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「紳士の国」イギリスではかつて指で食べ、回し飲み、吐き出し行為が当然だった

by rawpixel.com

公共の場でマナーが悪い人を見かけたり、無礼な人に出会った時に、人はぎょっとしてしまうもの。これは、無意識のうちに私たちが「理想の社会とは何か」というイメージを持っており、「文明的でないもの」を毛嫌いしてしまうためだとのこと。「紳士の国」イギリスの驚きの「礼節」を例に、歴史家のキース・トーマス氏が「In Pursuit of Civility」という本で「文明とは何か」について述べています。

In Pursuit of Civility by Keith Thomas review – manners in early modern England | Books | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2018/aug/08/in-pursuit-of-civility-by-keith-thomas-review

無礼な発言をする人や、混雑する電車の中で匂いの強いものを食べる人などを見ると、人は「野蛮」「下品」と考えてしまいがち。しかし、実際の「礼節」や「礼儀正しさ」は月日とともに変化します。トーマス氏によると、16世紀であれば一家の主が使用人や目下の者の前で自分を解放することは当たり前で、現代であれば「あり得ない」行動が取られることもあったとのこと。

たとえば元イングランド王のジェームズ1世は終日狩りを行っている際、トイレに行きたいからといって馬から下りることはなく、使用人を使って用を足していたといいます。また、チャールズ2世がオックスフォードで議員に面会した時、王の付き人は、王のふん便を煙突・石炭貯蔵所・地下室などの隅に残していたことからも、かつての王がわざわざトイレに向かわなかったことが読み取れます。

このような行動は庶民レベルでも見られ、イタリアの冒険家・カサノバは1763年にイギリスにやってきた時に人々が道ばたで排泄する様子を目撃してひどく驚いたと伝えられています。現代であれば「無礼」「下品」とみられる行為ですが、当時のイギリス人にとっては普通のことだったのです。

そして、この時代のイギリスを訪れた外国人を特に驚かせたのは、テーブルマナーでした。現代では「紳士の国」とされ、マナーに厳しいイメージのあるイギリス人ですが、当時は指を使って食事をし、同じコップを共有するほか、食事中にげっぷをし、机の上に食べたものを吐き出しました。同時期にイギリスを訪れたフランス人は、20人からなるグループが1つのグラスでビールを飲んでいる様子を見て不快に思ったそうです。一方で、フランスを訪れたイギリス人は人々が自分専用のグラスを使って飲み物を飲んでいる様子を見て驚いたことが記録されています。

by Matthew Henry

「文明や礼儀正しさへの理想」はいつの時代にも存在するとトーマス氏は考えています。しかし、「文明的なもの」と「野蛮なもの」の区別は、主として、性別・階級・人種・文化によるヒエラルキーを強化するものでした。これはイギリスに限ったことではありません。

トーマス氏は「In Pursuit of Civility」の中で「文明」というコンセプトが、「『劣った人間』の搾取を正当化するための、独りよがりな偏見である」と主張しています。

ただし、文明的な「礼節」にはポジティブな面もあります。宗教的・文化的・政治的情熱が現代よりも激しかった時代、人と人との「違い」を乗り越え調和して暮らすために、恨みや暴力・悪態などを抜きに対話するために、「礼節」が役立ったとのことです。

by Burak Kebapci

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