コラム

中国のスマホメーカー・OPPOが台湾でXperiaの顔だった中華圏の大スター・周杰倫を起用した広告戦略を思い出した


台湾の大スターは中国でも大スターであり、だからこそ、引き抜きに近いことが行われていて困惑しました。世界的なスマホメーカーとなった「OPPO」の勢いを実感すると同時に、結果的にソニー敗北のようにも見えて、残念この上ありません。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。2018年に日本上陸を果たした中国のスマホメーカー・OPPOのフラッグシップ端末「OPPO Find X」が日本国内でも販売されることになったというニュースを聞き、過去の広告のことを思い出しました。

◆OPPOについて
「OPPO(オッポ)」というスマホメーカーを初めて目にしたのは、ボルネオ島にあるマレーシアの都市・ミリのショッピングモールでした。緑を基調としたスタイリッシュなデザインの店舗は、私がこれまで見てきた中国企業のものとは一線を画すものでした。ショッピングモールの通路で、OPPOの販売員がパッチリお目々のマスコットキャラと一緒にプロモーションのダンスを踊っていました。

【OPPO】 Promotion in the dance by Chinese smartphone company In Malaysia - YouTube


このダンスが印象的でOPPOというスマホブランドがしっかりと脳内に刻まれます。インターネットで調べると「歩歩高(ブーブーガオ)」グループ企業とあります。日本に昔あったキッズコンピュータ・ピコのような電子知育玩具を販売していた企業でした。中国の本屋で見かけた記憶がありました。

台湾を旅したときもOPPOのマスコットキャラに遭遇。このキャラには「小欧」という名前があります。


中国でも「小欧」を発見。


Huawai(華為)、Xiaomi(小米)、ZTE(中兴)、スマホに限らず家電ならHaier(海尔)、Hisense(海信)、GREE(格力)といった感じで中国企業は英語と中国語の2つの表記が一般的。同じようにOPPOにも欧珀という中国語があるのですが、不思議なことに漢字表記はほとんど見かけることはありません。マレーシアでも中国でも店舗入口はOPPOのみ。意図的に漢字を排除する戦略が、洗練されたブランドイメージに繋がっているようでした。

2018年に入り、OPPOは日本市場にも進出を果たしています。

世界4位のスマホメーカー「OPPO」 日本攻略の道筋 - 日経トレンディネット
https://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/032801635/

スマホ世界4位の中国オッポが日本に上陸、アップルの牙城崩せるか - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-01-26/P302UY6TTDS001

中国スマホ大手のオッポ「日本市場でも主要メーカーに」「若者の心つかむ」 - SankeiBiz(サンケイビズ)
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180322/bsj1803221736005-n1.htm

◆中国OPPOが周杰倫を起用する
OPPOは日本人には馴染みの薄いスマホメーカーですが、世界販売シェアだとSamsungとAppleの2トップ、その後ろにつけるHuaweiに続き、4番手をうかがう位置にいます。中国の国内シェアでもHuawei、Vivoとトップを争うメーカーとなっています。Vivoも歩歩高が母体のグループ企業です。

2017年6月、OPPOは中国でR11というフラグシップ機を発売し、広告キャラクターに台湾出身の歌手・周杰倫(Zhōu Jiélún)を起用しました。簡体字表記だと「周杰伦」で、英語名はJay Chou(ジェイ・チョウ)。杰を傑の簡体字とみなして「周傑倫」と表記する例も見かけますが、繁体字の台湾でも周杰倫という表記なので、これは別字と考えるのが妥当でしょう。


周杰倫は中華圏で絶大な人気を誇る大スターです。自ら作詞作曲もこなす彼の歌は、C-POP(中華ポップ)を聞き始めたら誰もが一度は耳にするもの。軽快でリズミカルなアップテンポの曲からしっとりと歌いああげるスローテンポのミディアムバラードまで、彼が生み出す音楽の世界は底知れません。

2017年12月、OPPOは「周杰伦的2000W个故事」という、周杰倫出演のショートフィルムを公開しました。とてもよくできていて、一見の価値ありです。

周杰伦的2000W个故事
http://hd.oppo.com/2017/jay/index.html


「W」は何のことかと考えてみると、どうやら「万(wàn)」の頭文字のようでした。「个」は個の簡体字。「故事」はジャッキー・チェン主演の映画「ポリス・ストーリー/香港国際警察」の現代が「警察故事」であることからもわかるように「ストーリー」という意味。これらを合わせると、ショートフィルムの名前は「2000万個のストーリー」という意味で、中に登場する老夫婦の思い出の数とR11、および新モデルR11sの目玉であるフロントカメラ、メインカメラの2000万画素をかけた言葉のようでした。

