ゼロから起業を成功させるために必要な16の教訓


資金もない状態で一から起業する「Bootstrapping(ブートストラッピング)」は、成功する企業が10社に1社しかないという厳しい世界です。そんな中で、WordPressのホスティングサービス「Kinsta」の共同創業者としてブートストラッピングを成功させたTom Zsomborgi氏が、ブートストラッピングを成功させるのに大切な16のことを公式ブログで公開。IT分野に限らずあらゆる起業家にとって役に立つヒントがちりばめられています。

16 Lessons Learned Bootstrapping Kinsta from 0 to 7-Figure in Revenue
https://kinsta.com/blog/bootstrapping-startup/

◆Kinstaについて
わずか4人で創業したKinstaは、創業から4年で収益が7桁(数億円)の企業に成長させました。ブートストラッピングの大成功例であるKinstaですが、Zsomborgi氏は自分たちが人並み外れて優秀だったわけではなかったと述べています。お金もなく特別な能力もない者がブートストラッピングを成功させられるかどうかは「どれほど成功したいと望んでいるか」にかかっているとのこと。

起業を成功させた人の多くは、自身の成功体験を語る上で、血のにじむような努力をしたことや、失敗と成功の狭間で思い悩む苦汁の日々を耐え抜いたことなどについて語ることはほとんどないとZsomborgi氏は考えています。そのため、誰かの成功体験を見聞きした人は、一から起業して成功することがあたかも誰にでも可能な「簡単なこと」に思えてしまい、実際に起業して失敗する例が後をたちませんが、当然、ブートストラッピングは甘いものではありません。

2013年に4人で創業したKinstaは、共同創業者の4人が手持ちの資金を出し合って産声を上げ、ベンチャーキャピタルからの資金提供を受けることなく成功を収めました。Zsomborgi氏は、投資家からの資金を得て一気に成長する企業についてメリットは多く、それを否定するつもりはないと断ったうえで、自分たちは自分たちの作った企業の100%を所有したいと考えていたため、知恵を絞り自分たちでお金を稼ぎ成長させてきたとのこと。これまでKinstaを育てる上で学んだ最も重要な16個の教訓は以下の通りです。

◆01:1日目から「ブランド」構築に努める
もしも競争相手がほとんどいないブルーオーシャンで戦う企業を作ったのなら、それは素晴らしいことだとZsomborgi氏は述べています。ただし、競争相手がいないブルーオーシャンは、そもそもサービスの需要がなく収益性が見込めない可能性があることには注意が必要です。

たいていの人は、過当競争が繰り広げられているレッドオーシャンで起業することになります。長年の競争に勝ち抜いて優位性を発揮し続け確立された巨大な企業がひしめくレッドオーシャンにおいて、大企業は資金、確固たる顧客基盤、確立されたソーシャルメディア、莫大なマーケティング予算を持っています。これらの要素を何一つ持たないスタートアップが巨大企業と競争できる唯一の武器は「ブランド」だとZsomborgi氏は考えています。


たとえ素晴らしいサービスを提供していたとしても、信頼を得ていない新興企業にお金を使う人は多くはありません。ビジネスをする上では「ブランド」としてサービスを提供することが大切で、他のサービスとは違う名前を持つことで、際立つ存在になることが大切だとZsomborgi氏は語ります。そして、ブランドこそが他の企業と差別化できる術だと語るZsomborgi氏は、「ブランド作りは起業したその日から構築し続けるべき」だと考えており、ブランドが最も現れるのは企業名だとのこと。「デンバー・デザインエージェンシー」のような「一般的な用語+キーワード」を企業名にする例は多いものですが、ブランド作りのためには、ユニークで短い企業名を探すべきだとのこと。

◆02:最初の100人の顧客を得るのが最も難しい
たとえ素晴らしいサービスを持っていたとしても、そのサービスを知る顧客はいないという悲しい現実があります。Whiteboard FridayのRand Fishkin氏によると、「サービスの無料お試しを実行させるには、7.5回のサイト訪問が必要」だとのこと。無料でサービスを試してもらい価値を知ってもらうために人を集めるというスタート地点が最も高い壁だと言えます。

Kinstaで行ったいくつかの方法でオススメできるのは「ブログの立ち上げ」だとのこと。高い専門性を持つことを示し、サービスが一流であることを訴えるのにブログは有効で、コンテンツマーケティングは効果的だったとのこと。

