自分の成果を認められず「称賛に値しない」と感じてしまう「インポスター症候群」から抜け出すにはどうすればいいのか?
by libellule789
上司にノーベル賞の功績を奪われた科学者のジョスリン・ベル・バーネル氏は当時、自分の功績を肯定できずに自分を詐欺師だと感じてしまう「インポスター症候群」だったといわれています。アルベルト・アインシュタインなど、偉人といわれる人々がインポスター症候群でしたが、偉人に限らず、私たちの多くが人知れずインポスター症候群に悩まされているとのこと。どうすればインポスター症候群から脱却できるのか、TED-Edがムービーで解説しています。
What is imposter syndrome and how can you combat it? - Elizabeth Cox - YouTube
詩人・歌手・女優・活動家として活躍したマヤ・アンジェロウは11冊の本を書き、大統領自由勲章を受賞してもなお、「自分は何も達成できていない」と感じていました。
また、アルバート・アインシュタインは自分のことを「故意ではない詐欺師」だと考えており、自分の研究は注目されるに値しないと考えていたそうです。
このような「自分を詐欺師のように感じる」という感覚は、多くの人が抱いているもの。なぜ人は「自分は何も達成していない」と感じたり、「自分のアイデアや技術は注目に値しない」と思うのでしょうか?
この疑問に初めて向き合ったのが、心理学者のポリーン・ローズ・クランス氏です。
セラピストとして活動していたクランス氏は、多くの学生がよい成績を取りながらも大学での自分のことを「価値がない」と考えていることに気づきました。
中には、自分が認められたのは「システムエラーだ」と考えている学生もいたそうです。
このような感情は学術的に研究されていないものの、自分も学生時代に同じような経験をしていたとクランス氏は思い出しました。
そこで、クランス氏は同僚のスザンヌ・アイム氏と共同研究を行うことに。
研究の結果、女子学生の間に「自分を詐欺師のように感じる」という現象が広まっていることが判明しました。
そして、その後の研究で、自分を詐欺師のように感じる「インポスター症候群」がジェンダーや人種、年齢、職業といった枠を越えて、さまざまな場所に存在することが判明しました。
そして、特に過小評価されがちなグループが、インポスター症候群の影響を受けやすいことも判明しています。
インポスター症候群は病気や異常なことではなく……
必ずしもうつや不安、自尊心の低さと結びついているわけではありません。
高い技術を持つ人や、何かを達成した人は、自分以外の人も同じぐらいに高い技術を持っていると思いがち。このことが、「自分は称賛に値しない」という感情のスパイラルを生み出します。
つまり、アンジェロウやアインシュタインは、達成や成功のしきい値が「ない」のです。
そして、このような現象は、技術や能力が高い人だけでなく、誰にでも起こるもの。
心理学でいう「多数の無知」は、おかしいと思っていることや疑問に思っていることがあっても、他人が声を上げないために、自分の考えがおかしいと考えてしまうことを指します。
同僚がどのくらい熱心に働いているのか、自分のタスクがどのくらい難しいのかなどを把握できない状態で、「自分は能力がない」という考えを捨てることは難しいもの。
インポスター症候群は、人々が考えをシェアしたり、あるいは仕事やプログラムへ申し込んだりすることを妨げます。
インポスター症候群を防ぐ最善の方法は、「会話すること」にあります。多くの人がインポスター症候群に悩まされており、自分自身のパフォーマンスについて尋ねることを恐れます。例えポジティブなフィードバックであっても……
その人の「自分を詐欺師だと思うこと」を和らげることはできません。
しかし、自分の師やアドバイザー、あるいは同僚がインポスター症候群を経験していたという話は……
人の助けになるはず。
また、自分の感情に「インポスター症候群」という名前があると知るだけでも、楽になるかもしれません。インポスター症候群という現象を知ることができれば、ポジティブなフィードバックを集めて再検討することもできます。
ある科学者はラボで起こした問題について、自分を責め続けていました。
そこで、科学者は問題が起こる都度、原因を記録し始めたとのこと。この結果、原因の多くは使用している機器に問題があると突き止めました。そして、自分自身の能力を認めることができたのです。
自分を詐欺師のように感じる気持ちを完全に消し去ることはできないかもしれません。しかし、互いに学術的あるいは職業的な課題について会話を行うことはできます。
インポスター症候群がありふれた経験であるという認識が広まり、私たちがもっと自由に自分たちの感情について話し合えるようになれば、「自分には才能がある」という自信を多くの人が持てるようになる可能性があるとのことです。
・関連記事
成功に自信が持てない「インポスター・シンドローム(ペテン師症候群)」には男性の方が大きな影響を受ける - GIGAZINE
ノーベル賞の功績を上司に奪われた科学者、時をへて賞金3億円の科学賞を受賞するも「賞金は寄付」 - GIGAZINE
10人の成功者が語る「失敗とはどのようなものか」 - GIGAZINE
9人の成功者が語るそれぞれの「人生の成功」の定義とは? - GIGAZINE
仕事や人生を批判された時の対処方法とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