なぜゾンビ映画で動物がゾンビにならないのか科学的に考察するとこうなる
by Alex Iby
人気海外ドラマの「ウォーキング・デッド」シリーズや、映画「カメラを止めるな!」など、国内外で大きな人気を集めるジャンルのひとつが「ゾンビもの」です。そんなゾンビものでは、多くの人々が何らかのウイルスに感染してゾンビに変貌していくわけですが、動物が物語に一切関わらない場合、「なぜか人間以外はゾンビにならない」という奇妙な出来事が起きます。そんな映画やドラマなどを見ていて感じるちょっとした違和感を、科学メディアのLive Scienceが真剣に考察しています。
Why Don't Animals Turn into Zombies in 'The Walking Dead'?
https://www.livescience.com/64114-animal-zombie-virus.html
記事作成時点でシリーズ9が放送中の人気海外ドラマ「ウォーキング・デッド」は、2010年から放送が続く人気の「ゾンビもの」です。そんなウォーキング・デッドは、パンデミックにより人間の文明社会はほぼ壊滅状態に追いやられており、その中で登場する主要キャラクターたちは次々とウォーカー(ゾンビ)へと変貌してきます。大量のゾンビにより文明社会や機械技術を奪われた主人公たちは、もう一度人間社会を立て直すべく、独自のコミュニティを構築し、その中で食糧や移動手段として馬などの動物を育てています。
「ウォーキング・デッド」おさらい特別映像「シーズン1〜8」 - YouTube
作中の世界でどういった種類の病原体が人間をゾンビに変貌させてしまうのかは不明で、細菌・ウイルス・真菌、あるいは宇宙から飛来した未知のものが原因となっている可能性もあります。しかし、広範囲に拡散した「ゾンビ化ウイルス」が、人間だけに影響を及ぼすという可能性は実際にあり得るのでしょうか。
Live Scienceはこの疑問をケント州立大学で微生物学者および伝染病疫学者として働くタラ・スミス氏にぶつけています。スミス氏は「ウイルスの中には種特異性(例えば、ヒト・サル類は梅毒に感染するが、他の動物は感染しないという特性)が非常に高いものも存在します」「他にも麻疹や天然痘は、人間だけが感染するものであり、人間から他の種にウイルスが移ることはないと思われます」と語り、一部の動物にのみ影響をおよぼすウイルスも存在するとしています。
もちろん、すべてのウイルスが単一の種にしか感染しないというわけではありません。スミス氏によると、2014年に世界中で猛威を振るったエボラ出血熱は、人間だけでなくコウモリにも感染してその被害エリアを広げていった可能性があります。
また、ハンタウイルスはげっ歯類にも感染するもので、感染したげっ歯類が排出した糞が乾燥しエアロゾル化したものを人間が吸い込むことで、人間の体内にハンタウイルスが入り込むということがあるそうです。スミス氏は、ウォーキング・デッドのゾンビウイルスも同じように感染を広めていった可能性があると指摘しています。
Between zombie kills in a sinkhole. ❤️❤️ #twd #thewalkingdead #twdfamily #bts https://t.co/ULd6HcYn6j pic.twitter.com/ElvKjqvl2W
— Angela Kang (@angelakang) 2018年11月8日
また、ウイルスがインフルエンザウイルスのように一部の動物群に対して大きな影響を与えている可能性もあります。スミス氏は「一部のインフルエンザウイルスは広範な種に影響を及ぼしており、2009年にはH1N1が登場した」と語っています。H1N1は、豚の間で流行っていた豚インフルエンザがヒトに感染するようになったもので、2009年に登場した際には世界中で大流行しており、登場以前に流行していたAソ連型に代わり、2009年以降に世界中で流行を続けているインフルエンザでもあります。
ウォーキング・デッドのシーズン4で、主人公のリックたちは刑務所にコミュニティを作り、ここで農業をしたり豚の飼育をしたりしていました。しかし、途中で豚が原因不明の病気で亡くなり、同じように人間たちも原因不明の感染病で亡くなり、最終的にゾンビになってしまいます。これが何かしらのウイルスにかかり死亡したのか、それとも豚インフルエンザに感染したのかは不明です。しかし、豚インフルエンザだった可能性も十分に考えられるとLive Scienceは述べました。
しかし、謎の病で死んでしまった豚たちは、映像となっている範囲ではゾンビ化していませんでした。そのため、スミス氏は「原因が何であれ、ゾンビ化する症状は今のところ人間特有のものと考えられます。そうでなければ、どこかで動物のゾンビを見ているはずだ」と述べており、ウォーキング・デッドの世界のゾンビウイルスは少なくとも「今の段階」では人間にしか影響を及ぼさないものであるとしています。
スミス氏は「ウイルスは指向性を持っています。つまり、特定の種類の細胞にのみ結合できるわけです。ウイルスの持つタンパク質は、すべての動物や哺乳類に偏在する細胞に反応することもあれば、本当に特異的な細胞に反応するケースもあります」と語っており、ウォーキング・デッドの場合は人間固有の細胞にのみ反応する珍しいタンパク質がゾンビウイルスなのではないかと推測しています。
スミス氏は伝染病の専門家として、過去に数回ゾンビへの感染を抑えるためにすべきことをまとめています。彼女によると、ゾンビウイルスは基本的に通常の病原体と同じなため、家畜をと殺する際は手を洗い、肉を調理する際はしっかりと火を通し、傷や裂傷は避けるようにと語っています。また、「可能な限り血液に触れないように」ともアドバイスしています。
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