また、無料アカウントの提供も、貴重なフィードバックを得られることから非常に大切だとのこと。また、電子メールを使ったマーケティングを利用するのをためらうべきではないとのこと。最初の顧客を生み出すためにビジネスオーナーやブロガーとの関係をメールによって築いてきたというZsomborgi氏は、今なおメールを送る作業を続けているそうです。

なお、Zsomborgi氏によると「最初の10人の顧客を得るのに必要な時間と、その後100人にの顧客を得るのに必要な時間は同じくらい」だそうです。

◆03:最高の能力を持つ人を雇う、しかもお金を節約しつつ
ホスティングサービスというKinstaのサービスの性質上、クライアントは世界中におり24時間365日のサポート提供が必要でした。そこでKinstaが採ったのは、世界中のタイムゾーンをカバーするべく世界中から従業員を募ることだったとのこと。

世界中から従業員を探すメリットはタイムゾーンの問題だけではありません。Zsomborgi氏によると、地元で運良く見つかる優秀な人は限られており、世界中から人を探さざるを得ないとのこと。KinstaのようなITサービスにおいては、能力の高い人は時間管理を行って自宅からでも生産的に仕事をできるのが当たり前なので、完全リモートでの作業が可能だったそうです。

また、都市部に大きなオフィススペースを借りなくて済んだおかげで、経費を大幅に削減できたというメリットは非常に大きかったとのこと。さらに、アメリカ西海岸の給与よりもはるかに低い給与で優秀な人を採用できたそうです。

Zsomborgi氏が「まさにこの通り」と述べる、世界中から仲間を探してリモートワークをするメリットを示すツイート。


そして、Zsomborgi氏は「成功したいと考えているなら、自分よりも賢い人を雇うべき」という教訓も付け加えています。

◆04:MVP(実用最小限の製品)の早期市場投入
製品を立ち上げるのに重要なのは、初期の顧客を満足させるのに必要最小限の機能を備えた製品「Minimum Viable Product(MVP)」です。あれもこれもと機能を追加していくと製品をリリースする時期が遅れてしまいます。最小限の状態で素早くリリースして提供することで、顧客を管理する能力が欠けている初期の状態で、貴重な顧客からの素早いフィードバックを得られるのは非常に大きな利点です。

Zsomborgi氏は、完璧主義者はMVPを嫌うかもしれないけれど、MVPは不可欠だと述べています。起業家は「長期的なゲーム」を行っているのであって、早期にサービスを立ち上げフィードバックを得て、マーケティングを学び、修正を加えて問題点を改善し続けることが「勝利」につながるのだとのこと。

◆05:雇用は慎重に、見切りは素早く
会社の中心となるのは「従業員」に他ならないとZsomborgi氏は考えています。特に、資金を持たないスタートアップにとっては従業員こそ資本のすべてと言えるかもしれません。

Kinstaだけでなく他のほとんどの企業で「悪い人材」を得てしまう最大の原因は、「慎重に候補者を選ばなかったから」だとのこと。時間が足りずに素早く人を雇う必要が出てくることは避けられませんが、必然的に間違いを犯す確率は高くなります。

採用した人が企業文化やチーム文化にあっていないとわかった場合は、「できるだけ早く別れを告げなければならない」とZsomborgi氏は述べています。Zsomborgi氏の言う「できるだけ早く」は、うまくいかないことを実感してから数日以内。潤沢なお金がないチームに、合致しない従業員を抱えるべきではないとのこと。その従業員を「改革」するのは意味をなさず、端的に「さようなら」と言うべきだとZsomborgi氏は述べています。

◆06:収益にフォーカスする
ブートストラッピングを成功させるために、収益を生み出す必要があります。苦労して生み出した収益で企業経営する場合、利益を上げ続けることのみ生き続けられる術だからです。

企業経営で成功するための重要なのは「できるだけ経費を抑えること」であり、ビジネスはすべて交渉次第であるということ。Zsomborgi氏によると、スタートアップ時に予算が限られている場合、それをはっきりと伝えてディスカウントを申し出ることを恥じるべきではないとのこと。実際に値引きを申し出れば、驚くほど多くの企業が応じてくれることや、別の代替案を提供してくれることを理解できるはずだとZsomborgi氏は述べています。


