AMDの「2020年までの6年間で25倍の効率化」という野心的なプロジェクト「25x20 initiative」が着実に成果を出している
半導体大手のAMDは2014年に「2020年までの6年間で電力効率を25倍にする」という野心的な目標を掲げた「25 x 20 Energy Efficiency Initiative(25x20 initiative)」を発表しました。その中間報告がマーク・ペーパーマスターCTOから出され、順調すぎるほど結果を出し続けていることが明らかになっています。
25 x 20 Energy Efficiency Initiative | AMD
https://www.amd.com/en/technologies/25x20
AMD Corporate: Four Years In, Our 25x20 Energy ... | Community
https://community.amd.com/community/amd-corporate/blog/2018/08/20/four-years-in-our-25x20-energy-efficiency-goal-report-card
2014年にAMDは、ノートPCなどのモバイル向けプロセッサのエネルギー効率を劇的に改善することを目指して、「6年後の2020年までに、2014年比で25倍の電力効率化を達成する」という野心的な目標「25x20 initiative」を発表しました。ノートPCやスマートフォンはもちろん、デスクトップPCにおいてもコンピューティング端末の「性能」の中に占める「省電力」「電力効率」の重要性は年々、高まっており、高性能なCPU/GPUの開発のために、AMDはエネルギー効率の向上を目指すことを明確に打ち出したというわけです。
6年間で25倍ということで年あたりでは70%以上の電力効率化を実現することが求められるため、「25x20 initiative」は極めて厳しい目標設定だといえます。その「25x20 initiative」の取り組みの中間発表が行われ、AMDは開始から4年間は、常に目標とする電力効率化のペースを上回り続けていることが明らかにされています。
グラフからは、2014年から2015年にかけての電力効率の向上が著しいことがわかります。その後はペースアップが停滞したものの、2016年後半から再びペースが上がり、「25x20 initiative」発表後、常に「6年間で25倍」の目標ペースをクリアし続けているのが確認できます。コンピューティングの効率化に関する第一人者であるジョナサン・コミー博士は、「AMDがやっていることは、小さなことではありません。『6年間で25倍』という設定は、歴史的なベンチマークである『ムーアの法則』による改善ペースを70%も上回るものです。25x20 initiativeが達成されれば、IoTやビッグデータ分析、VR、ディープラーニングなどエキサイティングな新技術が実現されるでしょう」と述べ、AMDの成果を高く評価しています。
ともすれば「2014年までのAMDのチップの電力効率が悪すぎた」という意地悪な見方もできそうですが、「達成することが極めて困難な技術的目標を掲げた上で、技術を改善し続けることで性能を向上させている」というのは紛れもない事実であり、CPU業界の最大のライバルであるIntelとのし烈な競争を行えるだけの位置にAMDが舞い戻ったことと無関係ではなさそうです。
ペーパーマスターCTOによると、次世代の「Ryzen」プロセッサや「Vega」グラフィックスは、「25x20 initiative」の主要なメトリック改善が反映されており、さらなる進化が期待できるとのこと。2年後の2020年時点でAMDが「25x20 initiative」をクリアしていれば、AMDはCPU・GPU両方の市場でさらなる躍進を遂げている可能性が高そうです。
AMD’s Energy Efficiency Target: 25x Improvement by 2020 - YouTube
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