メモ

Uberのドライバーは「アルゴリズムの上司」をどのように感じているのか?


アメリカ・カナダの25都市で配車サービス「Uber」を利用するドライバーの労働状況を4年間にわたって記録して、労働者と消費者の両方を「操作」するテクノロジー企業のアルゴリズムがもたらす複雑性をあぶりだした「Uberland: How Algorithms Are Rewriting the Rules of Work」を記したアレックス・ローゼンブラット氏が、Uberドライバーと、その「上司」であるアルゴリズムとの関係性についてニュースサイト・Slateの電話インタビューに答えています。

Uber drivers have a boss: the algorithm.
https://slate.com/news-and-politics/2018/10/uber-lyft-uberland-algorithms.html

ローゼンブラット氏はUberlandを執筆するためUberドライバーへの聞き取り調査を行うにあたって、ドライバーと乗客を結びつけるUberも、シリコンバレーのテクノロジー企業である点ではGoogleやFacebookなどと変わることがないことから、「予想外の結果が生まれたときに、シリコンバレーの文化が仕事の在り方にどのような影響を与えるのか?」という点に関心があったとのこと。


ローゼンブラット氏は調査の結果、Uberは「ドライバーは独立した請負業者として取り扱う」と述べているものの、実際にはドライバーは「上司」によって管理されている存在であることを把握。この上司とはUberが採用している「アルゴリズム」であり、ソフトウェア内にエンコードされたルールがUberドライバーの上司として、仕事のやり方やルールを制定していると述べています。

非常に興味深いことに、Uberドライバーはときに叫び声を上げて叱責する破壊的な人間の上司よりも、自分にあれこれ指示を与える顔の見えないアルゴリズムの上司を好む傾向にあることがわかったとのこと。とはいえ、ブレーキのタイミングなどの細かな点にも介入する点では、人間の上司よりも過酷な指令が与えられることもあります。

by Jason Tester Guerrilla Futures

ローゼンブラット氏が調査の中で面白いと感じたのは、Uberが仕事と消費との境界線を曖昧にぼかしている点だとのこと。ドライバーが受け取る報酬の分配をめぐって、Uberは多くのドライバーとの間に訴訟を抱えていますが、Uberの弁護士は「ドライバーは乗客と同じように、Uberの技術を利用する『消費者』でもある」という主張をすることがあるそうで、Uberは状況によってはドライバーをソフトウェアのエンドユーザーとして位置付けるそうです。しかし、請負業者というビジネスパートナーではなくサービスの消費者として位置付けるのであれば、労働法ではなく消費者保護法によるより広範囲な保護をドライバーが受けられる可能性をローゼンブラット氏は指摘しています。

ローゼンブラット氏によると、ドライバーはUberを利用することで様々な感情的な経験をするとのこと。最初は、新しいものを試してより多くのお金を手に入れられるという期待から興奮気味にあるドライバーは、「新しい仕事」を体感するものです。しかし、ドライバーはUberで仕事をするために知っておく必要がある情報をすべて理解しているわけではありません。そのため、例えば「乗客が不当な評価をした」と感じるなど、欲求不満が高まる可能性があるそうです。

また、Uberがドライバーに対して実際以上に高い収入を得られると誤解させるような募集をしたとして、2000万ドル(約22億円)の罰金をFederal Trade Commissionに求められて訴訟が提起されているように、予想通りの高収入を得られないと感じるドライバーが確実にいるとのこと。そのため、取材をしたドライバーが感じる状況は、「欲求不満と挫折感の組み合わせ」だとローゼンブラット氏は表現しています。

by johnwatsonphotography

ドライバーが管理されるシステムの問題点について、ローゼンブラット氏は「信頼と公平性の問題」を指摘します。乗客とのトラブルなどが発生した時に、ドライバーはメールによるサポートを受けられますが、フィリピンにあるサービスセンターからは機械的なテンプレートメールしか受け取れないことも少なくないそうで、ドライバーが困難な問題に直面した時に、公平に扱われているという確信を抱けない点に問題があるとローゼンブラット氏は感じています。

また、ドライバーはUberだけでなくライバルのLyftを利用した結果、LyftよりもUberを選ぶ傾向にあることも興味深い点です。ドライバーは「反応性が高いから」ということをUberを選ぶ理由に挙げるのだとのこと。それに加えて、ローゼンブラット氏はUberのメッセージの優秀さを理由に挙げています。

Uberは運賃を下げる条件変更を行うときに、「より安い運賃は、より高収入と同義」「ドライバーへの支払は減りますが、稼ぎは増えます。なぜなら、より多くの乗客があなたを利用するから」と伝えます。対するLyftは「申し訳ありません。競合他社(Uber)の運賃改定により、運賃を下げぜるを得ません」という表現を使うとのこと。同じ内容を伝える別の表現ですが、両社の企業文化をよく反映しています。

by Stock Catalog

UberやLyftのサービスを擁護する人は「自由な時間と柔軟性」を利点として挙げています。これについて意見を求められたローゼンブラット氏は、フレキシブルなスケジュールは労働者にとって大きな意味があり、実際にドライバーはその点には高い評価を与えているとしつつも、はたして「自由」だろうかと疑問を呈しています。

ドライバーを「起業家」に位置づけるレトリックを用いるUberですが、Uberはドライバーの報酬を一方的にコントロールでき、ドライバーは割り引きを提示するという形での交渉権しか持ちません。ドライバーは決して顧客リストを得ることはできず、ビジネスを構築できないという事実に、自由があるのかは疑問だとローゼンブラット氏は考えているようです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「Uberドライバーは儲かる」と感じるのは自家用車の維持コストを考慮していないからに過ぎない - GIGAZINE

Uberの新アプリはドライバーに稼げるエリアを指南する - GIGAZINE

Uberはよく利用する得意客であるほど多く料金を請求するケースがあることが判明 - GIGAZINE

Uberのアカウント削除を促す「#DeleteUber」がトレンドになった理由とは? - GIGAZINE

Uberが「ユーザーの乗車時間を後ろ倒しする代わりに料金を下げる」システムをテスト中 - GIGAZINE

Uberがライバルを妨害するための社内マニュアル - GIGAZINE

住民の足を提供するUberとLyftが撤退した後、街にはどんな変化が訪れたのか? - GIGAZINE

in メモ,   ソフトウェア,   乗り物, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.