利益を上げると、それをどのように配分するのかが問題となります。Kinstaの場合、得られた利益は可能な限り再投資しているそうで、常に新しいメンバーを採用し続け、コンテンツ制作や有料顧客獲得のためのプロモーションにつぎ込んでいます。ベンチャーキャピタルから資金を得ていないため、再投資を容易に行えるのは有利な点の模様。

◆07:「できません」と言わない
ビジネスにおいて、「不可能です」「わかりません」「あきらめます」という用語を辞書から削除すべきだとZsomborgi氏は考えています。Zsomborgi氏によると、たとえ直面している状況が厳しく解決できないとしても、必ず解決策はあるはずだとのこと。困難な状況はいつも訪れるので、それを避けることは不可能で、逃れるべきではないというわけです。


Kinstaのスタートアップ時にKinsta自らコントロールできない不法行為が原因で、オンライン決済サービスのStripeからアカウント停止の処置を採られたたことがあったそうです。Stripeに事情を説明してアカウント停止処置の解除を求めたところ、「アカウントは永久に閉鎖されており、再びアクティブにする方法はない」という素早い回答だったとのこと。

決済サービスを変えることは1日やそこらでできる作業ではなく、Kinstaにとって死活問題でしたがチームはあらゆる手だてを行い解決に乗り出しました。公式ブログにも状況を書き、redditのスタートアップコミュニティで議論が始まると、悪評を恐れたStripeは解決策を提示してきました。Zsomborgi氏によると、「解決法がない」と感じてから48時間以内にKinstaは通常営業に復帰できたそうです。

◆08:「9時-17時スタイル」はあきらめる
「成功するためには、『9時に始業、17時に帰宅』という一般的な働き方は望めない」とZsomborgi氏は断言します。コンピューターの前に1日16時間座ってサポートしたり、年末年始や休日という概念を忘れたりという「狂った時間」を過ごす覚悟が必要だとのこと。

数え切れない数の起業家が「1日に数時間働くだけで新規ビジネスを構築できる」と述べていますが、Zsomborgi氏に言わせればそれは錯覚に過ぎず、信じるべきではないとのこと。「9時に始業、17時に帰宅」という生活はもちろん素晴らしい働き方ですが、ブートストラッピングを狙うならば諦めなければならない道だとZsomborgi氏は述べています。

◆09:すべての時間を捧げる
自分で新規ビジネスを立ち上げ軌道に乗せることは難しく、すべての時間を捧げることが求められるもの。副業として行うことは不可能です。

ConvertKitの創業者のNathan Barry氏が、他の作業のすべてを諦めてConvertKitにすべてを捧げて成功を収めたのをZsomborgi氏は良い例として挙げています。


◆10:コンテンツマーケティングに取り組む
よほど幸運でもない限りスタートアップにはマーケティング予算はありません。仮にあったとしても予算は非常に限られているはずです。PPCキャンペーンをしたり、Facebook広告に取り組んだり有名ブログのバナーを購入したりする予算はないものです。しかし、これは自分の製品やサービス、能力を広めることができないことを意味しないとZsomborgi氏は述べています。

Zsomborgi氏が勧めるのは「コンテンツマーケティング」。創業初日に他の選択肢がなかったKinstaは、ブログに真剣に取り組みました。以下グラフはKinstaブログへのトラフィックのGoogleアナリティクスのスクリーンショット。トラフィックの増加ペースが上がるのにかなりの時間がかかっています。


コンテンツの評判を構築するのに時間はかかるものだとZsomborgi氏は語ります。その上で、「あまりにも一般的で、分量が少なく、低品質で、独自の価値を提供しない」毎日200万件も投稿されるブログポストではなく、多くの時間を費やしてテーマについて研究し、読者にとって本当の価値を提供するものだけを投稿し続けるべきだと考えています。実際に、Kinstaでは月に2つの投稿を公開するだけで、13カ月でオーガニックトラフィックは571%アップしたそうです。

◆11:大事なことに焦点を当てる
「これは明日やろう」と先延ばしにすることは多いものですが、これが実現しない例が多いことは誰もが経験済みです。利益率を高める作業は、長い時間が必要で恐ろしいほど退屈なことがよくあるものですが、それをできるだけ早く完了させることがなすべき仕事だとZsomborgi氏は述べています。有名な「20-80のルール」を理解するのが重要だとのこと。

