オープンオフィスは本当に「百害あって一利なし」なのか？

by Masa Israel Journey

大勢の従業員が上司も部下も含めて一つのオフィスに机を並べ、壁やドアを取り払った仕切りのない空間で働くスタイルをオープンオフィスと呼びます。近年では「オープンオフィスは仕事の効率を下げる」「オープンオフィスは気が散ってしまう」といった研究結果がさかんに報告されており、「オープンオフィスは従業員にとってよくない」という主張も多くみられますが、新たに「オープンオフィスにも従業員にとってメリットとなる点がある」という研究結果が報告されました。

Effects of office workstation type on physical activity and stress | Occupational & Environmental Medicine
https://oem.bmj.com/content/early/2018/07/27/oemed-2018-105077

Workers in open-plan offices 'more active' - BBC News
https://www.bbc.com/news/health-45247799

Wait, Is Your Open Office Plan Good or Bad? - Vogue
https://www.vogue.com/article/new-studies-open-office-plan-good-or-bad

導入当初は「従業員間のコミュニケーションを増加させる、新たな仕事のスタイルである」としてもてはやされたオープンオフィスでしたが、オープンオフィスに対して否定的な研究結果が発表されるにつれて、「オープンオフィスはやめるべきだ」という意見が強くなってます。ところが、アリゾナ大学が発表した論文によれば、オープンオフィスで働く従業員はそうでないオフィスで働く従業員よりもたくさん活動しており、ストレスも少ないそうです。

アリゾナ大学の研究チームは、アメリカのさまざまな政府施設にあるオープンオフィス・半個室オフィス・完全な個室という3タイプのオフィスで働く231人の被験者を対象に、仕事中の運動量とストレスの度合いを測定する実験を行いました。研究チームは被験者に胸部センサーを取り付け、3日間にわたって被験者の運動量と心拍の間隔から測定される生理的ストレスを測定し、勤務時間中にスマートフォンでたびたび行ったアンケートでも、被験者のストレスを測定しました。

その結果、オープンオフィスで働く従業員は完全な個室で働く従業員よりも32％、半個室のオフィスで働く従業員よりも20％多く運動していることが判明しました。加えて、オープンオフィスで働く仕事中の運動量が多い従業員は、個室や半個室で働く運動量が少ない従業員と比較して、オフィス外でのストレスが14％低いという結果も明らかになったとのこと。ストレスを感じる度合いは高齢従業員のほうが若い従業員よりも高く、運動量は女性よりも男性のほうが多いという傾向があります。

by Schezar

研究を行ったエスター・シュテルンバーグ氏は、オフィスワーカーはそうでない労働者と比べて座っている時間が長く健康問題を起こしやすいことから、オープンオフィスにすることで生まれる運動量の増加と、それに伴う健康状態の改善を無視するべきではないとしています。「人々に健康的な行動をするように促しても、人はそう簡単に動くようにはなりません。従業員に健康的な行動を促すためにオープンオフィスを導入することも、健康問題を解決する方法の一つです」とシュテルンバーグ氏は述べました。

今回行われた研究で従業員の運動量が増えた背景について、「従業員がほかの同僚とコミュニケーションを取るためかもしれない」と研究者は話しています。もちろんそういったポジティブな理由だけでなく、仕切りのないオープンオフィスから離れて、ほかの従業員と内密の話ができる場所を探して歩き回った可能性もあるとのこと。

否定的な意見の多いオープンオフィスですが、従業員の効率が低下するというネガティブな側面だけでなく、運動量が増加するというポジティブな側面もあります。起業家のためのワークスペースを提供するWeWorkという企業が「従業員が自由に会話可能な共有スペース」「静かに作業する必要があるが対面して会話程度は可能なスペース」「完全に1人で使用するスペース」という3種類のワーキングスペースを提供しているように、オープンオフィスとそうでないオフィスの長所と短所を考え、状況に応じて変化させていくことができればベストかもしれません。

by Massachusetts Clean Energy Center