AMD復活を実現したRyzen誕生1周年座談会開催、未発表の「Zen 5」について開発者がうっかり漏らすハプニングも
2018年4月19日に「Ryzen+」アーキテクチャを採用する第2世代Ryzen「2000シリーズ」が発売されます。第1世代Ryzenの改良版となるRyzen2000シリーズの発売を前にして、第1世代Ryzenの登場以降のAMD製CPU大躍進について、AMDの各方面のキーパーソンによるRyzen1周年記念座談会の様子がムービー「Ryzen Processors: One Year Later」で公開されています。
Ryzen™ Processors: One Year Later - YouTube
「クリスティーナ、マイク、スーザン、ジェームズ。こうして集まるのはRyzen 7のリリース直前以来だね」と、画面中央のジョン・テイラーCMOの司会進行で座談会が始まりました。
「Ryzenが登場して1年たったけれど、数百万人の熱狂的なユーザーの反応を得られたことは素晴らしいことだね。そこで、今回はRyzenの1年間を振り返ろうと思うんだ。この1年の印象と、Ryzenプロセッサーの今後の見通しについて聞かせてほしい」
「まずはRyzenのチーフアーキテクチャのマイクからいこう。特にRyzenのゲーミングシーンでの関係から。開発チーフとしてゲーム開発者との連携はどうだったの?」
「x86コードとゲームコードとのすり合わせが大切なんだけれど、『Zen』はまったく新しいアーキテクチャということでなかなか大変だった。けれど、彼らとはより深い部分まで連携することでよい仕事ができた。Zen自体がパフォーマンスを失わないようにするのはもちろん、世にある他のソフトウェア製品の性能を損ねないことで、本当の性能を実現することが大切だ。だから、僕のチームは開発者と直接連携してフィードバックを共有し、ソフト・ハードの互いの面を理解する手助けをしたんだ。そうして、大きな成果を得ることができた」
「正直なところ、Ryzenローンチ直後にはパフォーマンスを引き上げる余地があったよね」
「ああ。新しいアーキテクチャということで、調整が必要だった。そしてパフォーマンスが最も良くなるスイートスポットを探る必要があったよ」
「スーザンにいこう。君はグラフィックスのRadeonチームにいるね。どのようなことに取り組み、Ryzenへ次世代のGPUの開発の経験を生かしたの?」
「Zenで私たちがやろうとしていたことは、『できると信じる範囲をより押し広げること』。CPUコア開発チームとGPUコア開発チームが方法論を共有したわ」
「Zenでは電力とパフォーマンスのバランスがカギだったけれど、それは君たちのチームと同じ方向だよね」
「ええ、その通り」
「次はマーケティングチームのクリスティーナ。ここには初めてだよね。クラブへようこそ」
「Ryzenのネーミング、ロゴデザイン、パッケージデザイン、マーケティング戦略などありとあらゆることを担当したわけだけれど、大成功までのプロセスについて教えて。ユーザーの反応はどうだったのかについても」
「当然のことながらRyzenのリリースよりもずっと前から取り組んでいたのだけれど、Ryzenを目にしたときにコミュニティがどんな反応をするのか予想するのはとても難しかった。『New Horizon(新たな地平)』というテーマだった当初からコミュニティの反応は良くて、実際に製品を手にしてそのパフォーマンスの良さがわかったときのユーザーの反応は、私たちの予想以上だったわ」
「ジェームズ。RyzenとRyzen Threadripperは熱狂をもって受け入れられたんだね」
「Ryzen Threadripperによって夢がかなったよ。AMDの全員が正しい道を進み始めていることを感じた。素晴らしい製品を開発し、マーケティングなどを含めて全員で本物の製品、本物のビジネスにしたんだ。2年前にはこのような成功を誰も思い描かなかった。そこには血と汗と涙があったんだけれど、我々には情熱があったから難しいとは感じなかったよ」
「CPUなどの製品では、多くのユーザーが製品の購入を検討するためにメディアやユーザーのレビューを楽しみに待っている。Ryzenのローンチでは、かつてない規模のテスト用サンプル配りをしたよね。これについて聞こう」
