。実際に彫刻を動かして確認しながら制作すると思うんですけれども、まったく同じようにスカルプトをして、見回して、どのような作品ができあがっているのかを確認しながら制作を行う必要があるんですね。
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ルーセル:
短時間なのであまりきれいなものはできあがらないかもしれないですけれど。大きなストロークから細かいストロークまで、徐々にできあがるにつれてディテールを詰めていくようになります。このようにムーブブラシを使うと大まかな形状を作ることができます。
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ルーセル:
正面から見るとプロポーションはかなり良かったんですけれど、横から見ると前面だけ伸びているような状態になるので、見回して調整を行う必要があるんですね。
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ルーセル:
頭は気に入った形状になったので、じゃあ次は耳を作っていきたいなと思ったらこういう風にブラシサイズを調整して大まかな形状を作ることができます。
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ルーセル:
もし耳を作ることに関してあまり自信がなかったら、言い方はあれかも知れないですけれど、ズルをすることができるんですね。ZBrushにはIMMボディパーツっていう体の部位などを標準でプリセットとして入れている機能があるんですね。さっそくそれを利用して耳が完成しました。
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ルーセル:
耳の部分は明るいんですけれど頭の部分は暗いですね。これは暗くなった部分にマスクというものが適用されておりまして、ブラシで直接触ったとしても影響を与えないように、範囲を指定できるんですね。マスクが適用されているので耳の部分のみの調整を行ったり、頭部の部分のみの調整を行ったりということができるようになっています。マスクの反転やマスクの解除も活用していくと調整を行う範囲を指定することができるようになります。
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成川:
形ができあがったらDynameshが有効になっている状態で、Ctrlキーと左クリックでのドラッグを行うと結合を行うことができるんですね。たったこれだけの動作で耳と頭の部分が結合や、いま鼻を作っているんですけど、鼻の部分の結合を行うことができます。
ルーセル:
これで鼻の頭や耳というのをガンガン作っていくことができます。今はラフ形状の制作を行っているのでざっくりとした形状になっているんですけど、もちろんどのタイミングであっても解像度や作り込みのレベルをあげていってどんどん細かな部分を制作していくこともできます。
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ルーセル:
少しだけ解像度を上げて、Shiftキーを押しながらなでていくと、先ほど見えていたポリゴンの線がなくなってかなりスムーズになりました。これで大まかなくちびるの形状から、こまかなシワの部分を作っていったりできます。自身の造形能力にもよるんですけど、たった数分でこのような形状の制作を行ったり、楽しんで作業を行うことができます。
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ルーセル:
形状を作るのには2ステップありまして、ボリュームをつけて質量を作っていく場面と、細かなディテールを作り込んでいく場面とに分かれています。
成川:
ZBrushの中にあるZSphereという機能はこのように親子関係を作ってツリー形状みたいなものを作ることができます。こういう風に作っていくと大まかな形の骨格部分や、短時間で人物の足といった基本的な構造が作れます。例えば彫刻で言うところの、針金を中に作ってその周り粘土を固めていくのと全く同じ作業を行うことができます。これが今針金を入れている作業だと思っていただければ、似たような作業になります。
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ルーセル:
もちろんZSphereとZSphereの間にさらにZSphereを追加して、それを移動させて、回転させて、サイズなどの調整して、ということができるんですね。針金だと元に戻すのがなかなか難しいと思いますけど、ZSphereの場合はこういう風にさまざまな調整を行いながら、リアルタイムで簡単にすいすいと変えていけます。
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ルーセル:
ざっくりしたボリューム感だけでなく、こういう風にポーズ付けもすることもできます。いまシンメトリーを解除して、左右対照を崩した形にしてるんですけど、このようにポーズ付けをこの段階で行うこともできます。
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ルーセル:
これが先ほどDemon Queenのモデルで実際に見せた制作途中のものです。これがZSphereを元にしてその後にポリゴンが適用されている状態になります。ZBrushのいいところは、1万のヒストリーを保持することができることです。
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ルーセル:
これが実際に行った制作の過程を見せているところです。アナログで造形をした方なら分かると思うんですけれど、針金とアルミホイルと粘土とを組み合わせて作っていきますが、ZBrushでも全く同じことができます。このようにZSphereを使って針金を設置して、その周りに肉付けを行っていくという状態になっています。
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ルーセル:
制作過程でDynameshという機能を使っているんですね。Dynameshという機能を簡単に言うと、ポリゴンの中の構造を上書きして形状を更新することによって、伸びている物に対して均一に分割を行って、彫り込みをしていきやすい状態にメッシュを置き換えてくれる機能になります。制作途中でDynameshからSubdivision Levelsというものも利用しています。Subdivisionとは何かというと、例えば四角のポリゴンに対して田の字にポリゴンを割っていくんですね。そうすると少ない頂点数で曲面のような大きくて複雑な形状を同時にコントロールすることができます。ZBrushはそれを行き来することができるんですよ。これはMulti-Resolution Mesh Editingという長い名前になるんですけど、そういう機能がありまして、細かいポイント数で曲面のような複雑な形状を合わせてコントロールすることができるので、それを往復することによって、曲面とか円柱をコントロールしています。
ルーセル:
履歴を見ると、背中の部分がまだまだ造形が粗かったりしています。こういうのは実際に制作していく途中でいつでもそこに振り返っていって、調整を行えるんですね。実際の彫刻家も、ひとつ直したら別のところを見てすぐそっちに手を加えていく。見つけ次第すぐ直してリファインをしていくということができます。
ルーセル:
この段階で体の作業としては32分程度かかっています。
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ルーセル:
Subdivision Levelsを往復します。低い状態にもっていくとポリゴンの面が見えるくらい粗くなっているんですけど、Subdivision Levelsを上げていくとほとんどポリゴンの面が見えなくなるぐらい細かくなるんですね。
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成川:
このようにSubdivision Levels 3の状態ではディテールの彫り込みを行えるぐらい細かいです。いま追加したんですけど、Subdivision Levels 4にしてさらに細かく作り込んでいくことができます。ここまでくるとほとんどポリゴンの面が目立たないようになります。
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ルーセル:
例えば肩のボリュームが少し足りないなと思ったら下の解像度に戻って、大まかに調整していくと、ディテールを損なうことなく下の階層で大まかな形状を変更できます。
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ルーセル:
これで上のSubdivisionに戻るとそのまま彫り込みを行った内容がキープされています。なので、細かな彫り込みと大まかな彫り込みを両立することができるんです。頂点数が少ないと大まかな形状変更するのにすごく楽なんです。なので、下の解像度に行って、大まかな変更を行うとよりコントロールを行いやすくてきれいな結果を得ることができるようになっています。
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成川:
これを見て最終データじゃないのって指さしてみたらこれじゃないって言うんですよ(笑)これは3500万ポリゴンなんです。最終的なやつは8000万ポリゴンぐらいのポリゴンデータだったのですごく大きくなっているんですね。これでもまだディテールが加えられていない状態なので、これよりさらに密になっていくと。
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ルーセル:
モデリングというと、3Dを経験している人なら分かると思うんですけれど、Tポーズというポーズから始めます。何もポーズがない状態で制作をするんですけど、マスクなどで移動して、具体的なポーズを作っていくんですね。最終的にはすべてのアクセサリーやこのように全パーツがそろった状態で低解像度のものに対してまとめてポーズ付けを行うことができる機能があるんですね。
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ルーセル:
実際にスカルプトを行っていくと、このようにシワがよっていることがあるんですよね。自分で体験したことの1つですが、このように3Dデータ上でシワがよっていたとしてもプリントアウトしたあとにサンドペーパーをかけた方が早いこともあります。なので、何時間もかけてトポロジやポリゴンの構成を気にして細かく修正していくことは可能なんですけど、サンドペーパーで一発でできるものをなんでそこまでこだわるのかって話もありまして(笑)
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ルーセル:
これからは経験者向けにちょっとしたTIPSやコツに関してお話ししていきます。これは3Dプリント用に作っているんですけれど、3Dプリントに向けたデータとして制作を行う場合には考慮しないといけないことがいっぱいあります。
ルーセル:
3Dプリンター向けのデータは、当然3Dプリンターの出力サイズに合わせて調整しないといけません。Demon QueenはForm2で出力していて、全体のサイズが50cm。Form2で出力できるサイズがおよそ17cmぐらいなので、分割をしっかりしていかないと17cmの中に入らないんです。ガレージキットの制作を行う場合、分割は複製を考慮して作ります。シリコン型を作って、しっかり取り出せる形状を意識する必要があるんですね。Demon Queenというモデルは胸元のところに線が走っているので、それを分割線として利用しています。こちらがその線です。
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ルーセル:
これが元々のデザインになっているので、このデザインを元にこういうところが分割線として利用できるんじゃないかということを考えます。分割線の考慮はすごく大事なことで、できあがったときに「あっ分割どうすればいいんだろう」とならないよう、作っている段階からある程度分割のことを考慮して、どこが分割に使用できるのかということを考えていかなくてはなりません。
ルーセル:
大きな状態で制作をして出力するのは確かに魅力的なんですけど、実際に出力をしようとすると、大きくなればなるほど体積も大きくなっていきます。中空にすることでレジン(樹脂)を節約することができます。中空にする際には厚みというのが重要な要素になってきます。厚みが足りないと薄すぎて穴が空いて壊れてしまいますが、逆にぶ厚すぎると中空にしている意味がないわけです。
ルーセル:
でっかい立方体を置いて引き算として置いていることで断面図を見ることができるようになっています。実際に出力を行う前に、このように四角の物を置いて断面図を見ていって、一部分だけ調整を行していきます。
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ルーセル:
ブーリアン操作を行うことによって、リアルタイムで中空の厚みを変えているところです。ZBrushにはLive Booleanという、リアルタイムで減算処理を行うような機能があって、それを利用することでこのようにリアルタイムで断面図を見ることができるんですね。
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ルーセル:
この緑色に表示されているのが、引き算を行う際に利用している中の形状です。膨張という機能を使って緑色のモデルのサイズを調整することで、どのような中空になるかというのをこれで決定しています。
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ルーセル:
例えば一部分だけ厚みが薄かったりして、厚みの調整を行う場合にはムーブブラシを使って中のものを選択した状態にして移動をさせるとこれで厚みを調節することができます。
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ルーセル:
ドレスの部分を作るときに、胴体の部分に干渉しないようにしたいとします。どこが干渉しているかというのはデータでぱっと見ることができないので、それを確認する方法を今からお見せします。Demon Queenの胴体モデルをコピーしてそれをクローンとして置いて、それを土台としてこのように引き算を行うことで布に対してどのように干渉しているかというのを視覚的に見ることができます。
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ルーセル:
赤い部分があるということは、干渉しているということになります。このようにLive Booleanを利用してリアルタイムで減算結果を見ながら赤が無いようにムーブブラシを利用して外側に押し出して干渉がないようにします。信じてほしいんですけど、自分が使ったこのテクニックで、実際に何も干渉しないように、問題がないようにできました。
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ルーセル:
全部のパーツをばらしてお見せしています。
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ルーセル:
それ以外にも、3Dプリントを行う上ではサポートが付く場所を考慮する必要があります。特にForm2などの業務用のプリンタというのはサポート面が必ず荒れるんです。細かなディテールを作ったのにサポート面で荒れてしまうとせっかくスカルプトを行った意味がなくなってしまうので、荒れてもいいようなところにできる限りサポートがくるように配置する必要があります。そのために、このように分割面のところに配置しているんですね。デザインをする上で、これらの内容を考慮する必要があります。
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ルーセル:
3Dプリントのいいところは、加工した上で失敗してしまったらもう一回出力し直したり、もう一度大きい状態で出力を行いたいという場合では、サイズを変えるだけで済んだりするところです。これがひとつのメリットになります。
この後、成川氏によるちょっとしたテクニック講座やQ&Aもあり、盛りだくさんな内容のトークパネルとなりました。なお、ルーセル氏によると、Pixologicは日本向けの活動を積極的に行うことを考えていて、2019年2月にはZBrushMerge 2019というイベントを東京で開催する予定とのことで、これからの展開にも十分期待できます。
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