砂糖は本当に健康に悪いのか?実は多くの反論が存在する

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砂糖は心疾患のリスクをリスクを上げ、糖尿病や肥満を引き起こすといわれており、「砂糖=悪」という見方が強くなっています。しかし、これまでに発表された研究結果から「砂糖が諸悪の根源」という1つの結論を導くのは難しく、さまざまな反論・主張が存在するとして、ジャーナリストのJessica Brown氏が問題の複雑さを述べています。

BBC - Future - Is sugar really bad for you?
http://www.bbc.com/future/story/20180918-is-sugar-really-bad-for-you

「砂糖は体に悪い」という考えは一般的なものとなり、世界保健機関(WHO)の「1日の砂糖摂取量ガイドライン」では缶ジュース1本でもアウトという推奨摂取量が示されています。しかし、「カロリーの過剰摂取が健康に影響を与える」という枠を越えて、1つの食べ物の危険性を叫ぶ現代の風潮に、疑問を呈する研究者も少なくありません。実際のところ、1つの食べ物が健康に及ぼす影響を証明するのは難しいことであり、1つの食べ物の危険性が主張されることで、本当は体に必要な栄養分が摂取されなくなるリスクも考えられます。

そもそも、「Sugar(砂糖、糖)」という言葉は一般的にグラニュー糖といった「添加される糖類(添加糖)」のことを意味すると理解されますが、本来「糖」は単糖・多糖の両方の両方を指す、広い意味を持つものです。全粒穀物や野菜に含まれる食物繊維は多糖類であることが多く消化されにくいものですが、ブドウ糖などの単糖は消化・吸収されやすく血糖値をすぐに上げるという違いがあります。

16世紀以前は一般の人々に砂糖を買う余裕はなく、砂糖はお金持ちだけのものでした。しかし1960年代にブドウ糖を果糖に変換する技術によって、より甘みの強いコーンシロップが発明され、大量消費されるようになります。このコーンシロップのアメリカでの消費量は、1970年から1990年にかけて10倍に増加していることが、肥満の増加を反映していると研究者は指摘していますレプチンというホルモンは人に満腹を感じさせる作用がありますが、高果糖のコーンシロップはペプチンの値を上昇させないので肥満を引き起こすという主張も行われています。

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「砂糖が体に悪影響を及ぼす」とする研究の中心は、高果糖のコーンシロップを多く含むジュースに関するものです。88の研究をメタアナリシスした研究では、甘い飲み物の消費と体重増加の間に関連性が見つかりました。甘い飲み物を飲むことによって満足感が減り、飢えが増加することで、より多くのエネルギーを摂取してしまうわけです。

ただし、ソフトドリンクや食べ物に添加される糖類の摂取量が肥満率に伴い増加している、という結論は広範な相関関係に過ぎない、という反論もあります。また、一部の専門家は、過去10年においてアメリカにおける肥満レベルは上昇し続けているのに対し、砂糖の消費量は減少していることを指摘。さらに、オーストラリアやヨーロッパでは高果糖のコーンシロップが用いられていないか、消費量が少ないにも関わらず肥満と2型糖尿病の患者が増加していることも指摘されています。

高果糖のコーンシロップ以外に健康への影響が懸念されているものが、食べ物に添加される糖類、特に果糖です。肝臓が果糖を分解すると、最終的に中性脂肪が作られます。血中に放出された中性脂肪は血栓をできやすくし、心臓病の原因になるともいわれています。また、15年間にわたって行われた研究で、1日の必要カロリーのうち25%を添加糖から取る人は、添加糖から摂取するカロリーが10%以下の人に比べて、2倍以上も心臓病のリスクが高いとも研究で示されています。2型糖尿病の研究でも、1日に1本以上のソフトドリンクやジュースを飲む人は、それらをほとんど飲まない人に比べて糖尿病になりやすいと示されました

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これに対し、ローザンヌ大学の生理学教授であるLuc Tappy氏は、糖尿病・肥満・高血圧の主な原因はカロリーの過剰摂取であり、砂糖は構成要素の1つに過ぎないと反論しています。Tappy氏は、アスリートは糖の消費量が多いにも関わらず、心臓病のリスクは低いことを例に出し、エネルギー摂取量に見合うエネルギー消費があれば果糖などの糖を多く摂取する食生活でも体は耐えられると述べました。

実際のところ、添加糖が直接的に2型糖尿病や心臓病、肥満、がんを引き起こすとする証拠はほとんどありません。もちろん関連性は認められていますが、臨床試験ではっきりと因果関係が示されたことはないのです。


この他にも、砂糖についての研究結果には、疑問視されているものがあります。2017年にはマウスを使った実験で砂糖がコカインと同じような中毒性があると発表されましたが、この研究はエビデンスを誤解釈しているとして大きな非難を浴びました

そして、砂糖が成人の脳のパフォーマンスや記憶力を向上させるとする研究結果も存在します。この研究は、少量のブドウ糖を含む飲み物を与えられた被験者と、人工甘味料を含む飲み物を与えられた被験者に、記憶力を測定するためのさまざまなタスクを行ってもらうというもの。

実験の結果、ブドウ糖の摂取は高齢者に疲れを感じさせず「難しいタスクに全力で取り掛かろう」というモチベーションを与えることが判明しました。また、血糖値の上昇によって、タスクの最中も被験者は幸せを感じることができたとのこと。なお、若い被験者に対しても同様の実験が行われたところ、エネルギーの上昇は報告されましたが、気分や記憶力には影響しなかったそうです。

WHOのガイドラインでは、砂糖の摂取量について「1日に摂取するカロリーの5%以上は控えるべき」と示されていますが、栄養士のRenee McGregor氏は、「健康でバランスの取れた食事」が人によって異なると理解することが重要だとしています。運動選手であれば糖の摂取量を増やすべきなのはもちろんのこと、運動選手ではない人であっても、1つの食べ物を毒だと考えるべきではないとMcGregor氏は注意を呼びかけています。摂食障害の患者を抱えるMcGregor氏は、「1つの食べ物をタブーだと見なすことで、逆にその食べ物が欲しくなる」という可能性についても示唆しました。

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ジェームズ・マディソン大学で科学と宗教の関係を研究するAlan Levinovitz氏は、「砂糖は悪」と見なされるようになった理由について、「歴史上、人間はあらがいがたいものを悪魔化してきた」と語っています。同様に邪悪だとして見なされたものに、ヴィクトリア朝の性行為が挙げられています。

砂糖に関する議論が増える中での問題は、人々がソフトドリンクのような他の栄養素が欠けている食品と、果物のような糖以外の栄養分を含む食品を混同する危険性があることです。ヴィーガンのTina Grundinさんも「全ての糖は不健康である」と考えていた1人で、高タンパク・高脂質のヴィーガン食を追求した結果、摂食障害を引き起こしました。その後、添加糖と炭水化物としての糖の違いを認識したGrundinさんは、野菜・穀物・豆科の植物などから果糖やでんぷんを多く摂取するヴィーガン食に変えることで、体調不良を克服したとのこと。

異なる種類の糖が健康にどのように影響するのか、ということについて、完全な意見の一致はありません。人々が「完璧な食べ物」を求めることが逆に栄養学を複雑にさせていると、McGregor氏は指摘しました。

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