「マーケティングチームは、本当に挑戦がしたかったの。この業界がこれまで見たことのないような挑戦をね」
「ジェームズ。サンプルキットを1000人以上のレビュアーに届けるにはマザーボードメーカーなどとの協力が必要だったよね?」
「ゲーミング、ストリーミング、マルチタスキングなどあらゆる面でPCインダストリーを変えること、性能あたりの価格などを新しいレベルに持っていくのが目標だった。革新的なことを起こす前に、変化が必要だったんだ。遠慮していてはこれは起こせない。大胆に前進し続けることがAMDには必要だった。求めていることにみんなが同意していたから、交渉は難しいものではなかったよ。すべてのパートナーが協力してくれた。みなが革新的なものを必要としていたし、それを求める情熱がサンプリングプログラムにはあったんだ」
「スーザン。市場での競争におけるZenの重要性をどう考える?」
「以前は本当の意味での競争はなかったわ。競争はいつも良いものよ。そして、今や競争があるわ。AMDは競争の場に帰ってきたと感じる。振り返ってみて、その過程に携われたことを本当に幸せに感じるわ」
「マイク、Zenの重要性について教えて。今後のZen+、Zen 2、Zen 3と開発が続くことについても」
「データセンターの年間成長率は40%に達している。より多くのコア、低消費電力、高効率化に向かっているし、これはマーケットが期待していることでもある。だから、日々チャレンジし続けていくことが大切だ」
「だから、すでに『Zen 5』に取り組みだしたことは非常にうれしいし……」と、AMDがこれまで発表していない「Zen 5」についてマイク・クラーク氏はポロリと漏らしてしまうハプニングが発生しました。
この発言にはテイラーCMOから指摘が入りクラーク氏も苦笑い。
「タイムマシーンでトークをやりなおさなきゃね」と一同に笑いが起こります。
もはや開き直ったのか「Zen 5」というフレーズをためらうことなく使うクラーク氏は長期的に改良し続ける大切さを確認しました。
「ではクリスティーナ。Ryzenをリリースして1年間で、マーケットにおける立ち位置はどのように変化した?」
「RyzenはデスクトップPCだけでなくノートPCにも搭載されることになった。エンスージアストだけでなくより一般ユーザーに向けてアプローチが始まっているわ」
ユーザーの反応について聞かれたクリスティーナ・アイロン氏は、「ユーザーの反応は非常に良くて、購入ユーザーの満足度は平均で『4.8』の評価」と答えました。
「5段階だよね?」「もちろん5段階。5段階の『4.8』よ」
「ジェームズ。第2世代のRyzenについてはどうだい」
「第2世代Ryzen(Ryzen+)は良好だよ。ゲーミング性能でさらに改良が加えられ、ソフトウェア開発者との調整も進んでいる。メモリ速度、キャッシュレイテンシー、コア周波数などかつてないほどスマートに改良が行われているよ」
「2018年4月だよね?」
「そう。2018年4月に発売される。すでに販売されているAM4マザーボードは、簡単なファームウェアアップデートによってRyzen+に対応できる。2月に発売したRadeonグラフィックス搭載のAPUと同じく、既存のマザーボードが使えるよ。もちろん新チップセット『400シリーズ』搭載のマザーボードなら、メモリ性能、CPUのオーバークロッキング機能の最適化が進み、新しいストレージ技術などの新機能にも対応している」
「すでに4つの製品群が、AM4マザーボードにすべて対応するんだよね」
「Bristol Ridge世代のAシリーズAPU、第1世代のRyzen、Radeonグラフィックス内蔵のAPUそして第2世代RyzenのRyzen+の4種類のCPUファミリーにAM4マザーボードは対応する。障壁を取り除いて複雑さを排除して長い期間製品を使えることをユーザーは望んでいるからね」
みなの素晴らしい仕事ぶりをたたえつつ、来年もこうして5人で楽しく集まれることを願って座談会は終了しました。
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