どうしても集中が途切れがちなデジタル社会において集中力を高める方法とは?
by Burst
現代では日常生活の中に多くのデジタルデバイスが浸透しており、日常生活を便利なものにしています。その一方でスマートフォンに通知が来るたびにSNSを確認したり、少し前にも見たはずなのについブックマークしているサイトを見てしまったりと、人間はデバイスによって集中し続けることが難しくなっているのも事実。そんなデジタル社会において途切れがちな集中力を持続させる方法について、The Guardianがまとめています。
The lost art of concentration: being distracted in a digital world | Life and style | The Guardian
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2018/oct/14/the-lost-art-of-concentration-being-distracted-in-a-digital-world
現代人はたとえ仕事や他の集中しなければならない作業中であっても、非常に多くの中断を余儀なくされています。集中が中断されてしまうことは生産性を大きく低下させるもので、2005年にキングス・カレッジ・ロンドン精神医学研究所が行った研究によると、仕事中の電話や電子メールへの応対によって仕事中のIQが10も下がっていることが報告されています。これは喫煙やマリファナによる悪影響よりも深刻であり、継続的な作業中断は睡眠不足に匹敵する大きな生産性低下をもたらすとのこと。
また、2018年にイギリスの電気通信・放送の監督期間であるOfcomが行った(PDFファイル)研究によると、人々は起きている時に平均して12分に1回の割合でスマートフォンをチェックしているそうです。さらに、71%の人々はスマートフォンの電源を切ることが起きている間に一度もなく、40%は起床後5分以内にスマートフォンをチェックしていると回答しました。
人間はあらゆる場所において常にデジタルデバイスに注意を払う警戒状態に置かれている一方、何かにじっくりと集中するという機会が大きく減少しています。短い時間であればデジタルデバイスへ注意し続けることに問題はありませんが、それが継続的な状態になると、ストレスに反応して分泌されるホルモンのアドレナリンとコルチゾールの分泌量が増大してしまいます。
by bruce mars
忙しい現代人は常に多くのデバイスやタスクを抱え込んでおり、「その気になればマルチタスキングは可能」と思いがちですが、実際に人間がマルチタスキングをこなすことは困難だそうです。マルチタスクをこなしているように見える状態は、実は多くのタスクを瞬時に切り替えて行っているに過ぎません。
マルチタスキングは100%の集中力を小分けにして分配している状態であり、それぞれのタスクを遂行する能力は本来人間が引き出せる全開には達しないとのこと。アドレナリンとコルチゾールは忙しい活動の間で多く分泌されますが、継続的にコルチゾールが分泌されると幸せを感じたり精神を落ち着かせたりするホルモンのセロトニンとドーパミンが阻害され、精神に悪影響を与えてしまいます。
人間の脳はマルチタスクに向いていない - GIGAZINE
デジタル社会が個人の集中力に与える多くのデメリットがささやかれていますが、逆に考えると集中力が途切れがちな現代において集中力を取り戻してストレスを減らし、体内のホルモンを適切な量に保つことは大きなメリットがあります。心理学系のウェブサイト「PsyBlog」を運営する心理学者のジェレミー・ディーン氏が「新たな習慣を身につけるためには3週間ほどかかる」と述べるように、デジタルデバイスによる集中力阻害を防ぐ生活を作るためにも、いくつかの段階を踏んでゆっくりと適応していく必要があります。
集中力を取り戻す習慣形成に大事なことは、「人間はすぐにある行動から別の行動に移り、集中し始めることができない」と理解することだそうです。多くの人が枕に頭をのせてからすぐに眠ることができないのと同様、あるタスクに取りかかってもしっかりと集中し始めるにはある程度の時間が必要なため、一度集中モードに入った後に気を紛らわせる要因を徹底的に取り除くことが重要とのこと。The Guardianは、「集中力を取り戻すために有効な方法」をいくつか紹介しています。
by Alexander Dummer
