サイエンス

体が大きすぎて自分で卵を温められない恐竜はどうやって卵を温めていたのか?

by William Irvin Sellers, Lee Margetts, Rodolfo Aníbal Coria, Phillip Lars Manning

古代の地球に生息していた恐竜は爬虫(はちゅう)類や鳥類などと同様に卵生であり、「ふ化する前の卵を抱く恐竜の化石」も見つかっています。新たに、筑波大学の古生物学者である田中康平准教授らの研究チームが、「大きすぎて自分で卵を温められない恐竜」が卵を温める方法に関する研究結果を報告しました。

Titanosaur eggshells from the latest Cretaceous of Patagonia, Argentina: implications for nesting at high latitude | Royal Society Open Science | The Royal Society
https://royalsocietypublishing.org/rsos/article/13/9/260333/483231/Titanosaur-eggshells-from-the-latest-Cretaceous-of?searchresult=1

巨大恐竜は、高緯度地域にも適応して営巣していた | 生物・環境 - TSUKUBA JOURNAL
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/biology-environment/20260909081500.html

The biggest dinosaurs couldn't sit on their eggs. Scientists say they did this instead | CBC News
https://www.cbc.ca/news/science/titanosaur-eggs-9.7336841

恐竜の卵の化石が高緯度地域で見つかるのはまれであり、北半球ではカナダ(当時は北緯57~60度)やシベリア(北緯70~75度)から発見されていますが、南半球ではほとんどが南緯26~48度の範囲に収まっていました。ところが2019年、当時の緯度が南緯55~60度であるアルゼンチン南部のチョリロ層で恐竜の卵の化石が発見されました。

以下の画像は、左がアルゼンチン南部のチョリロ層の位置を示したもので、右が実際の化石調査の様子を写した写真です。


さらに、日本とアルゼンチンの研究チームによる2020年と2024年の共同発掘調査では、チョリロ層から白亜紀後期のティタノサウルス類のものと思われる卵殻が発見されました。ティタノサウルス類は首と尾が長い四足歩行の草食恐竜のグループであり、体重は最大75トンに達したとのこと。

以下の写真は、ティタノサウルス類の一種であるアルゼンチノサウルスの復元骨格です。

by William Irvin Sellers, Lee Margetts, Rodolfo Aníbal Coria, Phillip Lars Manning

高緯度地域における恐竜の卵の発見は、「親の恐竜はどのように卵を温めていたのか?」という疑問を提起します。比較的小さな恐竜であれば卵を抱きかかえて体温で卵を温めることが可能ですが、ティタノサウルス類のように大型の恐竜は何か別の方法で、ふ化するまでの数カ月間にわたり卵を温めていたことになります。

論文の共著者であり、カナダ・カルガリー大学の古生物学者であるダーラ・ザレニツキー氏は、「(ティタノサウルス類は)大きすぎるので、(卵の上に直接かがめば)巣は巨大なオムレツみたいになってしまうでしょう」と述べています。


研究チームが発見された卵殻を調査したところ、卵殻には気孔と呼ばれる穴が多数空いており、非常に隙間が多いことが確認されました。卵が開放型の巣に置かれている場合、卵が外気によって乾燥しないように穴は少ない方が好ましいですが、穴が地中などに埋蔵されている場合は十分な酸素を通すため、穴が多い方が好ましいとされています。今回の発見は、チョリロ層で発掘された卵が埋蔵型の巣で温められていた可能性を示唆するものです。

以下の(a)はマイクロCTスキャンによる卵殻画像であり、白い矢印で示されたのが気孔の開口部です。


恐竜が埋蔵型の巣で卵を温めていた場合、その熱源には「地熱」「太陽の放射熱」「植物の発酵熱」という3つのパターンが考えられます。このうち「地熱」が利用できた証拠となる岩石や鉱物はチョリロ層で発見されておらず、「太陽の放射熱」も涼しい高緯度地域では利用できません。

そのため研究チームは、チョリロ層で発見された卵の持ち主とみられるティタノサウルス類は、「巣材に含まれる植物などの有機物が分解される際に生じる熱を利用して、卵を温めていた可能性が高い」と結論付けています。

ザレニツキー氏は今回の研究結果が、恐竜の適応能力の高さを示していると主張。「これらの文字通り最大級の恐竜たちでさえ、低緯度環境だけでなく通常はより厳しいとされる高緯度環境でも、繁殖や営巣を行う方法を編み出したのです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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