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検査をしても異常はないのに腹痛や下痢が続く「過敏性腸症候群」はどうすれば治療できるのか?

by silviarita

検査をしても炎症や潰瘍といった器質的疾患が見つからないにも関わらず下痢、便秘、腹痛といった便通異常が慢性的に起きる過敏性腸症候群(IBS)は、多くの人が悩まされる病気です。致死性の病気ではないのでなるべく副作用がない形での治療が推奨されており、過去の研究から判明している薬に頼らない治療方法を学術メディアのThe Conversationがまとめています。

Explainer: what is irritable bowel syndrome and what can I do about it?
https://theconversation.com/explainer-what-is-irritable-bowel-syndrome-and-what-can-i-do-about-it-102579

IBSは10人に1人がかかっているといわれる病気で、慢性的な腹痛や下痢、おなかの膨満などによって患者の生活の質を大きく下げます。近年では過敏性腸症候群という言葉を使う人も増えてきましたが、実際の診断には厳格な基準があり、単なる腹痛とは異なります。2006年に作成されたRomeIII基準によると、IBSは「最近3カ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こること」に加え、以下のうち2つの要件を満たす必要があるとのこと。

・排便によって症状がやわらぐ
・症状とともに排便の回数が変わる
・症状とともに便の形状が変わる

このような基準は必ずしも診断に必要というわけではないのですが、IBSは骨盤痛や子宮内膜症といった別の病気とも症状が重なるため、正しい診断には基準が重要となると考えられています。また、血便や体重の減少といった他の症状があった場合には、血液検査や超音波診断、検便、内視鏡検査などによって別の病気の可能性が探られることになります。

◆IBSの原因とは?

by rawpixel.com

IBSの単一の原因は、2018年時点でわかっていません。家族内でIBS患者が複数存在することはありますが、これが遺伝的な要因によるものなのか、環境的な要因によるものなのかは不明です。ウイルスや細菌への感染がIBSのリスクを増加させるとはいわれていますが、通常は一時的なものであり、時間の経過とともに症状はゆるやかになります。

また、過去の研究で、子どもの時に心的外傷(トラウマ)を体験した人はその後の人生でIBSを発症させやすいということも示されています。これは、脳と腹部が神経信号やストレスホルモンといった方法を通じてコミュニケーションを取っているためだと考えられています。

感情が胃腸の状態を変えることは長らく知られてきましたが、近年は腸が人間の気分を左右することもわかってきています。2016年に発表されたオーストラリアの研究ではIBSの症状が出た後に心理的な症状が出ることも報告されていますが、全てのIBS患者が同様ではないという点には注意が必要です。

◆IBSにはどう対処すればいいのか?

by José Ignacio Pompé

IBS治療には薬が用いられることもありますが、まずは薬を使わない治療について考えるべき。2014年には「低FODMAP食」といわれる食事がIBSの症状を軽減すると示されています

FODMAPとは、消化の際に多くのガスを排出する炭水化物のことで、たまねぎ、にんにくといった根菜のほかマメ科の植物、りんご、なし、マンゴーといった果物に含まれます。


ただし、低FODMAP食を常に行わなければならない、という考えは間違い。たまねぎはFODMAPを多く含みますが、一方で腸内のバクテリアにいい影響を及ぼす食べ物です。FODMAPを厳しく制限することで腸内細菌の多様性が失われることは、自己免疫疾患や肥満に結びつく可能性も考えられます。このため、最初は栄養士に管理してもらって数週間の食事制限を行うことが推奨されています。

一方で、一般的に推奨されるふすまのような不溶性の食物繊維はIBS治療には役に立ちません。食物繊維を摂取する際は水に溶けやすい水溶性食物繊維の摂取が推奨されています。水溶性食物繊維は昆布、里芋、わかめ、大麦などに含まれているとのこと。

by Flo Dahm

このほか、1カ月と期間を決めてのプロバイオティクスの摂取、そして運動もIBSの症状を緩和するといわれています。

また多くの人にとって、ストレスや不安を減らすことはIBSの症状を軽くします。2014年には(PDFファイル)実験で、IBSに対する心理療法の有用性が報告されました。催眠療法も低FODMAP食と同程度の効果が認められており、万人に有効な方法とはいえませんが、複数回セッションを受けることで症状を軽くしてくれることもあるようです。

◆投薬治療には効果があるのか?

by lqiuz

IBSは生活の質を落としますが、人の寿命を縮めたりガンのリスクを増加させるものではないため、できるだけ副作用が少ないものが好ましいと考えられています。これまでの研究では、錠剤のペパーミントオイルが副作用を最小限にして効果を発揮すると認められているとのこと。薬は患者の症状に合わせて選ばれるべきであり、IBS症状と共にうつや不安がある人は低容量の抗うつ薬が効果を発揮します。より一般的なものとしては炎症を抑える薬が有用だと考えられています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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