砂糖や炭水化物を抜くダイエットで「果物」は避けるべきなのかを専門家が解説


低炭水化物・低糖質の食生活は減量に有効だと多くの人が考えているはず。しかし、一言で「糖を減らす」といっても、精製された砂糖の摂取量を減らすことと、果物や穀物の摂取量を減らすことには大きな違いがあります。予防医学の専門家であるモアハウス大学医学部のジェニファー・ルーク准教授が、なぜ二型糖尿病の予防や症状改善に「果物を食べること」が重要なのかを解説しています。

Sugar detox? Cutting carbs? A doctor explains why you should keep fruit on the menu
https://theconversation.com/sugar-detox-cutting-carbs-a-doctor-explains-why-you-should-keep-fruit-on-the-menu-173992

◆炭水化物や糖を抜くことは健康によいのか?
減量やシェイプアップの方法として「炭水化物や糖質の摂取量を減らすこと」を聞いたことがある人も多いはず。しかし、ルーク氏は「シュガー・デトックス」について「時間の無駄」と述べています。糖は体にとって必要なものであり、たとえ食事から糖を取らなくとも、肝臓は糖新生というプロセスを経て、たんぱく質をブドウ糖に変換するとのこと。

また、 「炭水化物を大幅に減らす食事法」が健康を害するとする研究結果も存在します。例えば以下の調査ではアトキンスダイエットのような糖質制限ダイエットを行っている人は、通常の食事を行っている人よりも死亡リスクが32%も高いことが示されています。

糖質の摂取を控える「糖質制限ダイエット」は体に良くないという研究結果 - GIGAZINE


また炭水化物の量を減らすケトジェニックダイエットは有益であることが示されていますが、同時に筋肉が破壊されてしまうことや、繊維不足で便秘を引き起こすことが指摘されています。

◆砂糖を減らすときに注意すべきこと
ルーク氏の患者の1人に糖尿病を患う女性がいました。2019年にこの女性は新鮮な野菜や果物の摂取量を増やし、動物性食品やキャンディー・クッキー・ケーキの摂取量を減らすという方法で8.6kgの減量に成功し、血糖値の指標となるグリコヘモグロビン(HbA1c)の値が11.5%から7.6%に減少しました。しかし、女性は糖尿病の主治医や看護師から「植物ベースの食事から糖を取りすぎている」と指摘され、糖質を制限したんぱく質を多く取る、いわゆる「低糖質ダイエット」を実施。そして、医師や看護師の推奨通りに「砂糖不使用」のキャンディやクッキー、そして人工甘味料を摂取する食生活を行ったそうです。この結果、女性のHbA1cは10.4%まで戻ってしまったとのこと。

◆果物を食べる量は減らすべきなのか?
炭水化物や糖質は健康にとって悪役にされることが多いものですが、ルーク氏が推奨する「植物ベースの食事」を行うと、炭水化物の摂取量は多くなります。しかし、糖尿病や高血圧といった慢性疾患の患者は、植物ベースの食事を行うことで症状が改善します。これは砂糖や炭水化物に関しては「都市伝説」が存在するためとのこと。

まず正しく理解すべきなのは、「糖」の正体について。糖には大きく分けてグルコース(ブドウ糖)・フルクトース(果糖)スクロース(ショ糖)の3種類があります。このうち、主に細胞がエネルギーに使うのはブドウ糖です。


ブドウ糖は炭水化物の分子を構成するものであり、複数のブドウ糖が連なった状態をでんぷんと呼びます。


基本的に人間は生き残りに必要な栄養素を得るために「甘い味」を望むよう進化しました。私たちは自分の体の中でビタミン・ミネラル・植物繊維といったものを作り出すことができません。これら物質の供給源は甘く熟した果物であることから、人間が「甘いもの」を欲するのは理にかなっていることと言えます。また、ビタミンやミネラルのほか、イチゴに含まれるエラグ酸は植物によってのみ生成される抗酸化物質であり、ガンと戦ったり心臓の健康に役立ったりすることが判明しています。

一方、高度に加工され精製された砂糖はカロリーを除く全ての栄養素が取り除かれた、「炭水化物を濃縮した形」です。その代表例がテーブルシュガーやコーンシロップなどで、これらを継続的に摂取すると、必要な栄養素を得ないまま過食の悪循環を生み出し、肥満を始めとする健康問題を引き起こす可能性があるとのこと。逆に、果物を多く取る女性は肥満率が少ないことも判明しています。

◆砂糖の毒性
前述した「精製された砂糖」は直接的な毒性があるものではありませんが、血流中のたんぱく質や脂肪と結びついてAGEsといった物質を生み出す可能性があるとのこと。AGEsは糖尿病、アテローム性動脈硬化症、慢性腎不全、アルツハイマー型認知症などの変性疾患を悪化させると言われています。

このような背景から「砂糖は二型糖尿病を引き起こす」と考えている人が多いのですが、血糖値を下げるために砂糖の摂取量を減らすと、「その結果として膵臓のベータ細胞が失われてしまう」とルーク氏。

ベータ細胞はインスリンの合成を行います。インスリンは肝臓におけるブドウ糖生成をブロックし、それを脂肪や筋肉細胞に送り込むプロセスにおいて、血中のブドウ糖レベルをコントロールするもの。ベータ細胞の機能が失われてしまうと十分なインスリンが生成されず、最終的には血中のブドウ糖レベルが高くなります。これは二型糖尿病の特長の1つです。


ベータ細胞は抗酸化物質のレベルが低く、フリーラジカルやAGEsの攻撃を受けやすい状態にあります。果物に多く含まれる抗酸化物質はベータ細胞を保護するため、過去の研究では「果物を丸ごと食べると二型糖尿病のリスクが低下すること」が示されています

これらの事情から、精製された砂糖で極端に甘い食べ物を排除することは有益ではあるものの、栄養価の高い果物や野菜の摂取は増やすべきだとルーク氏。「精製された砂糖を取らなくなると、舌が果物の自然な甘さにびんかんになり、それらで満足できるようになります」とルーク氏は述べました。

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in , Posted by darkhorse_log

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