サイエンス

カオス理論で知られる複雑な状況を「機械学習」によって正確に予測する技術が開発されている


気象などの自然現象を完璧に予想することは不可能であることがカオス理論によって知られており、中でも「蝶が羽ばたいたというわずかな影響によって状態が大きく変わり得る」というバタフライ効果なども有名です。しかし、そのカオスと呼ばれる複雑な世界を「機械学習」で正確に予測する研究が進められ、際立った予測精度を実現しています。

Machine Learning’s ‘Amazing’ Ability to Predict Chaos | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/machine-learnings-amazing-ability-to-predict-chaos-20180418/

メリーランド大学のエドワード・オット博士の研究チームは、カオスを機械学習で予測するシステムを研究開発しています。研究では「reservoir computing」と呼ばれる機械学習アルゴリズムを用いて、蔵本-Sivashinsky方程式と呼ばれる典型的なカオス状態を学習させているとのこと。


オット博士によると機械学習の過程は大きく3つに分かれています。火の燃え広がり方というカオスを予測する例では、まず最初に炎が燃え進む境界に沿って異なる5つの場所の高さを計測し続け、このデータストリームはランダムに選択された人工ニューロンに送られます。第2のステップでは、入力データから燃え広がる炎の境界の動きをニューラルネットワークに学習させる作業が行われ、5つの異なる方法で信号を重みづけして結合した5つの数値を出力し、これら5つの数値が一致するまで重みを調整し続けます。そして第3のステップで、炎の動きを学習したreservoirによって実際に予測を行うとのこと。


オット博士のシステムの特長は、「reservoir computingアルゴリズムが蔵本-Sivashinsky方程式について何も理解していない」という点です。カオスが支配するほとんどの世界ではそのダイナミクスを表現する方程式が見つからないことも多いため、そもそもカオスを表現する洗練された方程式を用意する必要がなく、解となるデータのみを用意すれば状態変化の予測ができるオット博士の開発する機械学習システムは、カオス予測全般において非常に効果的だというわけです。

カオス理論を研究するマックス・プランク研究所のホルガー・カンツ氏は、「オット博士の論文は、気象に関する洗練されたモデルを使うことなく、機械学習アルゴリズムを使って天気を予測できるようになるかもしれないことを示唆しています」と述べ、研究を高く評価しています。

機械学習によってカオスを正確に予測する技術によって、天気予報だけでなく、不整脈パターンから心臓発作の兆候を見つけたり、船を転覆させる危険のある波を予測したりできるのではなかいと期待されているとのこと。なお、オット博士自身は太陽フレアの発生を予測したいそうです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
頭の中にあるイメージを脳の活動データから機械学習を用いて画像化することに成功 - GIGAZINE

Googleの人工知能専門チームDeepMindがたった数カ月で40%もGoogleデータセンターの冷却システムを効率化することに成功 - GIGAZINE

「AlphaGo」に続いてGoogleのDeepMindが人間並みの知性を持つ「スーパーヒューマンAI」の開発へ - GIGAZINE

機械学習を使った調査で「うつ」病の人がよく使いがちな言葉が判明 - GIGAZINE

ガン治療に関する医療情報を「機械学習」で整理し治療に役立てるなど「医療革命」が着々と進行中 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.