AIという新しい商品を販売するときに注意するべきポイントとは?
Tallaはカスタマーサポートチーム向けのAIで、特別なスクリプトを作成せずとも人間向けのドキュメントを読ませることで学習でき、そしてチャットを通じてさまざまな質問に答えてくれるサービスです。そのTallaのCEOを務めるRob May氏が企業向けAIを2年間販売してきた経験から何を学んだかをブログに残しています。
14 Lessons Learned From 2 Years of Marketing Enterprise AI Bots and Knowledge Bases For Support Teams
http://blog.talla.com/14-lessons-learned-from-2-years-of-marketing-enterprise-ai-bots-and-knowledge-bases-for-support-teams
買い切り型のパッケージソフトウェアが月額制のSaaSに置き換わっていく当初に「アップデートの費用はいくらかかるんですか?」という質問がでたように、ビジネスの新しい形態に対する理解は簡単には進みません。
TallaはAIであり、これは従来のSaaSとはまた違った視点で捉える必要があるとのこと。というのも、AIが実力を発揮するには適切な学習が必要です。これまでのSaaSでは無料試用版が用意されることが多く、実際に使用してどのようなツールなのかを確かめてから購入することができました。AIは新しい従業員のように、うまく仕事をこなせるようになるのに数週間かかります。また、AIは「94%の確率で……」のような確率的な出力を行う点にも気をつけなければいけません。
Tallaが実際にAIのマーケティングを行った経験をもとに、AIのマーケティングにおいてどのような点に注意するべきかを14のポイントにまとめています。
◆01:AIについて人々を教育するためのコンテンツを作る
AI企業が潜在顧客にインタビューを行った際、「AIについて調査する必要がある」と述べる潜在顧客にその使い道を尋ねても、「AIで何ができるのか」をまったく知らないことがあったそうです。しかし、「AIで何ができるのか」を全ての潜在顧客に毎回教えていくのは時間の無駄になります。そこで、代わりにブログなどのコンテンツを使用してAIがどのようなものかを示しておくべきだとMay氏は主張しています。例えば、May氏は「The PAC Framework」というブログ記事を書いています。
◆02:広告で「新しくて革新的」に焦点を当てるのは良くないがサイトでは効果がある
自社のAIを従来の概念の延長線上に表現するべきか、全く新しいものだとするべきかは難しい判断です。Tallaでは「ナレッジベース」という従来の概念をもとに、「新しい種類のナレッジベースです」というメッセージで広告を出しましたがうまくいかなかったとのこと。しかしこのメッセージは自社サイト上ではパフォーマンスが良かったそうです。「新しい」や「革新的」のワードは自社サイトでの使用にとどめ、広告では別のメッセージを使う方がよさそうです。
◆03:「AIによる~」という広告は平凡
「AIによる」という言葉を使用した広告はそれほどパフォーマンスが良くなかったとのこと。
◆04:「自動化」は広告において非常に効果的なマジックワード
「自動化」という言葉を使った広告からは非常にデモのリクエストが多かったそうです。
◆05:特定のユースケースに焦点を当てる広告は最悪
「サポート対応の完了までを短期化」や「これまでのベストな返答を複製して送信」「Slackで〇〇する」「知識を効率的に共有」など特定のユースケースに焦点を当てた広告のパフォーマンスは最悪だったとのこと。
◆06:VenturebeatやMIT Tech Reviewに掲載される
上記の2サイトからのトラフィックの量は微妙だが実際にAIを導入してくれる人が情報源にしているとのこと。
◆07:リターゲティング広告も良い
デモリクエストのパフォーマンスでは「自動化」に続いて2位だそうです。
◆08:無料試用は良くない
何カ月か無料試用を試してみたものの実際の購入にはあまりつながらなかったとのこと。
◆09:Botアプリストアもそんなに良くない
SlackやMicrosoft TeamsにはBotを簡単に追加できるBotアプリストアがついています。そうしたストア経由ではインストールは多いものの大抵はひやかしで、実際に契約まで行く数はあまり高くないとのこと。
◆10:イベントはより多くを説明できるので良い
イベントは一見クリック単価の広告よりも高く感じますが、6秒で画面から消える広告よりも潜在顧客の前で30分間製品について説明できるイベントの方がより効果的とのこと。
◆11:AI企業は「AIのマーケティング」と「AIが何をするか」という二重のチャレンジを抱えている
「サポートボット」や「企業向けチャットボット」など、どのようなAIかを示す言葉はまだ統一されていません。マーケティングの際に見せ方を誤ると購入に結び付かない層を抱え込むことになります。
◆12:AIは大量の想像上の問題を解決する
顧客に「新しいテクノロジーになにを求めるか」を聞いてもうまくいくことは少なく、顧客が「こういう問題があるかもしれない」と考えている空想の課題から距離をおきつづける必要があります。AIをうまく働かせるためにはワークフローを変更しなければならないことを顧客に認識させる必要があるとのこと。
◆13:マーケティングを使って潜在顧客の考えをアップデートする
多くの人はAIについて誤った考えをもっています。AIが魔法のように働くことを期待している潜在顧客に対し、AIをうまく働かせるにはデータを構造化した方がよいなどの知識をつけさせます。
◆14:購入のトリガーとなるカギを見つける
従来の会計ソフトのユーザーがAI予測機能などを理由にしてAI会計ソフトを購入することはありません。「よりよい予測」は必要とされていないからです。代わりに「1000人の会社で年に1億円を節約します」などはより効果的なポイントとなるとのことです。
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