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現代医学では間違いだらけでも昔は信じられていた数々の病気とその治療法とは?

by wellcome collection

病気を診断して治療する医療の歴史は、紀元前の古代エジプトやバビロニアまでさかのぼることができるといわれています。しかし、近代医学が確立する18~19世紀までは迷信と伝統に基づく民間療法がほとんどで、現代の医学から見ると間違った病気の定義や治療法が採用されていました。昔の医学ではいったいどんな誤りが広く認知されていたのか」が、科学系メディアのScience alertでまとめられています。

The Weird History of Diseases Which All Turned Out to Be Totally Wrong
https://www.sciencealert.com/abandoned-historical-diseases-hysteria-nostalgia-drapetomania-unwell


・神経衰弱
19世紀後半にアメリカの神経学者が提唱した「神経衰弱」は、オーバーワークによる疲労が中枢神経系のエネルギーが消耗することで引き起こされる病気だと考えられていました。当時の神経衰弱の治療法は、キャンプに出かけたり、暗室でじっとしたりすることでした。例えば、アメリカの第26代大統領を務めたセオドア・ルーズベルトは、1912年の大統領選挙で敗北した後に神経衰弱の診断を出され、医者の勧めによってアマゾン川流域への探検に乗り出したといわれています。


「神経衰弱」は一つの精神疾患として20世紀初頭まで受け入れられてきましたが、あまりにも概念が曖昧だったため、1930年代頃から少しずつ医療の現場では用いられなくなり、現代のヨーロッパと日本では「神経衰弱」の診断が下されることはほとんどありません。それでも、世界保健機関(WHO)が公表している「疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)」には、神経衰弱の名が掲載されています。

・ノスタルジア
「ノスタルジア」は日本語では「郷愁」とも訳され、遠く離れた異国から故郷を懐かしんだり、過ぎ去ったはるか過去を思い起こす時の気持ちを表す言葉として用いられています。しかし、元来「ノスタルジア」は病気を指し示す言葉の1つでした。

17世紀後半にスイスの医学生だったヨハネス・ホーファーが、故郷を離れて戦っていたスイス人傭兵の中に抑うつ・情緒不安定・食欲不振などの症状を示す者が現れていると指摘。スイス人傭兵に現れている症状を、nostos(帰郷)+algos(痛み)を組み合わせて「nostalgia(ノスタルジア)」と名付けました。19世紀のフランスの医学書には、ノスタルジアが原因となって患者が亡くなった2例が紹介されています。そのうちの1つは「自分の実家を大切に思うばかりに、実家を離れる時の絶望で呼吸困難を引き起こした」と記されています。もちろん、現代では病気として扱われてはいません。

・ヒステリー
「ヒステリー」は、もともとギリシア語で「子宮」を意味する言葉でした。脳と神経の役割がまだ知られていなかった古代ギリシャでは、女性の子宮が体内で動き回ることでさまざまな症状を引き起こすと考えられていました。また、突然笑ったり泣き出したりという情緒不安定や窒息感・感情の高ぶりはすべて女性の骨盤に由来するという迷信が19世紀頃まで長く信じられてきました。


また、治療としては、マッサージや水圧によって女性の性的欲求を解消したり、ハーブを処方したりといった方法が採用されていました。しかし、こうした治療法は、特に医学的根拠がないまま実践されていたため、逆にヒステリーが悪化する場合も多くあったとのこと。現代では、ヒステリーは「ホルモンバランスの崩れによって引き起こされる興奮状態」と判明していて、ICD-10においては「身体化障害」にまとめられています。

・貧血
血液中のヘモグロビン濃度や赤血球数が減少することで、血液の酸素運搬能力が下がって急激な倦怠感に襲われるのが「貧血」です。ヘモグロビン濃度が減少する理由はさまざまありますが、最も多いのが鉄分の不足です。ヘモグロビンは2価の鉄原子を抱える「ヘム」とタンパク質が結合したもので、体内で鉄分が不足するとヘモグロビンを生合成できなくなってしまいます。

女性は月経によって定期的に出血を生じますが、その際に体内の鉄分も排出してしまいます。そのため、女性は男性よりも比較的「鉄欠乏性貧血」を抱えやすく、このことから、昔は「貧血は女性の病気」と呼ばれていました。そして、栄養学の概念がない17世紀以前には、なんと「妊娠すること」が治療法であると考えられていたこともありました。もちろん現代ではこの治療法は否定されています。


ドラペトマニア
19世紀半ば、アメリカ人医師のサミュエル・カートライトは「苦役から逃亡する黒人は『奴隷としての義務から逃げ出そうとする黒人特有の遺伝性精神病』を患っている」と主張。さらに、カートライトは、自身が「ドラペトマニア」と呼ぶ精神病を治療するためには「患者から悪魔が出て行くようにむち打ちを行うべし」と結論づけるとんでもない論文を学会で発表しました。

当然ながらこの論文には科学的根拠は一切ありませんが、黒人奴隷が当たり前だったアメリカ南部ではすぐに受け入れられ、ルイジアナ医学会はドラペトマニアを精神病だと認定。20世紀初頭までアメリカの医学書にも掲載されるほど、ドラペトマニアは認知されていました。もちろん現在では完全に否定されており、ただの差別意識の表れでしかないことはいうまでもありません。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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