なお、有名な「A/Bテスト」について、スタートアップ時にはサンプル数が少なすぎてあてにならないことが多いので、A/Bテストにのめり込むべきではないとZsomborgi氏は指摘しています。

◆12:弱さは最大の武器になり得る
規模の小さいスタートアップは、リソースが不足しがちで顧客基盤も脆弱なため、たいていの場合、巨大な競合他社に飲み込まれてしまいます。しかし、小さいがゆえに巨大企業が持たない武器も持つものだとZsomborgi氏は考えています。

通常、求められている機能を追加したり、UIを変更したり、多くの顧客に影響を与えるアドオンを実装したりというアップデートには、数カ月の期間が必要になります。しかし、大規模なインフラに縛られていないスタートアップは「迅速な変更」が可能です。

KinstaではPHP 7のリリースから数日以内にPHP 7へのアップグレードを顧客に提供できたとのこと。当時、業界のニュースは「PHP 7へのアップグレードのメリット」を示すものばかりだった中で、競合他社が1年かけて対応したアップグレード作業を、ただちに導入したできたのは弱小企業ゆえの強みだったそうです。


◆13:コミュニティに参加し、ネットワークを作る
どんな分野においても、必要な専門家、インフルエンサー、ブロガーはいるものです。その人たちがいるコミュニティに参加し、可能な限り友人を作る必要があるとZsomborgi氏は考えています。

残念なことに、人間はできる限り「他人を助けない」ものだとのこと。誰もがやるべきことがあり、時間に追われるので仕方がありません。しかし、それゆえに他人を助けて関係を構築するのは重要だとのこと。自分の持つ知識や専門性を共有し、身近なことを快適にするトピックを提供し、可能ならリソースやデータをも提供し、他のコンテンツをSNSで共有し、ニュースレターに取り組めば、「小さな善行」は10倍になってかえってくるとZsomborgi氏は述べています。

ワイン事業で成功を収めたGary Vaynerchuk氏は、「引退した」今なお、ネットワーク構築にいそしんでいるとのこと。すでに成功した世界的なセレブに、ネットワーク作りでブートストラッパーが遅れをとってはいけません。


◆14:自動化、自動化、そして自動化
ビジネスを次のレベルに押し上げるのに大切なものは、サービスへの要求が高まる顧客への「サポート」です。顧客の要求にどれだけ応えられるかが、企業の成長を左右します。ここにリソースを投入するために、人間の作業負担を減らせられる自動化ツールは、徹底的に活用し尽くすべきだとのこと。Kinstaは2017年だけでも少なくとも42個のタスクを自動化しており、自動化できるものは何でも自動化しているそうです。

ユーザーはお金を支払ってサービスを利用するときに、「真の人間とのやりとり」を好むものです。つまり、顧客とふれあう部分については決して自動化すべきでないとのこと。コードベースまたはプログラム可能なソリューションで対応できる部分は自動化して、サポートに注力するのが大切です。

◆15:「輝かしい見出し」に惑わされない
TechcrunchやVentureBeatなどのニュースに踊る「○○は何百人のユーザーを獲得した」「□□は何百億円を調達した」などの輝かしい成功例ばかりを目にしていると、あたかも成功ストーリーはたやすく現実的に感じてしまうかもしれませんが、現実はそうではありません。

誰もが読むのが大好きで共有したがる成功事例のほとんどが「結果」にフォーカスしていることを忘れるべきではありません。その成功の背後にある語られない努力を忘れてはいけません。メディアはしばしば「一方的」であり、成功への道は一本道ではないことを忘れてはいけないとZsomborgi氏は述べています。

左から「起こると思っていること」「実際に起こること」「起業家の1日の波」


◆16:趣味を作る
ブートストラッピングを目指してビジネスに打ち込み始めるときには、情熱を持って24時間365日仕事のことを考えているものです。しかし、その状態を長く続けることは難しく、いつかは「燃え尽きてしまう」ものだとのこと。そこで、脳をリフレッシュさせ充電し、鋭い洞察を与え、最高のアイデアが得られるようにするために、別の環境を整えることが大切だとZsomborgi氏は考えています。

仮に、何か趣味があるのならば素晴らしいことで、大切にするべき。もし趣味がないなら、何でも良いのでさがすべきだとのこと。ビジネスから切り離された精神的な休暇によって、生産性や集中力、創造性が高まるとZsomborgi氏は述べています。

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