ボイジャー号とともに宇宙に打ち出された「ゴールデンレコード」を宇宙人がどのように解読するのかを解説
地球外知的生命体に向けて人類の文明の記録を伝えるという壮大な目的のために作り出された「ゴールデンレコード」は、ボイジャー号とともに宇宙へと飛び出し、今なお宇宙空間を進み続けています。ゴールデンレコードに記録された音声や画像を、地球外生命体に解読してもらうために当時の技術者がディスクラベルに描き込んだ暗号解読のヒントをThe Vergeが解説しています。
We decoded NASA’s messages to aliens by hand - YouTube
1977年にNASAはボイジャー1号、2号のために「ゴールデンレコード」を製作しました。地球外知的生命体に到達することを想定して、地球の情報や知的生命体の活動記録を金メッキされた銅製のディスクに収めたというわけです。
ゴールデンレコードはボイジャー号の機体に取り付けられて宇宙へと打ち出され、今なお地球から最も離れた宇宙空間を移動していると考えられます。
ゴールデンレコードに記録されたのは地球で生まれた音楽・画像の情報。
ボイジャー号同士は2030年まで交信し合いますが、地球への通信手段はなし。両機に搭載されたゴールデンレコードが地球外知的生命体に発見されることを願って、ボイジャー号は時速6万キロメートルという高速で宇宙空間を突き進んでいます。
「ゴールデンレコードに記録されている情報は、こんな感じです」という説明とともに、電子音が流されました。音楽だけでなく、画像イメージも音として記録されているとのこと。
本物のゴールデンレコードもこのような銅製の薄い円盤に金メッキがされていました。
ディスクの表面には、ディスクの中の情報に関するさまざまな「記号」が描かれています。
一目見ただけでは何かわからないシンボルマークは、地球外知的生命体が中の情報を理解する手助けとなる「ヒント」となっています。
ゴールデンレコードのデザインディレクターを務めたジョン・ロンバーグ氏。
ロンバーグ氏は、ゴールデンレコードのヒントに求められる要素は「できる限り簡単に理解でき」「できる限り明快であること」だったと話します。
ディスクに描かれたこの記号は、地球の宇宙空間での位置を示すもの。この記号だけはディスクの中身を解読するものではないそうです。
これ以外の他の情報は、すべて記録されたオーディオ情報を解読するためにあります。
収録された音楽データはストレートな情報ですが、円盤の回転速度などの情報がなければ正しく再生することはできません。
地球人であれば再生できる電子音も宇宙人には不可能。そこで、円盤を回転させる条件を表現する必要があります。
画像データはJPEGなどのデジタルフォーマットで記録されていると考えるかもしれません。
しかし、ボイジャー号のコンピューターシステムでさえ69KB(キロバイト)というとてつもなく小さな情報量だったそうです。
「1977年当時、写真をアナログディスクに記録するような技術はありませんでした」
そこでNASAは情報を「オーディオウェーブ(音声波)」として記録することにしました。地球外知的生命体にこのオーディオデータを画像などの別の情報に解読してもらえるようにすることが要求されたというわけです。
ディスクの端に描かれた二つの円は、「水素」原子を意味するとのこと。宇宙空間に充満する最も基本的な元素を記載しています。
「ブルームーンは、水素分子のスピン方向が変化するから起こります」と説明するコロンビア大学のジャクリーン・バン・グロコム教授。水素は宇宙とは切っても切り離せない重要な元素で、それは地球人だけでなく宇宙人にとっても共通の大前提というわけです。
その宇宙空間を代表とする水素原子から放射されるスペクトル線の波長は21センチメートル。
つまり、周波数1420MHzの電波です。そして、1420MHzは約0.7ナノ秒。この「0.7ナノ秒」という数字は、ゴールデンレコードに描かれた数々の記号の解読に関わる重要な数です。
例えば、ゴールデンレコードの別の場所に描かれた記号は2進数で描かれています。
この数値に0.7ナノをかけると「3229秒」(約54分)となり、ゴールデンレコードを再生した時の時間と一致します。
ゴールデンレコードを描いた記号の円周にかかれた2進数に0.7ナノ秒をかけると「3.59秒」となり、記録が1周回転するのにかかる時間を表しているとのこと。
この回転速度でゴールデンレコードを回転させると、55カ国の言語で録音された地球人のあいさつが再生される仕組みです。
音楽の場所に針を合わせると、音楽がそのまま再生されます。他の場所では海や鳥、雷、クジラの鳴き声など地球上の様々な音が再生されます。
ディスクを裏返すと……
裏面から出てくるのはノイズのような電子音。これらは画像イメージだとのこと。
ディスク表面に描かれた、以下のシンボルが音波から画像を作り出すヒント。
やはり「0.7ナノ秒」をかけることで「0.008秒」ごとにセクションが分かれていることが示されています。
そしてそれぞれのセクションは512本の走査線にあたり、並べることで画像イメージが現れるとのこと。これらは当時のテレビ放送で取り入れられていた手法だそうです。
走査線の仕組みは理解できないものの、とりあえず音声を画像に変換してみることに。
フリーソフトの「Audacity」を使って、データを0.008秒ごとにそれぞれの音波のピークを切り取ります。
得られたデータはCSVファイルとして出力。
この作業を512回繰り返して合計12時間かけて出力したデータは……
こんな「円」になりました。
ここで重要なのは「円」ではありません。「音声をシンプルな円というイメージに変換できる」という事実が重要なポイントです。
シンプルな形状ながらも音声を画像(円)に変換できれば、他のデータも画像化できるのではと地球外知的生命体が気づくはずだとのこと。こうして残りの114枚の画像イメージを解読するように促しているというわけです。
音声の画像イメージ化をソフトウェア開発者に手伝ってもらうことにします。
音声から画像データを取り出すことに成功。
円だけでなく……
以下のような写真データが音声としてゴールデンレコードに埋め込まれていました。
40年後のまったく新しい技術を使っても、音声から画像イメージを作り出せるという点が重要だとのこと。
「たとえ宇宙がどうなろうとも、地球がどのような終わり方を迎えるとしても、ゴールデンレコードは人類の文明の高い水準を表現すると私は考えています」
「私たちが描いた夢はとてつもなく大きなものでしたが、これからも人類が夢を見続けるためのひらめきをゴールデンレコードが与えることを願っています」
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