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「インディーズゲーム市場では内容よりもマーケティングの方が重要になりつつある」という開発者の指摘

by Iwan Gabovitch

素晴らしい発想力と便利なツールで、個人や小さな開発企業が制作・リリースするゲームが「インディーズゲーム」です。販売会社(パブリッシャー)に頼らず、開発者が独自に配信するインディーズゲームの中には、「マインクラフト」や「UNDERTALE」など、世界的大ヒットを飛ばしたタイトルが多く存在します。そんなインディーズゲームの開発者が「リリースされるゲームタイトルが年々爆発的に増えているため、インディーズゲーム市場でもマーケティングがより重要になってきている」と指摘しています。

Infinitroid - Did I just waste 3 years? - Dev Blog
https://infinitroid.com/blog/posts/did_i_just_waste_3_years


Lukeさんはローグライクとメトロイドヴァニアを組み合わせたアクションゲーム「Infinitroid」の早期アクセス版を2017年11月にリリースしました。Lukeさんは自分のサイトで早期アクセス版を配布し、正式版が完成したらいずれSteamなどのゲーム配信プラットフォームで配信しようと考えていました。

「Infinitroid」がどういうゲームなのかは以下のムービーを見るとわかります。

Infinitroid Dev Trailer (Rogue-lite Metroidvania & Sci-fi Platformer) - YouTube


Lukeさんがゲームをリリースしてから4カ月の間に1016人がサイトを訪れたそうですが、「Infinitroid」はわずか4本しか売れなかったとのこと。しかも、この4本の売り上げは、リリース以前からLukeさんのサイトにアカウントを登録していて「Infinitroid」を無料でプレイできた人たちが、Lukeさんの開発を応援するために購入したものだったそう。つまり、新規にアカウント登録を行って早期アクセス版を購入した人は4カ月で1人も現れなかったというわけです。


Lukeさんは「開発にかけた3年を無駄にしたのかもしれない」とコメントし、このような事態を招いた背景にはインディーズゲーム市場の肥大があると指摘しています。

「Infinitroid」の開発を始める直前の2014年から、Steamを中心にインディーズゲームが爆発的に増加しました。以下のグラフは、年ごとに新しくリリースされたゲームの本数をまとめたものですが、2014年から桁違いの本数がリリースされ、2017年には7672本ものゲームがリリースされたことがわかります。


Lukeさんによると、ゲームの本数だけではなく、1チームあたりのリリース間隔も短くなっていて、ゲームの開発速度が急激に上がっているとのこと。格安でリリースされるゲームタイトルの中には、「質を度外視して見境なくリリースしただけのもの」も多く存在し、必然的にゲームの質と1本あたりの価格相場が下がり、市場が飽和状態になりつつあることも問題として挙げられています。

一方で、開発の努力によって素晴らしいゲームに仕上がっているタイトルもリリースされています。しかし、あまりにもたくさんのインディーズゲームがリリースされてしまうため、これまで通りのプロモーションを行っていても、大量のゲームに埋もれてしまってすぐに忘れ去られてしまうと、Lukeさんは述べています。

同様の指摘はLukeさん以外からもされていて、Positech Gamesのクリフ・ハリス氏は「インディーズゲームを作っても失敗し、お金を失うでしょう。もはやインディーズゲームの開発者は貧困層に位置すると認めざるを得ません」とブログで述べています。


Lukeさんは「もちろんお金が全てではありません。ゲームを作って共有するのは楽しいです。しかし、私は自分の時間を投資することでみんなが遊んで楽しいものを作り、何らかの利益を上げたいと考えていました」と述べています。そして、今はクリエイティビティというものを一旦脇に置いて、以下の点に留意しながら、マーケティングとゲームのブラッシュアップだけを考えることにしたと、Lukeさんは語っています。

・満足のいくレベルで最小限の仕事にまとめて、リリースし、プロジェクトの完了を宣言できるようにすること。

・開発はほどほどにして、マーケティングに専念すること。価格を下げたり、プロモーションを行ったり、無料のテストプレイなどを試して、その結果から次やるべきことを決めるべき。

・プロジェクトそのものを純粋に趣味として捉えること。プロジェクトが完了するまで何年もかかるかもしれませんが、気が向いたらそれに取り組むことで、最終的にクールで個性的なものが生まれるかもしれません。

・プレイヤーの生活に恩恵をもたらすように、ゲームが過度に中毒的にならないようなプレイ時間を設定し、道徳的なゲーム体験をプレイヤーに与えること。

・たとえそれが商業的に失敗した作品でも、グラフィック・音楽・レベルデザインなどを追加・改善し、完成した製品をリリースするよう努めること。

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in 動画,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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