サイエンス

紙とバクテリアを利用したバッテリーが開発中、人間の「唾液」で活性化


「バクテリアの力を使った」「紙ベース」で「使い切り」のバッテリーを、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の電気情報工学科で准教授を務めるSeokheun Choi氏らの研究チームが開発しています。

Advanced Sustainable Systems - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/journal/23667486

How Paper Batteries Charged by Bacteria Could Power Internet of Things - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/energywise/energy/renewables/paper-battery-that-could-power-the-internet-of-things

Advanced Sustainable Systemsで発表された論文でChoi氏は、リチウムイオンバッテリーやスーパー・キャパシタは高密度のエネルギーを提供し、軽く、形状を変化できるフレキシブル基板に統合できるという利点を持つ一方で、生物分解ができず毒性が高い物質が使われているため環境にダメージを与える危険性があることを指摘しました。環境に配慮した発電方法として太陽電池やナノ発電機が提案されていますが、これらも再生不可能で生物分解できない重金属やポリマーを含んでいるとのこと。

そこでChoi氏らの研究チームは「再生可能」というところにフォーカスを置き、「紙」という素材に着目しました。研究チームは最先端の技術を駆使して紙が持つセルロース繊維の太さを変化させて紙の表面をなめらかにし、透明度をコントロール。さまざまな有機物・無機物と組み合わせることで、次世代電子工学のプラットフォームとしての「紙」を開発しました。バッテリーは、バクテリアの「細胞呼吸」を利用して、有機物が持つ生化学エネルギーを生物エネルギーに変えています。


具体的にいうと、研究チームはフリーズドライされた「Exoelectrogen(電気化学活性を持つバクテリア)」を紙の上に置き、バッテリーを作成しました。Exoelectrogenは電子を自分の細胞の外に通過させることが可能で、細胞膜を通過した電子が外部に設置した電極と接触することで、バッテリーが稼働します。

バッテリーを活性化させるためには水か唾液を加える必要があり、ラボの実験では最大出力4μW/cm2、電流密度26μA/cm2を生み出すことに成功したとのこと。この数字は、過去に開発された紙ベースのバッテリーと比べると「著しく高い」そうですが、まだまだ実用化に必要なパフォーマンスに達しているとはいえなさそう。Choi氏は商業利用に向けた改良を進めていくと述べています。


このバッテリーの優れている点は、材質が紙であるため積み重ねたり折ったりすることで直列・並列回路が可能になる点。折り紙の技術の使用も視野に入れられているようです。

Choi氏らが紙バッテリーの研究を初めて発表したのは2015年で、アメリカ国立科学財団から30万ドル(約3300万円)の資金提供も受けています。この他にも紙ベースのバッテリーを開発している研究者は存在しますが、Choi氏らの研究の特徴は、バクテリアをフリーズドライにして貯蔵寿命を「4カ月」に伸ばすことに成功している点にあります。貯蔵寿命の長さや「唾液を加える」方法で活性化することから、電気やリソースのない場所での活用が見込まれており、記事作成現在、研究者は商業化に向けてパートナー企業を探しているところだといいます。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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