感動したのでストーリーを説明します。ネタバレ注意です。

「世界には2種類のピアノがある。私が所有するピアノとそれ以外だ」と語る周杰倫、彼のピアノには聞いた人の思い出を蘇らせる効果がありました。2070年冬のある日、そうした噂を聞きつけた1組の老夫婦が彼のもとを訪れます。ソファに腰掛けた2人。周杰倫がピアノを弾き始めると2人のこれまでの思い出が映し出されます。出会いのきっかけ、お付き合い、遠距離、ケンカ、そしてプロポーズ。夫婦となって子どもを授かった2人はダンスのステップのように1、2、3と場面が切り替わって年老います。老婦人となった「小笑(Xiǎoxiào)」は認知症になっていました。老紳士となった夫の「小宇(Xiǎoyǔ)」のことも分かりません。だから小宇は小笑を周杰倫のもとに連れてきました。そこで小笑はすべてを思い出します。小笑の記憶はどこかで止まっていたようでした。涙ながら小宇に「あなた少し年取ったんじゃない」と声をかけます。それにも関わらず小宇は「君は何にも変わりはしない」と優しい返答。「結婚60年、ダイヤモンド婚おめでとう」と2人はこれまでの時間を祝福します。そんな幸せも一瞬でした。周杰倫のピアノが終わると小笑はもとに戻ります。「ここはどこなの、小宇は?」と子どものように尋ねる小笑に「小宇は家で君を待っている」と返す小宇。どこまでも優しい小宇に涙が止まらなくなりました。

◆台湾ソニーも周杰倫を起用していた
このようにOPPOの広告キャラクターを務める周杰倫ですが、実は、台湾ではソニーモバイルの端末であるXperia(エクスペリア)の広告キャラクターを務めていました。

我最喜歡 4K HDR極致畫質 - YouTube


我最喜歡 閃耀鏡面設計 - YouTube


起用されたのは2015年10月、Xperia Z5シリーズ発売のタイミングで、そのまま台湾における「Xperiaの顔」になっていました。


ところが周杰倫はOPPOでも同様の活動を始めます。このタイミングがかなり際どいものでした。

2017年5月17日、周杰倫が台湾でXperia XZ Premiumの記者会に出席。

周杰倫 5/17 SONY Xperia XZ 旗艦機記者會 - YouTube


2017年5月19日~5月30日まで百貨店前の広場で周杰倫を使ったXperia XZ Premium販促イベントを実施。


その直後の2017年6月2日、OPPOの公式微博(ウェイボー)が周杰倫を広告キャラクターに起用することを発表。


OPPOによる引き抜きともいえる行為は、台湾のメディアで話題になりました。

Sony Mobile代言人周杰倫將為OPPO R11發表站台- SOGI手機王
https://www.sogi.com.tw/articles/oppo_r11/6249337

周董棄 Sony 加入站台!OPPO 新機「R11s」長這樣 | 自由電子報 3C科技
http://3c.ltn.com.tw/news/31773

OPPO R11 台灣區代言人不是周杰倫是她!台中戶外廣告曝光 | ETtoday3C | ETtoday新聞雲
https://www.ettoday.net/news/20170609/941418.htm

さすがに諸事情あったのか、OPPOは台湾での展開では周杰倫の起用はせず、周杰倫と同じように中華圏で人気のある音楽ユニット「S.H.E」の田馥甄(Hebe)を起用。

私が確認した限りでは、周杰倫の台湾ソニーでの活動はXperia XZ Premiumが最後で、2018年7月に発売されたXperia XZ2のときには記者発表会にも広告にも姿を見せていないので、契約が終了になったのかもしれません。

かつて台湾を旅したとき、周杰倫が起用されたXperiaの広告を見たことがありました。日本メーカーが総崩れとなっていたスマホ事業で孤軍奮闘しているその光景に感激しました。だからこそ競合他社であるOPPOによる周杰倫の起用は私には衝撃的で、すでに1年以上が経過している話題ですが、こうして記事にすることにしました。

ちなみに、OPPOの最新フラッグシップ機・「Find X」の国内販売が決定しました。レビュー記事は以下です。

ノッチすらない真のベゼルレスのためにカメラユニットが飛び出す変態スマホ「OPPO Find X」レビュー、スマホ技術の最先端を体感してみた - GIGAZINE


(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
Facebookページ https://www.facebook.com/chariderman/
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)

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in モバイル,   ハードウェア,   動画,   コラム, Posted by logc_nt

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