生き物

わずか数ミリという極小サイズなのに世界最速の生物でもある「Spirostomum ambiguum」


動きの速い生物にもいろいろいますが、最も速い生物は、研究者によれば「Spirostomum ambiguum」と呼ばれる単細胞生物なのだそうです。動く速さは、4mmほどの平らな棒状から、アメリカンフットボール型の楕円形へとわずか数ミリ秒で変形可能というもので、この動きで体の60%以上を縮めることができます。

World’s Fastest Creature May Also be One of the Smallest | Research Horizons | Georgia Tech's Research News
https://rh.gatech.edu/news/609421/worlds-fastest-creature-may-also-be-one-smallest

These Are the Fastest Creatures on Earth But You'll Never Spot Them
https://www.livescience.com/63303-fastest-creature-single-cell-nanobot.html

チーターは時速100km以上のスピードで走ることが可能で、ハヤブサの飛行速度は急降下時に時速390kmに到達することが自然番組「ダーウィンが来た!」で報告されています。しかし、「Spirostomum ambiguum」というワーム状の単細胞生物は、これらの動物の移動速度よりも速く体を伸縮させることが可能です。ジョージア工科大学のSaad Bhamla助教授によると、Spirostomum ambiguumは湖や池などに生息しており、体の「繊毛」と呼ばれる小さな毛を使用して動くそうです。通常の移動時はそれほど高速ではないのですが、体を収縮させる際に圧倒的な加速をみせるそうで、体を伸ばした「棒状の形状(4mm程度の長さ)」から「ラグビーボールのような楕円形の形状」に変形するのに、わずか数ミリ秒しかかかりません。この変形で体長は60%以上短くなるとのこと。


棒状のSpirostomum ambiguumが文字どおり「一瞬で」ラグビーボール型に変形する様子は以下のムービーで見ることができます。「チーターの走行速度や、ハヤブサの飛行速度と比較するの?」と疑問があるかもしれませんが、この動きを見ると「確かに速い」と納得です。

World's Fastest Creature may also be One of the Smallest - YouTube


ビーカー内の水の中に、世界最速の生物Spirostomum ambiguumが潜んでいます。


これがSpirostomum ambiguum。棒状の姿をしている際は体長が4mmほどあります。


ここからわずか数ミリ秒という人間の目では変化を追えないくらいのスピードで、以下のような楕円形の形状に変化することが可能です。


Spirostomum ambiguumは非力な単細胞生物でありながら、チーターやタカよりも高速に体を動かすことが可能です。この仕組みがどうなっているのかを解明することで、エネルギーをほとんど使わずに素早く動くことが可能な小型ロボットを開発することができるかもしれないと考えているのが、Bhamla助教授たちの研究チームです。

人間の筋肉はアクチンミオシンの活性に頼ったものですが、Spirostomum ambiguumのような小さな生物は異なる機構を持っているものと思われます。「Spirostomum ambiguumが筋肉を構成するアクチンとミオシンだけを持っているとすれば、このような動きを実現することはできなかったでしょう」と語るのは、Bhamla助教授。なお、Bhamla助教授によるとSpirostomum ambiguumの加速度は最大200メートル毎秒毎秒にもなるとのことで、「これは本当に並外れた値」であるそうです。

Bhamla助教授は「我々はこの生き物が行っていることをすべて記録し、それをコンピューターモデル化してエンジニアリングのアプローチを取っていきたいと考えています。また、我々はSpirostomum ambiguumのような単細胞生物が顕著な加速を可能にする仕組みや、分子バネを使ったパワー出力を増幅する方法を学びたいと考えています」と述べています。

加えて、Spirostomum ambiguumが圧倒的な加速度を生み出すには内部圧力が急激に上昇しなければいけないとこことで、「そのような現象が起きても体が損傷していないという点も注目すべきところ」としています。この仕組みを理解することで、極端なストレスや圧力にも耐えられる頑強な生物材料を生み出すことが可能になるかもしれない、とBhamla助教授は語っています。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by logu_ii

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