◆1:「さらに5以上」のルール
じっくり集中するとはどういうことかを思い出すために有効かつ簡単な方法が、「ある物事をやめようと思った時に、さらに『5』以上続ける」というもの。例えば「あと5分勉強を続ける」「あと5回のエクササイズをする」「あと5ページ読む」という風に、何かをやめようと考えた後で余分に「5」以上の単位で集中を持続させることが、集中力増加に有効だそうです。
by Min An
◆2:瞑想と集中
人間はそう簡単に中断状態から集中状態へと移行することはできません。そこで、瞑想をして平穏な状態を持続させることが、集中力を回復したり高めたりする点で役に立つとのこと。瞑想といっても難しいものではなく、まずは深い呼吸を意識することからスタートすればOK。普段の生活において、人間は浅く貧弱な呼吸をしてしまいがちですが、浅い呼吸は1回の酸素吸収量も少なく不必要なエネルギーを消費するだけだそうです。
簡単な瞑想の基礎を実践するには床かイスに姿勢よく座り、足を組まないであごを引いて前を見るようにし、肩を落として力を抜いて両手のひらを上に向けて休めます。鼻から長く息を吸って腹部が膨らむのを意識しながらゆっくり5秒数え、その後息を止めて再び5秒数えます。そして5秒かけて息を吐き出すということを繰り返しながら、頭の中で物事を考えないようにするか、それが難しい場合はプールの中にゆっくりと沈んでいく小石のイメージを脳内に思い浮かべるといいとのこと。この呼吸を10回ほど繰り返すことで、ストレスをほぐしたい時のリラックスや簡単な瞑想になるとのこと。
さらに集中力を増したい場合には、「1000から7ずつ数を引いていき、その数を頭に思い浮かべていく」という作業や、「さまざまな英単語のつづりを逆に並べてみる」など、単純な作業を脳内で繰り返し行うことも効果的。また、壁に向かって座った状態で、壁の目線と同じ高さの場所に描かれた2インチ(約5cm)ほどの黒い点をじっと見つめることも、集中力を高めることに役立ちます。
by Pixabay
◆3:アナログ時計をじっと見つめる
もしもアナログの腕時計を付けていたり机の上にアナログ時計が置いてある場合は、「アナログ時計の秒針をじっと見つめ続ける」というトレーニング方法でも、集中力を高められるとのこと。秒針が12を指した時からじっと秒針が1周するのを集中して見つめ続け、もう一度12の場所に戻ってくる前に妙な雑念が思い浮かんでしまった場合は、再び秒針が12を指した時点からスタートすればOK。
この方法は、人間が日常生活で非常に多くのものを見ているにもかかわらず特に注意を払っていないのに対し、自分が見ているものに対して集中して意識を傾けることに役立つそうです。慣れてくれば時計の秒針だけでなく、バスの車窓から見える景色やアートギャラリーの絵画などを集中して見ることも、同様の効果がある模様。また、普段は聞き流しがちな音楽を1曲の始まりから終わりまで、集中して聞くことも自分の集中力を高める効果が得られます。
by Skitterphoto
◆4:エクササイズ
ヨガやチームスポーツ、ダンスといった比較的長時間のエクササイズには、体を活性化させるだけでなく脳の集中力を高める効果もあります。2016年に発表されたオランダの研究では、20分間のエアロビクスを行った子どもたちの集中力が増加したという結果が出ているとのこと。また、アメリカで行われた2014年の研究でも、運動が7歳~9歳の子どもたちの健康状態を改善しただけでなく、脳機能や認知能力の向上も見られたと判明しています。
by theformfitness
◆5:睡眠
睡眠不足は集中力に大きな悪影響を与えます。寝室にTVやコンピューターなどがある場合は、できるだけベッドに光が届かないように配置を工夫したり、光を遮る布のようなものを就寝時にかぶせることが効果的。また、睡眠前にスクリーンやスマートフォン、タブレットといった強い光を放出するデバイスを見ないようにすることも、睡眠状況を改善する助けになるとのこと。
by Ivan Obolensky
◆6:読書
多くの人々は集中力を失ってしまったことにより、読書することが困難になり、苦痛に感じるようになってしまったと考えています。しかし、読書をし続けること自体が集中力を取り戻すトレーニングにもなるとのことで、少なくとも30分は本を読み続けてみることで、何かに集中するという感覚を得ることができます。
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