住民の足を提供するUberとLyftが撤退した後、街にはどんな変化が訪れたのか?

By Rustan Mateo
アメリカではUberやLyftなどのカーシェアライド(乗り合い)サービスが活発に利用されており、「従来のタクシーよりも利用しやすい」と評判を呼んでいます。そんな中、2016年5月初頭にアメリカのテキサス州オースチンで行われた住民投票の結果では、市内で営業するUberとLyftのドライバーには指紋による犯罪歴検査を実施することが必要な状況となりました。この決定に対して両社は同市内でのサービス提供を停止するという事態になったのですが、その後のオースチン市内では予想外とも言える状況が起こっています。
What happened to Austin, Texas, when Uber and Lyft left town - Business Insider
http://www.businessinsider.com/what-happened-to-austin-texas-when-uber-and-lyft-left-town-2016-6
2016年5月に行われた住民投票において、オースチン市民の過半数(56%)はUber及びLyftのドライバーに指紋による犯罪歴検査を義務づけ、使用する車両にひと目見て分かるロゴを表示し、さらに乗客の乗降が可能な場所を明確に定めることを支持する判断を下しました。この判断に対してUberとLyftの両社は、独自に行っている身元調査は十分に厳格であるとして反対の姿勢を示し、同市内でのサービス提供を一時的に停止するという事態になっています。
アメリカ国内で広まりつつあるというシェアライドサービスに対して厳しい判断が下されたのには理由が存在しています。手軽に利用できることで人気を集めている同サービスですが、ドライバーによる暴行事件などが発生します。その理由の一つが、ドライバーはUberなどの従業員ではなく、あくまで「業務請負人」という立場であり、身辺の審査が適切に行われていない点にあるという見方が広まっています。
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このような背景の中で下されたオースチンでの判断ですが、その後の市内では思いもよらない変化が起こっているといいます。その1つが、Facebook上に誕生したグループ「Arcade City Austin / Request a Ride」です。このグループはUberとLyftの一時撤退が発表された直後から広まりを見せるようになり、記事作成時点では3万4000人ものメンバーが参加しており、いわば自己発生的にシェアライドのサービスが生まれるという状況となっています。
Arcade City Austin / Request A Ride

このグループにはシェアライドを利用する人と提供する人の両方が参加しており、Facebookのコメントに出発地と目的地をリクエストするとそれにドライバーが応えるという仕組みになっているとのこと。グループには以下の4つのシンプルなルールが設定されています。
・グループに利用したいリクエストを投稿する
・ドライバーが見つかったら投稿を削除する
・UberおよびLyftでのプロフィールを見せるようドライバーに要求してもよい
・お互いに「クール」であること
グループの紹介ページでは、このサービスを「利用者がドライバーに直接つながることができるオープンなマーケットプレイス」と表現しています。現在は専用のアプリを使ったベータテストが実施されていますが、利用者の多くはFacebook上でサービスを利用しているとのこと。このサービスにおいては、UberやLyftのような繁忙期における値上げや企業による売上の吸い上げが存在せず、一方で既にLyftが導入しており、Uberも提供を開始したばかりの「予約制度」にも対応済みです。
また、ドライバーへの支払額や方法を定めるフォーマットがないというのも特長とのこと。ドライバーは事前に欲しい額を設定することもでき、逆に利用者が適切と考える金額を提示しておくことができるようになっています。

By 5chw4r7z
まさに、ドライバーと利用者を直接つなぐ「ピア・ツー・ピア」型のシェアライドサービスなわけですが、そこで生まれているのが「人の助けになる」という感覚とのこと。元Lyftのドライバーだったソロモン・ハプシャイアーさんは、このグループを通して目の不自由な人にシェアライドを提供しているとのこと。受け取る利用料についてハプシャイアーさんは「多めにお金を受け取れる時もあれば、払える範囲のなかで支払ってくれる人もいます。しかし、金額は大きな問題ではありません。私は彼らの力になっているわけですから」と語っています。
オースチン市内ではUberやLyft以外のシェアライドサービスが展開を開始する状況となっていますが、それとは別に1台の自動車を複数の人でシェアする「カーシェアリングサービス」にとってもサービス拡大の様相を呈しているそうです。サービス大手の「Zipcar」は、市内の学生を対象に加入料の割引サービスや、自動車の利用料そのものをグッとリーズナブルにすることで、利用者の拡大を図る戦略を開始しています。

By Timothy Vollmer
このように、オースチンではUberとLyftの離脱劇が起こっているわけですが、実は同市はデンバーやピッツバーグ、サンフランシスコなど全米7つの都市と並んで、合衆国政府から5000万ドル(約53億円)の予算を受ける「スマートシティチャレンジ」の最終候補に選ばれていました。その計画では、まさにUberやLyftなどのサービスを活用することで新しい都市の交通の在り方を模索することが狙われていたのですが、住民投票を始めとするさまざまな経緯で両社は離脱に至っています。
しかし、両社が離脱してしまったオースチンでは、住民による取り組みや別のサービスの参入による新たな流れが起きつつあります。どうやらオースチンは、UberやLyftなしでもうまくやっていく方法を見つけつつあるようです。
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in メモ, ネットサービス, 乗り物, Posted by darkhorse_log
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